プラセンタ(胎盤ホルモン)や筋肉増強剤、つまり筋肉増強ホルモン(タンパク同化ホルモン)はなぜ良くないのか
プラセンタとタンパク同化ホルモンと筋肉増強剤の関係について
なぜプラセンタ(胎盤ホルモン)は免疫を抑えるのか
なぜ女性ホルモンは免疫を抑えるのか
なぜ生理の前後に免疫が上がるのか
なぜ女性ホルモンを飲み続けると免疫が抑制されるのか
なぜピルは免疫を抑えるのか

松本医院 院長 医学博士 松本仁幸

 まず、妊娠出産とは何でしょうか?父親の精子1個と母親の卵子1個が融合して、1個の受精卵となることが出発点であります。1個の細胞が出産まで母親の胎内に宿って、3兆個の細胞にまで分裂し、様々な臓器や器官に分化誘導されて10ヵ月後に赤ちゃんとしてこの世に生まれることです。赤ちゃんが無精生殖、つまりお母さんからの卵子だけで出来上がれば、赤ちゃんの組織の全てはお母さんの成分でありますから、母親の免疫は妊娠中に赤ちゃんを異物とみなすことは絶対にありません。しかしながら父親の成分、つまり遺伝子が半分入っていますから、母親にとって赤ちゃんは異物と認識せざるを得ないのです。にもかかわらず、なぜ出産まで無事に母親の胎内で育ち、赤ちゃんとして出産できるのでしょうか?答えはただ一つです。胎盤と胎盤が作り出す様々なホルモンが、お母さんの免疫機構から赤ちゃんを守っているからです。それではどのようなメカニズムで胎児が母親の免疫の働きから逃れて、出産時まで拒絶されずに生き続け、立派な赤ちゃんとして産まれることができるのかについて述べましょう。赤ちゃんは、いわば全身の臓器移植といえるのですが、この臓器移植を成功させるのは何かについて考えてみましょう。

 まずひとつは、胎児と母親とは胎盤によって仕切られています。この胎盤は栄養膜細胞と母親の子宮粘膜基質細胞が変化した脱落膜細胞と一緒になって作られますが、母親の免疫反応が胎児を拒絶しないのは、胎盤が母親の免疫が働かないようにバリヤーがかけられていると考えられます。しかしながら、母親と胎児を隔てている胎盤の膜は、あくまでも父親の成分も入っているのにもかかわらず、なぜ拒絶されないのでしょうか?

 胎盤の最も最外層、つまり母親側の胎盤の膜を絨毛性栄養膜といい、別名、絨毛性栄養芽層ともいいます。さらにその母親側の最外層の一番外側を合胞体栄養膜細胞、別名栄養膜合胞体層といいます。合胞体栄養膜細胞は絨毛性栄養膜の外層を形成し、子宮壁へと入り込み、いわば母親の組織の一部ともなっているのです。つまりこの絨毛性栄養膜は妊娠中にお母さんの免疫とは常に密な接触があります。それにもかかわらず、絨毛性栄養膜が母親の免疫で拒絶されないのはなぜでしょうか?それは絨毛性栄養膜の最外層の膜にはMHCⅠとMHCⅡがないからです。MHCについてはここを読んでください。

 ご存知のようにT細胞が異物を認識するためには、その異物がMHCⅠと結びつき、これをT細胞に提示する必要があるのです。特に絨毛性栄養膜の最外層である合胞体栄養膜細胞には全くMHC分子はないので、母親のT細胞は異物である父親の成分を認識することができないのです。

 2つ目は、妊娠中はお母さんの胎盤周辺をめぐる免疫の働きが、様々な妊娠中に出される高濃度の女性ホルモンによって修飾され、胎盤の周りでは免疫の働きが落ちることが分かっております。例えばヘルパーT細胞の働きは、サプレッサーT細胞(抑制性T細胞)と比較して減っているという事も分かっております。

 3つ目は、妊娠中に増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)やコルチコステロイドや絨毛性ゴナドトロピン(絨毛性性腺刺激ホルモン)などが、胎盤の周辺で働く母親の免疫反応を調整しているということも分かっています。

 4つ目は、胎盤にいるナチュラルキラー細胞が、合胞体栄養膜細胞の内側に残されているMHC分子を認識し、様々なサイトカインを産出して、胎盤の組織を敵とみなさないように調節していることも分かっています。

 

 いずれにしろ、なぜ母親にとって異物である胎児が、母親の免疫によって拒絶されないのかについては、免疫学的には完全には分かっていません。しかしながら、3つ目で説明したように、妊娠時に大量に増えるプロゲステロンやコルチコステロイドや絨毛性ゴナドトロピンが、母親の免疫を抑制することはよく知られていることです。

 特に絨毛性ゴナドトロピンホルモン(GnH)は、絨毛性性腺刺激ホルモンとも呼ばれ、元来、全ての人間が持っている、下垂体前葉から男性も女性も作っている性腺刺激ホルモンと同じものです。性腺とは男性の精巣と女性の卵巣のことであり、性腺刺激ホルモンは精巣や卵巣の発育と様々な内分泌機能を高める作用を持つホルモンであります。GnHには2種類のホルモンがあり、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)があります。FSHは、女性については卵胞の発育促進とエストロゲン(女性ホルモン)の分泌と、男性については精細管にある精子の発育促進を主な作用として持っています。

 皆さんはゴナドトロピン(GnH)(性腺刺激ホルモン)は、女性の性腺である卵巣にだけ働くと思っていませんでしたか?実は今述べたように男性の精巣にも働くのです。なぜだかご存知ですか?もし妊娠した赤ちゃんが男の子だったら、どうしたら男性の性器や生殖器ができ、男の子らしくなるのでしょうか?まさに胎盤から出されるゴナドトロピンが、男の性染色体の遺伝子であるXYを持った胎児の性腺に働くからこそ可能となるのです。

 男性の場合は、FSHは精子を作る細胞を支えるセルトリー細胞に働き、男性ホルモンであるアンドロゲンの働きを強めて、さらに精子形成を促進させます。従って男性の場合はFSHはセルトリー細胞タンパク合成強化ホルモンというべきです。一方、男性の場合、LHは精巣の精細管の間に存在するライディッヒ細胞に作用して、男性ホルモンであるアンドロゲンの合成を促進させ、分泌させています。従って、男性の場合はLHをライディッヒ細胞アンドロゲン合成強化ホルモンというべきです。つまり男性では精巣のライディッヒ細胞に作用してテストステロンの分泌を促すのです。そして男の赤ちゃんは生まれたときに男らしくなって産まれ、産まれた後はFSHによってますます男になっていくのです。

 2種類のGnHであるFSHとLHは、女性の場合は互いに協力し合って排卵や妊娠や出産などが可能となるのです。実をいえば、脳にはホルモンを支配する部位は下垂体だけではないのです。さらに下垂体を制御する視床下部という部位があります。この視床下部は本能や感情やホルモンを支配する中枢であるのです。FSHの分泌は、まさにこの視床下部によって支配されているのです。視床下部からはゴナドトロピン放出因子(GnRH)というホルモンが産生されるのです。つまりGnHを分泌させる命令を出すホルモンがGnRHであるのです。このGnRHの命令でFSHが下垂体前葉から分泌され、女性ではFSHは卵巣に作用にして、原始卵胞を発育卵胞にし、さらにLHと共同作用し成熟卵胞へと発育させます。この卵胞からは女性ホルモンであるエストロゲンを分泌させます。男性ではFSHは精巣からテストステロンを作らせるのです。

 女性ではFSHが出された後、排卵近くなると、GnRH分泌は分泌パターンをさらに変化させて、LHの分泌をFSHの分泌よりも増加させます。FSHによって増えたエストロゲン上昇に伴う正のフィードバック機構が発動し、下垂体のLHを一時的に急激に増加させ、これをLHサージというのですが、このLHサージの結果排卵が生じます。その後充分な女性ホルモンが分泌され続けると、今度は負のフィードバック機構が発動し、GnRHとGnHの分泌が抑制されます。これを女性は生理が始まる初潮から、生理が終わる閉経まで繰り返すのです。閉経に近づくとともに、卵巣における卵のGnHに対する反応が低下すると共に、卵が吸収されて消失してしまうと、フィードバック機構が働かなくなり、その結果、視床下部・下垂体・性腺系の働きもなくなってしまい、生理が止まってしまうのです。閉経後の内分泌環境は高ゴナドトロピンホルモンと、低卵巣ホルモン状態となります。さらに閉経後の女性の血中ホルモン値は、成熟期の女性と比べて、女性ホルモンであるエストロゲンは著しく低下し、ゴナドトロピンであるFSHは15倍も高くなり、LHは5倍も高くなってしまうのです。

 このようにして視床下部が産生するGnRHを中心とした視床下部・下垂体前葉・性腺系が女性の月経周期を精密に制御しているのです。GnRH分泌パターンの変化やLHサージを制御する機構も徐々に分かりつつあります。

 今日はここまで 2012/04/12

 今日は、フィードバック機構について説明しましょう。フィードバックは日本語では『帰還』と訳されますが、難解な言葉です。本来自動制御装置の制御系の要素の出力記号を入力側に戻す機構を意味する専門用語であります。電算機の世界では誤りを正すためにアウトプット(出力)の一部を入力側に戻すことを意味します。医学では異なる環境に対する適応の機構といわれます。いずれにしろ難しすぎますから、さらに詳しく説明しましょう。

 要するに、フィードバックとは、化学物質が多すぎても少なすぎても、さらに強すぎても弱すぎても、体の正常な働きが損なわれるので、バランスを戻そうとする働きといえます。つまり人間の体は小宇宙であり、過剰は不足と同じく秩序を乱してしまい、生命の存続が危うくなります。美味しいからといって無限に食べ続けることはできませんし、食べたくなくなります。なぜならば延髄にある食欲中枢が食欲にストップをかけてくれるのです。これもフィードバックの一つです。運動もやりすぎると筋力のエネルギーが枯渇してしまい運動できなくなるので、いくら運動を続けたいと思っても続けることはできなくなります。これもフィードバックの一つといえます。これらの例は意識できる事実ですが、人体は目に見えないところで、知らず知らずのうちに無意識に過剰と不足のバランスを取り戻してくれているのです。その代表がホルモンの世界であります。ホルモンは極めて微量でこのバランスを調整する仕組みを持っているのです。人体の組織や器官はバラバラに働くだけではうまく機能しません。組織と器官は一丸となって初めて機能を果たすことができるのです。この情報を血液にホルモンを流して初めて人体のバランスを保つことができるのです。従って少しでもホルモンが多くなりすぎても少なすぎても体全体のバランスが崩れ、体の変調をきたすからであります。現在知られているホルモンは70前後あります。ほとんど全てのホルモンはフィードバック機構を有しています。

 ホルモンを分泌する器官を内分泌腺といいます。この内分泌腺で作られ、血液中に放出された化学物質であるホルモンは、このホルモンの作用を受けるレセプターをもった細胞や組織に送られます。この細胞や組織をもった器官をホルモンの標的器官と呼びます。ホルモンを受け取ったレセプターによって情報を受け取った標的器官の細胞の遺伝子の命令によって新たなる化学物質が産出され、これが血液に流れ出ます。この新しい化学物質がたくさん作られ始めると、ホルモンも徐々に必要がなくなります。いつまでもホルモンを作り続けると、この新しい化学物質が過剰になります。この化学物質は、今度は逆にホルモン器官に「もう作る必要がありません」という情報を送ります。するとホルモンの産生量が減っていき、バランスを戻します。今度はホルモンが減りすぎると、その化学物質は減っていきますから、そのホルモンが増えるように再び調節されるのです。これが負のフィードバックの意味なのです。

 人体のホルモンの調節はほとんどが負のフィードバックで行われていますが、例外があるのです。それは正のフィードバックといわれるものです。つまり大量のホルモンが標的器官に働くと、逆に標的器官に大量の化学物質を作らせる例外があるのです。その例外が排卵の際に見られるのです。上に述べたように大量に増えたエストロゲンが下垂体にLHサージを行わせ、排卵を可能にさせる場合が正のフィードバックとよばれるものです。つまり排卵というのは特別な現象であり、生命の存続のために毎月1回は絶対に生じなければならない唯一の現象なので、エストロゲンを大量に産出し、排卵をさせるように女性が子供を生まなければならないという強力な情報を脳の下垂体に送り、下垂体にさらに頑張らせてLHを大量に作らせて初めて排卵が起こるのです。これが人体で起こる唯一の正のフィードバックなのです。排卵してしまえば仕事は1回きりで終結してしまうために、例外的に正のフィードバックがかかるのでしょう。

 さらに、本論の中心テーマであるステロイドホルモンとは何かについて述べておきましょう。一般にステロイドホルモンといわれるのは、実は糖質コルチコイドというべきであって、このホルモンが免疫を抑制するものですから、世界中の医療で一番よく使われているものです。私が常々言っているように、病気を治すのは自分の免疫であり、自分の免疫の遺伝子の働きによって敵を殺すか、排除するか、封じ込めるか、共存するかの4つのいずれかの方法で異物を処理することによって、全ての病気は治るのです。ところが現代の医薬品の全ては免疫を抑えることによって、治る病気を治らなくしているだけなのです。だからこそ免疫の遺伝子の発現を完璧に抑制する、このいわゆるステロイドホルモンである糖質コルチコイドを使うなと声を大にして述べているのです。

 副腎皮質ホルモンといわれるのは、副腎皮質で作られるホルモンであるからですが、実は副腎皮質では3つのホルモンを作っているのです。1つめは、いわゆるおなじみのステロイドホルモンといわれる糖質コルチコイドと、2つめは鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイドとも言いますが)体内の電解質をコントロールしているホルモンも作られています。3つめは性ステロイドホルモンといわれるものであり、男性ホルモンであるデヒドロエピアンドロステロンや、アンドロステンジオンが作られています。この男性ステロイドホルモンが、女性の副腎皮質でも作られているのは驚きでしょう。実は女性における男性ホルモンの主なる供給源であるのです。もちろんデヒドロエピアンドロステロンは、男性性器の精巣から分泌される本来の男性ホルモンであるテストステロンの5分の1の活性しかないのですが、女性のひげの成長などに影響を及ぼしているのです。ストレスで副腎皮質刺激ホルモンが出すぎると、女性でもひげが濃くなるのです。

 世界中の医療現場で最もよく使われるホルモンである糖質コルチコイドについて少し述べておきましょう。ストレスがかかると、ストレスと戦うために、このステロイドホルモンが戦う気力や鬱にならないために大量に作られることは、皆さんよくご存知でしょう。なぜそのような働きがあるのでしょうか?戦うためには糖分が要りますから、ステロイドホルモンはグルコースを大量に作ってくれるのみならず、他のホルモンの作用を強めて、さらにストレスに対して体全体がより良く抵抗できる作用もあるのです。

 ところが肉体の異物である敵がストレスと同時に入るときに、この異物との戦いを一時的に止める免疫抑制作用や炎症抑制作用があるのです。このステロイドの働きを医療に利用して、症状を楽にするために免疫の働きを止めることができるので、世界中の医療で使われているのですが、結果的に病気を作っているのは今さら説明は必要ないでしょう。

 このようにステロイドホルモンは免疫に対して重要な働きをしているのみならず、個々の臓器に対しても遺伝子を変えることによって様々な影響を及ぼしているのですが、全てを説明するのはあまりにも膨大になるので、これぐらいにしておきます。とにかくここで知っておいてもらいたいのは、あらゆるホルモンの中で唯一免疫の働きを一時的に止めるのは、糖質コルチコイドである、いわゆるステロイドホルモンであることを確認しておいてもらいたいのです。だからこそ免疫を抑制する化学物質は常にステロイドホルモンとの関わりがあるという事がお分かりでしょう。

 最後に結論から言うと、免疫を抑制するのは、1つめは直接ステロイドの量を増やすか、(この増やし方はストレスで自分の副腎皮質で大量のステロイドホルモンを作るか、医者がステロイドホルモンを入れるかのどちらかです。)2つめはステロイドの産生を何らかの形で一時的に抑えて、その抑制をはがしたときにリバウンドさせて、大量のステロイドホルモンを自分の副腎皮質で作るかの2つしかないということを知ってもらいたいのです。この2つの仕組みによってステロイドを増やすことにより遺伝子を変えてしまうという事が最終的な問題となるのです。次回はこの原理がどのように個々の様々な治療において問題を起こしているかを説明しましょう。従って次回は、まず1つめが、プラセンタ(胎盤ホルモン)や筋肉増強剤、つまり筋肉増強ホルモン(タンパク同化ホルモン)はなぜ良くないのか。2つめは、プラセンタとタンパク同化ホルモンと筋肉増強剤の関係について。3つめは、なぜプラセンタ(胎盤ホルモン)は免疫を抑えるのか。4つめは、なぜ女性ホルモンは免疫を抑えるのか。5つめは、なぜ生理の前後に免疫が上がるのか。6つめは、なぜ女性ホルモンを飲み続けると免疫が抑制されるのか。7つめは、なぜピルは免疫を抑えるのか、についてひとつひとつ詳しく解説していきましょう。乞うご期待!

 今日はここまでです。2012/04/26

 まず近頃の高級化粧品のほとんどにプラセンタ(胎盤)が含まれています。ほとんどの女性が胎盤がどんな種類のホルモンを作り、そのホルモンがどのような働きがあり、どうして胎児の成長に絶対に不可欠であるかの理由も知りません。ちょうどアトピーでステロイドがどんな作用を持ち、どのようにしてアトピーに効くのかを知らないのと同じです。少しでも賢くなってもらうために胎盤のホルモンについて詳しく述べていきましょう。

 胎盤が作り出すホルモンは5つあります。絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)、プロゲステロン(黄体ホルモンともいわれ、LHと略されます)、エストロゲン(卵胞ホルモンともいわれ、FHと略されます)、胎盤性ラクトゲン(HPL)、リラキシンの5つです。まずひとつめの一番大切なホルモンが絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)といわれるものです。絨毛性といわれるのは、上に述べたように胎児が作る胎盤の一部である絨毛から作られるためです。さらに生殖腺という意味は、生殖に関わるホルモンを出す分泌腺であるからです。男性の生殖腺を精巣といい、女性の生殖腺を卵巣といいます。この絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)は、まさに妊娠中の女性の生殖腺である卵巣に働いて、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)を出させます。実は男性や妊娠していない女性も、生殖腺刺激ホルモン(GnH)が下垂体前葉から常に出されていることや、その分泌のメカニズムは既に述べました。

 このHCGは、受精卵が着床し胎盤ができ始めるときに分泌され始め、受精後3ヶ月に最も分泌量が高くなります。このHCGは受精後3ヶ月までは母親の卵巣に残った卵の後の黄体を維持し、この黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌させ続けるのです。排卵した後の残りを黄体というのは、黄体ホルモンを出すためです。ところが妊娠3ヶ月になると、HCGの分泌は減少し、黄体に対する刺激が減るので、従って黄体から分泌されるプロゲステロンは減り、それ以後は胎盤からプロゲステロンを作らなければならなくなるのです。妊娠4ヶ月ごろからは、臍帯血中のコレステロールや母親の副腎と子供の副腎で作られた硫酸プレグネノロンを胎盤絨毛の合胞体栄養細胞が取り込んで、胎盤がプロゲステロン(黄体ホルモン)を合成し始めるのです。このプロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠継続のためには絶対に必要なのです。なぜ必要かというと、ひとつは妊婦の脳に作用して排卵を止めているのです。さらに妊婦の子宮腺の分泌を促進させて精子が子宮に入らないようにしているのです。さらに早産を防ぐために子宮の平滑筋の運動を抑制したりするのです。これで2つめのプロゲステロンの話は終わりました。

 次に3つめのエストロゲン(FH)について述べましょう。絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)は、妊娠3ヶ月までは母親の卵巣の黄体を刺激して、黄体からエストロゲンの分泌を促すのです。その後エストロゲンは胎盤の栄養膜合胞体細胞で作られ、プロゲステロンと同じように分娩まで増加し続けるのです。このエストロゲンはどのように作られるかは後でステロイドホルモンの合成経路のチャートを書いてさらに詳しく説明しますので、今は我慢して読み続けてください。妊娠中のエストロゲンの作用は、子宮平滑筋の発達や乳腺の導管の発達を促し、妊娠維持と分娩後の準備を行っているのです。

 次に4つめの胎盤性ラクトゲン(HPL)についてでありますが、別に胎盤性プロラクチンともいわれます。妊娠4ヶ月ごろに急激に増加します。胎盤性ラクトゲン(HPL)は、母親の乳腺の分泌細胞を発達させたり、血糖を下げようとするインシュリン作用と拮抗し、かつ母親の脂肪代謝を促進し、ブドウ糖を胎児に供給し、胎児の成長を促すのです。妊娠糖尿が見られるのは、このような胎盤性ラクトゲン(HPL)の作用が関わっているのです。

 5つめのリラキシンは、子宮頚管の弛緩、恥骨結合などを緩め、産道を開大します。また子宮平滑筋の収縮も抑制します。以上が、現代医学で確認されている胎盤に含まれるホルモンの全てであります。以上の胎盤が分泌するホルモンの中で、やはり一番問題なのは絨毛性生殖腺刺激ホルモンと女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の3つであります。これらのホルモンが女性の生殖妊娠、さらに妊娠継続と維持や出産や乳汁産生に絶対に必要なことはお分かりになったでしょう。ところが既に皆さんご存知のように、ステロイドは人間にとって最も必要なホルモンであるにもかかわらず、医療の名において用いられた人工合成ステロイドホルモンが、結局は病気を治す為ではなくて、一時的に免疫の遺伝子を変えて症状を取るだけで、とどのつまりは新たに病気を作っているということがプラセンタにおいても見られる根拠を理論的に証明しようとしているのです。

 やはり胎盤エキスや注射も、結局は間接的にステロイド作用を発揮するということで、症状は良くするのですが、使えば使うほどステロイド作用の免疫抑制のために膠原病を作ったりすることを証明することが私の仕事となるのです。つまりプラセンタにしろ、筋肉増強ホルモンにしろ、女性ホルモンにしろ、全て免疫の抑制に通じることを説明していきましょう。ここで蛇足ですが、一言述べておきたいのです。免疫を抑制する副腎皮質ホルモンと女性ホルモンや男性ホルモンや胎盤ホルモンとの関係を解明しようとした試みは世界で初めてである事を述べておきましょう。幸か不幸か、私は世界中の医者が知らない真実を多く知っていますが、ステロイドホルモンと女性ホルモンとの関係を具体的に見つけ出した初めての論文となるでしょう。

 まず1つめがプラセンタと免疫抑制の関係であります。プラセンタが持っている絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)と、すべての人間が脳の下垂体前葉で作っている生殖腺刺激ホルモン(GnH)とは全く同一のものです。その違いは人間の下垂体性のGnHの合成と分泌は、さらに脳の上部の視床下部の神経によって作られる性腺刺激ホルモンを放出させるための別のホルモンによって初めて行われるのです。この視床下部のホルモンを性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)といいます。このGnRHについては序論で述べました。

 一方、絨毛性生殖腺刺激ホルモン(HCG)は、妊娠することによって自然に胎盤で作られるのです。ところがこの胎盤から作られるGnHは、母親の視床下部から下垂体、さらに卵巣までを支配してしまうのです。この母親の「視床下部-下垂体-生殖腺系」が胎児にハイジャックされてしまい、この妊娠から出産まで完全に胎盤が母親の女性ホルモンの合成分泌を完全に支配してしまっているのです。見かけは母親が胎児を赤ちゃんにまで成長させているようですが、実は妊娠中は胎児が母親に命令して、出産まで自分を成長させているだけなのです。

 産まれてもいない胎児が母親を支配しているというのは、どのように理解すればよいのでしょうか?その支配は胎盤ホルモンによって行われているのです。それほど胎盤ホルモンは強力な力を発揮しているのです。この力は免疫の働きにさえ大きな影響を及ぼしているのです。実は既に上で述べたように、胎児のプロゲステロン(黄体ホルモン)は、プレグネノロンから胎児のみならず、母親の体内でも作られていることはご存知でしょう。このプレグネノロンこそが副腎皮質ホルモンであるコルチゾールを作るための中間物質なのであります。つまりプレグネノロンこそは男性ホルモンであるテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、コルチコステロン、アンドロステジオンや、女性ホルモンであるプロゲステロン、エストロン、エストリオール、エストラジオールなどを合成するために、その途中で絶対に欠くべからざる中間物質なのであります。もちろんプレグネノロンの元はコレステロールなのであります。全てのステロイドホルモンの原料の元はコレステロールであることを知っておいてください。コレステロールは世間では高脂血症の元凶と憎まれていますが、実はタンパク質を除けばコレステロールほど大事な物質は他にないのです。人間は60兆の細胞からできていますが、この細胞には必ず膜があり、この膜の主成分もコレステロールであることを知っておいてください。

 ここで大切な事柄のひとつに注意を喚起しておきましょう。どうして副腎皮質で副腎皮質ホルモンだけを作り、どうして卵巣では卵巣ホルモンだけを作り、どうして精巣では男性ホルモンだけしか作れないのでしょうか?それはそれぞれの組織の細胞には、それらのホルモンしか作れない酵素しかないからです。この酵素は一体何処から作られるのでしょうか?まさに遺伝子なのです。

 60兆個の細胞の全てには同じ遺伝子の全てが揃っているのですが、分化し特化した組織は、必要な役割を果たすために必要なその組織に特有な遺伝子だけがONになるようになっているからこそ、その細胞に特有の酵素が作られるのです。つまり他の遺伝子はメチル化されてしまっているので、他の仕事はできないようになっているのです。(残念ですがこのメチル化を闇雲に変えようとしている研究者がいます。それはiPSでありますが、皆さんは誰がおやりになっているかご存知でしょう。メチル化をはずすことは生命の働きに大混乱をもたらし、そのようなアトランダムに遺伝子のメチル化をはずされた細胞は、最後は癌細胞になるか、自殺するだけなのです。)全ての人体に見られる現象は遺伝子の命令に過ぎないのです。遺伝子はタンパクを作る設計図を持っているのですが、この設計図の命令がONになれば、必要な物質を作るために様々なタンパクを作り出すのです。その中で一番大事なのは酵素であります。人間の体はいわば生きた化学工場といえます。この化学工場を死ぬまで操業し続けるためには、それぞれの細胞が必要なある特定の反応だけを進行させる酵素が必要なのです。この酵素の遺伝子をONにできるようになっている細胞でしか、その細胞独自のホルモンは作れないことを知っておいてください。

 ごちゃごちゃ説明するよりも、ずばり全てのステロイドホルモンの合成経路をチャートにして書いておきましょう。このチャートは3つの経路を示しています。ひとつは男性(精巣)アンドロゲン合成経路、2つめは女性(卵巣)エストロゲン合成経路、3つめは副腎皮質ホルモン合成経路から成り立っています。このチャートを使いながら、極めて具体的に最初のテーマの答えを詳しく解説していきましょう。乞うご期待!

 ステロイドホルモン合成経路のチャート

 今日はここまでです 2012/05/04

 話を始める前に、注意してもらいたいことが2つあります。一つ目は、一般に医療で用いられるステロイドホルモンは、糖質ステロイドホルモンであるという事を知っておいてください。なぜ糖質ステロイドホルモンというのかを説明しましょう。似たような名前のホルモンで、鉱質ステロイドホルモンというものが別にあるのです。この鉱質ステロイドホルモンはアルドステロンといわれるものであり、鉱質、つまりミネラルの代謝に関わりがあるからです。いつも問題にしているのは糖質ステロイドホルモンなのです。鉱質ステロイドホルモンは免疫には全く関わりがないという事です。ふたつ目は、ステロイドホルモンといわれる化学物質はチャートでお分かりのように、20以上あるという事です。従って今後いわゆる皆さんがご存知のステロイドホルモンは、必ず面倒ですが糖質ステロイドホルモンと表記することを知っておいてください。糖質ステロイドホルモンは糖質コルチコイドといわれることは既に述べました。

 まず、今でもスポーツ界を揺るがしている筋肉増強ホルモンを取り挙げましょう。なぜメジャーリーグのホームラン王たちであるバリー・ボンl、ズやマーク・マグワイアやホセ・カンセコが、筋肉増強ホルモンで筋肉を増強して、それまで歴史上最強のホームラン王であったベーブ・ルースを上回る成績をあげることが可能になったのでしょうか?さらに東西冷戦のさなかに共産圏の女子選手が陸上競技のみならず、水泳競技において金メダルをかっさらった時代はどうして生まれたのでしょうか?これらは全て筋肉増強剤によるものであったのです。その後、共産主義が崩壊した後、東独の女性選手たちがどのような悲惨な結果になったのかもご存知でしょう。

 それではまず筋肉増強剤は何で作られたのでしょうか?さらに長年にわたって筋肉増強剤を用いてきたカンセコは、メキシコ国境で排卵誘発剤を所持していたために逮捕されたニュースも覚えておられるかもしれません。メジャーリーグで大活躍した男の中の男であるホセ・カンセコが、なぜ不妊症の女性が妊娠を目的として用いる排卵誘発剤を使わざるを得なかったのかを説明していきましょう。

 その前に筋肉増強剤によってメジャーリーガーのホセ・カンセコが獲得した華々しい戦績を下に羅列しておきましょう。獲得タイトルや記録は次の通りです。新人王:1986年、アメリカンリーグMVP 1回:1988年、本塁打王 2回:1988年(42本)、1991年(44本)、通算462本塁打、打点王1回:1988年 です。ついでですが、俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーも筋肉増強剤によって大スターになったこともご存知でしょう。

 筋肉増強剤はタンパク同化ステロイドと呼ばれるものです。このタンパク同化ステロイドはタンパク同化作用により、人体から窒素の排泄を減少し、筋肉でのタンパク質の合成促進作用により骨格筋の肥大をもたらすのです。いわゆる筋肉マンになるのです。このタンパク同化ステロイドは、英語でアンドロゲンといわれる男性ホルモンのひとつであり、この男性ホルモンのひとつであるテストステロンを人工合成したものがいわゆる筋肉増強剤であります。

 ステロイドホルモン合成経路のチャート

 ステロイドホルモン合成のチャートを見ていただきながら説明を読んでもらいたいのですが、1番強い男性ホルモンはテストステロンであります。その他に男性ホルモンはテストステロンの代謝産物であるデヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオンなどがあります。男性が男性になるのは、まさにテストステロンのためであり、男性ホルモンのためであります。ところが合成ステロイドであるテストステロンを使えば使うほど、人体の精巣や副腎皮質で自然に作られる男性ホルモンが作られなくなってしまうのです。ちょうどこれは、アレルギーや膠原病でいわゆるステロイドホルモンといわれる合成糖質ステロイドホルモンを使えば使うほど、副腎皮質で自然に作られる糖質ホルモンであるコルチゾルが作られなくなるのと同じです。つまり既に述べたように、排卵のとき以外は全てのホルモンは負のフィードバックがかかってしまい、外から合成ホルモンを入れれば入れるほど、脳の視床下部はこの合成糖質ホルモンを、自分の命令によって副腎皮質の糖質ステロイドホルモン産生細胞が作り出したものだと思い込み、糖質ステロイドホルモンを作る命令を出さなくなってしまうのです。さらに一時的に合成ホルモンを使うことを止めると、その間必要なホルモンが一時的になくなり、様々な副作用が出るのです。既に特にアトピーや膠原病でいわゆるステロイド剤(合成糖質ホルモン)を用いてきた人は、やめたときにどれだけ苦しまなければならないかはご存知でしょう。

 皆さん、ステロイドホルモン合成のチャートをよく見てください。何がお分かりでしょうか?女性ホルモンは何から作られるかはお分かりでしょう。そうです、男性ホルモンを原料にしてしか女性ホルモンを作ることはできないのです。女性ホルモンの代表は、17βエストラジオールであり、次にエストロン、エストリオールであります。つまり、合成テストステロンが投与されればされるほど、テストステロンの代謝産物として17βエストラジオールの濃度が上昇していき、男性の乳房が女性のように膨らみ、まさに男の中の男である野球選手や運動選手の世界で最も大きな男としての別の問題が生じるのです。それは睾丸の萎縮であります。皆さんご存知のように睾丸は男性の象徴であり、睾丸でテストステロンが作られるのであります。合成テストステロンを飲めば飲むほど、睾丸でテストステロンを作る必要がなくなり、段々と睾丸が萎縮してしまい、ザーメンが作られなくなってしまうのです。いわばテストステロンは男性の性欲の元であるのにもかかわらず、エレクションもしなくなってしまうのです!男の中の男の頭の中では女性に恋する快楽の虜になっているのですが、エレクションできないものですから、男としての価値は全くなくなってしまうのです。つまりEDになってしまうのです。にもかかわらずカンセコはメキシコ国境で捕まった時になぜ排卵誘発剤を持っていたのでしょうか?

 この合成排卵誘発剤はまさに初めに述べたように絨毛性ゴナドトロピン(GnH)と呼ばれるものであります。妊娠中の女性の胎盤から作られるものであります。この合成排卵誘発剤の原料は妊娠中の女性の尿から大量に排泄されているGnHであるので、この妊娠中の女性の尿を大量に集めて精製したものであります。このGnHの仕事は、女性の卵巣と男性の精巣では異なることは既に述べました。卵巣では排卵と女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が促進され、精巣では精子の産生とテストステロンが分泌されるのです。カンセコは男性機能を回復させるために、自分の睾丸の精巣でテストステロンを作らせるために、皮肉にも女性が妊娠中に大量に作るGnHを服用していたのです。確かに合成テストステロンの服用を止め、自分の精巣でテストステロンを改めて作り直してEDの治療になる可能性はないとは言えません。つまり合成テストステロンである筋肉増強ホルモンをやめ、かつ精巣の働きを再びGnHで蘇らせることは理論的に可能でありましょうが、実際には既に萎縮していたカンセコの精巣が、GnHで再びアンドロゲンであるテストステロンを正常に作り出したかどうかについてのニュースは残念ながら一つも入ってきません。カンセコと連絡が取れれば、その後の彼の男性機能の回復ぶりについて聞きたいところです。証拠が得られれば新しい医学の発展に寄与することになるでしょう。アッハッハ!

 さてここから、筋肉増強ホルモンと免疫の抑制についての本論が始まります。

 今日はここまでです。2012/05/10

 合成テストステロンである筋肉増強ホルモンが、直接的に免疫を抑えるのではなくて、筋肉増強ホルモンが代謝された後に作られた女性ホルモンが、免疫を抑えるのかという問題を解決しようとしているのです。実はテーマに挙げた全ての問題点は、とどのつまりは女性ホルモンが副腎皮質ホルモンと同じ作用を免疫に対して及ぼすかという点なのです。これを論証するために一般向けのテーマとして取り挙げただけなのです。

 ある本には、女性ホルモンであるエストロゲンは、糖質コルチコイドの分泌を促すだけではなく、視床下部に作用して副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の分泌を促進させ、最終的には糖質コルチコイドの分泌を促進するとは書かれているのでありますが、残念なことに、なぜエストロゲンがこのような糖質ステロイド作用を持っているかについては一行も書かれていないのです。さらにその結果女性ホルモンが免疫を抑制することについては一行も触れていないのです。ちょうど医者が、患者に『病気になるとストレスをかけてはいけない』と言いますが、その根拠を言わないのと似ています。その答えは、ストレスがかかると、そのストレスに耐えるために、副腎皮質ホルモンを出さざるを得なくなり、この糖質ホルモンが免疫を抑えるからであります。

 エストロゲンが免疫を抑えて、糖質ステロイドを減らすときに見られるように、エストロゲンが減ると糖質ステロイド離脱と同じようなリバウンド現象が起きます。つまりエストロゲンはステロイド作用をなんらかの形で有していることは分かっているのですが、どのようにステロイド作用があるかを今明らかにしようとしているわけです。私は25年間の臨床の中で、延べ数十万人以上の患者さんを診てきました。アトピーの女性もリウマチやクローン病などの膠原病の女性も、全てエストロゲンが減る生理の前後に際しては、必ず症状が悪化します。症状が悪化するということは、免疫が高まっているということと同じであるという事はお分かりでしょう。その後再び生理が終わると症状が楽になっていきます。症状が楽になるということは、免疫の働きが落ちているということもご存知でしょう。まさにステロイドを投与してやめた時に見られる小リバウンドを女性は毎月繰り返しているのです。さらに妊娠出産後に急激にエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)が減ってしまうために、膠原病の中で最も症状が厳しいSLEやリウマチになった人を数多く診てきました。さらに不妊症の治療や避妊のために様々の女性ホルモンを長期に用い、膠原病になってしまった人がいかに多いかということもよく知っています。さらに生理が若くして止まったために、長期に女性ホルモンを投与されてきた人がリウマチになってしまった人もたくさん見てきました。全て女性ホルモンを大量に長期に作り続けたり、長期に用いてやめたときに、免疫の抑制がはずれ、IgEのアレルギーになるべきものを、IgGの膠原病の世界にさせてしまった結果なのです。

 

 ここでさらに新たなる問題が出てくるのです。免疫を抑えるのはエストロゲンだけではなくて、プロゲステロンにも関わりがあるのではないかという疑問です。実はチャートを見てもらってもお分かりのように、プロゲステロンは男性の精巣でも、女性の卵巣でも、かつ男女の副腎皮質においても作られ、さらに言うまでもなく胎盤でも作られています。しかしながらプロゲステロンは、チャートでお分かりのように、糖質ホルモンであるコルチゾルや、鉱質ホルモンであるアルドステロンや、さらに精巣で男性ホルモンであるテストステロンや、女性ホルモンであるエストロゲンを作るための途中経過に産生されたホルモンに過ぎないのです。つまりそれぞれの最終ホルモンを作るために途中で産生されるだけです。特に男性はプロゲステロンは必要ではないので、もしプロゲステロンが免疫を抑える糖質ホルモンの作用があれば、男性も膠原病を女性に負けないぐらいに見られるはずです。従って今のところはプロゲステロンは男性ホルモンを作るための途中産物に過ぎなく、免疫を抑制するホルモンではないと考えています。プロゲステロンが免疫を抑制するかについては後で再び取り挙げるかもしれません。

 

 ここで注意してもらいたいのは、女性ホルモンを投与している間には膠原病は起こらないということです。全て膠原病が起こるのは、女性ホルモンが作られなくなってからなのです。ちょうどこれはステロイドホルモンを投与しているときには膠原病は出ないのですが、やめた時に免疫の抑制が解除されると、膠原病の症状が出てしまうのです。この膠原病の症状をなくすために、再びステロイドを投与すれば、症状はなくなるのです。このときに大量の女性ホルモンを入れればどうなるかについては、いかなる医学者もやったことがないのです。それはやっても副作用ばかりが強くてステロイドほどの効果がないからなのです。ましてや男性の膠原病患者にエストロゲンを入れたりプロゲステロンを入れたりすることは、副作用が強すぎるのでまずは用いることは思いつかないのです。いずれにしろ、あくまでも女性ホルモンは長期に大量に使い続けなければ、ステロイドと同じような免疫抑制効果がないことは知られていることです。

 それではステロイドをやめて、免疫が取り返されたときに、なぜ毎日毎日大量に入ってくる化学物質に対して、アレルギーではなくて膠原病が出るのでしょうか?それはIgGをIgEにクラススイッチするAID遺伝子の働きが回復するよりも、IgGを作る遺伝子の方が早く戻るからです。AID遺伝子をONにするのには必ずIL-4が必要なのです。このIL-4を作るよりも、IgGを作るのに必要なIL-2やIFN-γやTNF-αを作ることの方がはるかに簡単であるからです。もっと分かりやすく説明しましょう。

 

 もう一度どのようにしてIgGを作るのに必要なIL-2やIFN-γやTNF-αなどのサイトカインを作られ、かつIgEを作るのに必要なIL-4が作られるかを復習しておきましょう。難しい話ばかりですがついてきてください。人体に侵入してきた化学物質や細菌やウイルスは樹枝状細胞や大食細胞にまず食べられると、まずIL-12を出します。このIL-12は未熟なT細胞をヘルパーT1リンパ球(Th1)に変えてくれるのです。するとTh1はIL-2やIFN-γやTNF-βを出します。これらのサイトカインは樹枝状細胞や大食細胞を刺激したり、かつIgMからIgGを作れと命令し、1回目のクラススイッチをします。

 まずこのようにしてIgGが作られて、このIgGがアレルギーを起こす肥満細胞の膜のレセプターに結びつくと、徐々に肥満細胞がIL-4を作り始めます。ここで強調しておきたいことがあります。IL-4はあくまでもIgGが作られてこそ、初めて作られ始めるのです。このIL-4は骨髄で作られた未熟なT細胞と結びついて、IL-4を作るヘルパー2Tリンパ球に分化させるのです。このヘルパー2Tリンパ球は、IL-4をどんどん作り出し、このIL-4がIgMやIgGを作っているBリンパ球に結びついてBリンパ球のAID遺伝子を再びONにさせ、自分の作る抗体をIgGからIgEに変えていくのです。ここで注意しておきたいのは、AID遺伝子を見つけたのは我が母校の京大の本庶佑でありますが、今なお作用機序を彼は明らかにしていないことを知っておいてください。いずれにしろ一度AID遺伝子の発現を抑制してしまうと、正常な遺伝子の働きを戻すのが大変なのです。次回にも乞うご期待!

 今日はここまでです。2012/05/24

 なぜ女性ホルモンが免疫を抑えるのかについて2年前に書き始めましたが、答えが分からなかったのですが、やっと分かりました。その答えを書きましょう。30年間一切ステロイドを用いずに、患者の免疫であらゆる病気を治させてきました。ステロイドを使わない日本で唯一の臨床医師としての私の存在を知った難病の患者さんが全国から、いや外国からも来ました。なぜ彼らははるばる遠路から私を求めて来られたのでしょうか?時間と交通費と労力を費やしてなぜ私を訪ねてこられたのでしょうか?ステロイドをはじめとする全ての免疫抑制剤を使えば使うほど病気が治らないことを身をもって知った患者さんたちだったからです。そう、その通りです。病気は38億年かかって作り上げられた命の救世主である免疫が治してくれるのです。しかしながらそんな真実を一切知らないで医者の魔手にかかってしまった患者さんたちは、この魔手から逃れるために当院にやってこられたのです。魔手が用いた薬はステロイドホルモンであります。70年前にケンドールやラインシュタット、ヘンチらによって初めてステロイドが人工合成されて薬として用いられた時に、まさにステロイドは魔法の薬であり奇跡の薬と喧伝されました。ところが70年経ってもこの魔法の薬は病気を治すものではなく、一時的に遺伝子の発現を変えるだけで、病気は永遠に治らずひどくなるばかりで、ステロイドが病気を作っているということに気づいた人たちが全国から当院にこられたのです。ステロイドで免疫の遺伝子の働きである症状を一時的にとっても、必ずその遺伝子の働きは修復されて元に戻ってしまうことに気づいた患者さんたちが当院に来られたのです。この遺伝子の修復を行うには、リバウンドという激しいステロイドの離脱症状を乗り越えなければならないのです。松本医院の30年間はまさにステロイドという麻薬の離脱症状を乗り越えさせた30年間の歴史であります。彼らの病名は何だったと思いますか?あらゆるアレルギーとあらゆる種類の膠原病でありました。この2つの病気は、ご存知のように化学物質をIgEで戦うとアレルギーという名がつき、IgGで戦うと膠原病という名がつくのです。さらに3つ目の病気はヘルペスとの戦いであったのです。ヘルペスについてはヘルペスのコーナーを読んでください。

 ところが膠原病は圧倒的に女性が多いことに気づきました。膠原病で一番難病といわれるSLEやMCTDという病名を持ってこられた患者の中には誰一人男性はいませんでした。しかも女性の場合は膠原病にしろアレルギーにしろ、必ず生理の前後にリバウンドの症状がひどくなるということも分かったのです。さらに出産後には必ずリバウンドが激しくなるということも分かっていました。もちろん言うまでもなく、リバウンドというのは免疫が抑えられていたものが、その抑制をはがされて免疫が敵である人体に侵入した異物との戦いが激しくなったということも分かっていました。さらに加えれば、人体が生きるために自然に作り出す唯一の免疫を抑える物質はステロイドホルモンしかないということも分かっていました。従って女性ホルモンが免疫を抑える根拠は、女性ホルモンとステロイドホルモンとの関係を明らかにすることだけだったのです。もっとはっきり言うと、女性ホルモンが一時的にステロイドホルモンを作らせないか、もしくは、女性ホルモンがステロイドホルモンを間接的に大量に作らせた後女性ホルモンが急になくなると同時に、ステロイドホルモンも同時になくなってリバウンドを起こして病気が生まれるかのどちらかであるということも分かっていました。

 この論理的な思考回路を皆さんが完全に理解されるかどうかは心もとないのですが、要するに理解してもらいたいことは、女性ホルモンが間接的なステロイドホルモン作用をどのように持っているかを説明すればいいだけなのです。その完全な説明をするために、私が2年前に『なぜ女性ホルモンが免疫を抑えて、女性ホルモンが減る生理の前後に症状が悪くなるのか』をテーマにして書き始めたのですが、どうしても答えが出ずに、いずれ分かるだろうという思いで勉強し続けました。それがやっと分かったのです。今までなぜ答えが出なかったのかというと、考え方の方向は正しかったのですが、卵胞ホルモンも黄体ホルモンも、両方とも免疫を抑える力があると考えていたことが解答を得る障害になっていたのです。

 さらに世界中の医者がこのように女性ホルモンが免疫を抑えるという認識を持つことができないのは、医者たちが毎日毎日70年間用いてきたステロイドが免疫を抑え続けるかぎりは病気は治すことはできないという真実から目を背けているからです。つまりステロイドをやめれば、ステロイドを用いる前の症状よりもはるかにひどくなるということを認めようとしないからです。言い換えるとステロイドの離脱症状を真剣に真っ向から向かい合うことを避け続けてきたためです。このステロイドの離脱症状を敢然と挑んだのは、ステロイドを使い続ける限りは病気は治らないと気づいた患者さんだけであり、かつこの離脱症状30年間真摯に対応してきた医者は世界でたった一人私だけだったのです。つまりステロイドを使うが故に病気が治らないということを知っているのは世界で私だけであり、患者さんの免疫の遺伝子のみが病気を治すという真実を知っているのは私だけであったからです。

 リバウンドは免疫の遺伝子の働きを取り戻す尊い戦いなのです。この戦いを最後まで勇気を持って挑戦し、病気を自らの免疫の遺伝子の力で治された過去30年間の患者さんに心から感謝します。真実のためにリバウンドの苦しみを乗り越えて、自分の免疫で全ての病気を治された患者さんに栄光あれ!!

 まずいわゆる女性ホルモンは、ステロイドホルモンのひとつであるエストロゲン(エストロジェン)を指します。このエストロゲンは、卵胞ホルモンとか発情ホルモンともいわれます。メスの動物(人間も含めて)に発情現象を起こす、いわゆる女性ホルモンといわれるものであります。つまり男性を好きになったりするホルモンがエストロゲンであります。ときに『女性を女性たらしめるホルモン』ともいわれます。もうひとつ女性にとってエストロゲンと同じぐらい重要な性ホルモンがあります。女性の生理や妊娠を起こしたり、妊娠を維持するのに重要な役割を果たすステロイドホルモンであるプロゲステロンとよばれる黄体ホルモンであります。以前からわかっていたことは、この2つのホルモンが直接的には免疫を抑えることはないということです。これは正しい方向だったのです。結論から先に言いましょう。黄体ホルモンであるプロゲステロンが間接的にステロイドを作り続け、プロゲステロンがなくなった時に免疫の様々な遺伝子が修復され、免疫の力が取り戻されステロイド離脱症状を起こし、症状がひどくなるのです。エストロゲンは関係なかったのです。

 まずエストロゲンがステロイドを作ることがないことを証明しましょう。なぜステロイドホルモンという名前がつけられたかご存知ですか?このステロイドホルモンの全てが肝臓で作られたコレステロールが原料であることを知ってください。ステロイドホルモンという名前はこのホルモンが全てステロイド骨格とよばれる4つの環が結びついてできた基本構造を持っているからです。

 下にコレステロールから作られていく全てのステロイドホルモンの合成のチャートを掲載します。卵巣エストロゲン合成経路を見てください。赤線で記されています。このチャートには人体で作る全ての卵胞ホルモンが載せられています。皆さんはステロイドホルモンといえば、アトピーやリウマチの治療で用いるホルモンと思い込んでおられるようですが、実はその治療に用いられるステロイドホルモンは、正確には副腎皮質ホルモンというべきなのです。ところが臨床の分野ではこの副腎皮質ホルモンが大量に毎日使われているので、いつのまにかステロイドホルモンはこの治療のための副腎皮質ホルモン薬を指すようになってしまったのです。しかもこの副腎皮質ホルモン薬にも様々な製薬メーカーが作っているので、さらにたくさんの商品名がありすぎて、一般の人には何がステロイドホルモンであるのか、その正しい区別が全くできなくなっています。化学をまともに勉強していない人に対してステロイドの全てを語っても意味がありません。医学って難しいでしょう?しかし医学ってめちゃ面白いんですよ!だからこそこのようなホームページを作り続けることができるのですよ。とにかく下図のステロイドの合成経路を見てください。

 下図に書かれているエストロゲンは5つあります。17βエストラジオール、エストロン、16ケトエストロン、16αヒドロキシエストロン、エストリオールの5つです。特に17βエストラジオールは、別名E2といわれ、このE2が少ないために不妊症を起こすことがあり、不妊症の検査では必ず調べられるエストロゲンであります。図を見られたら分かりますように、この5つのエストロゲンからは副腎皮質ホルモンであるステロイドが作れないことはお分かりになるでしょう。

 さぁ、次に下図の中で真ん中の上あたりに書かれているプロゲステロンに気がつきませんか?このプロゲステロンこそが黄体ホルモンであります。このプロゲステロンから副腎皮質ホルモン合成経路が真下にあるのがお分かりでしょう。それが2つの副腎皮質ホルモンである、11デオキシコルチコステロン、コルチコステロンであります。最後のアルドステロンはステロイドホルモンではあるのですが、これは鉱質ステロイドホルモンであって免疫を抑えることはないのです。この黄体ホルモンであるプロゲステロンが作られれば、知らないうちに副腎皮質ホルモンである2種類の11デオキシコルチコステロン、コルチコステロンが副腎皮質の束状層で作られてしまうのです。ところがこの11デオキシコルチコステロンとコルチコステロンは、あくまでもプロゲステロンが作られて初めて作られるものであります。

 それではどんなときに黄体ホルモンであるプロゲステロンが作られるのでしょうか?排卵のときのメカニズムについては、『なぜ女性ホルモンは免疫を抑えるのか』を読んでください。少し説明します。生理が終わると再び妊娠のために卵巣にある卵胞から卵子を放り出すための排卵の準備をします。脳の下垂体からFSHという卵胞刺激ホルモンがでていきます。そうすると卵巣にある卵胞のうち1個が成熟してきますと、卵胞からエストロゲンが徐々に増えていきます。このエストロゲンが増えるにつれて下垂体にあるLHホルモンが増えていきます。このLHホルモンは卵胞から卵子を排卵させる仕事をします。LHホルモンは黄体形成ホルモンといいます。つまり卵胞から黄体ホルモンであるプロゲステロンを出させる仕事をするのです。排卵の直前に卵胞から最大限作られたエストロゲンが、さらに下垂体に命令して最大限のLHホルモンを出させます。これをLHサージといいます。このときに同時に排卵が起こります。排卵が起こるまではエストロゲンが大量に出され、LHサージが起こるとエストロゲンは減って行きますが、LHによって卵子がでてしまった残りの卵胞から徐々にプロゲステロンが作られるのです。ところが受精が起こらなければ増えたプロゲステロンが急に減ってしまうのです。プロゲステロンが増えている間に、このプロゲステロンを原料として、11デオキシコルチコステロンとコルチコステロンも作られ続けているのです。生理が始まる前後にはこのプロゲステロンはほとんど作られなくなり、一方卵胞ホルモンであるエストロゲンが徐々に作られ始めるのです。と同時に、11デオキシコルチコステロンとコルチコステロンで抑えられていた免疫がプロゲステロンの減少とともに免疫の仕事が一過性に増大して、免疫のリバウンド現象が出現するのです。これを初潮から何年も繰り返しているうちに、徐々に徐々にアレルギーになるべき人が膠原病になってしまうのです。ちょうど子供のときからアレルギーである人が、免疫を抑えるステロイドホルモンを使っているうちにアレルギーがいつの間にか膠原病になってしまうのと同じなのです。

 それにもうひとつ付け加えておきたいのは、出産後にリウマチになる女性が多いことです。あるいは妊娠中に出なかったアレルギー症状が、出産後に免疫のリバウンドを起こしてアレルギーがひどくなったり、膠原病が出たりするのも同じメカニズムであります。それを説明しましょう。先ほどの話の続きになりますが、排卵後受精すれば妊娠が生じます。妊娠したら胎盤ができ始めます。胎盤は性ホルモン的という観点から見れば、何をすると思いますか?排卵が終わったのち黄体ホルモンが増えると言いましたね。排卵の後に残された卵胞から黄体ホルモンが出ることも述べましたね。ただ妊娠がなければ黄体ホルモンが作られなくなるということも述べましたね。ところが妊娠が生じれば、この卵子のなくなった残りの卵胞から黄体ホルモンが作られ続けるのです。妊娠すると胎盤が徐々に作られますが、胎盤が完全なものになるまで3ヶ月かかります。この受精後3ヶ月間、黄体ホルモンを作り続けるのです。胎盤ができてしまうと、今度は胎盤自身がこの黄体ホルモンを作り始めるのです。胎盤は妊娠3ヶ月目から出産の10ヶ月までずっとプロゲステロンを作り続けます。つまり黄体ホルモンは妊娠を継続するために絶対に必要なホルモンでもあるのです。出産とともに胎盤も排出されてしまうので、急激にプロゲステロンが減ってしまいます。

 一方、エストロゲンは胎盤で妊娠3ヶ月目ぐらいから徐々に増えだしていきます。エストロゲン自身は妊娠の継続のためには必要ではないのですが、それではエストロゲンはどんな仕事をしているのでしょうか?妊娠末期に向かって乳汁分泌の準備として必要なのです。つまり乳腺の導管を妊娠中に発達させるために必要なのです。一方徐々に増えていく大量のエストロゲンは妊娠中に乳汁の分泌を止めているのです。

 しかし胎盤でのエストロゲンの合成はちょっと複雑なのであります。やはりこの胎盤のエストロゲンの合成は、胎盤の絨毛でコレステロールからプレグネノロンが作られるのです。下のステロイド合成のチャートをみてください。プロゲステロンの書かれている場所はすぐわかりますね。プレグネノロンはプロゲステロンの前駆物質であることもチャートを見ればすぐお分かりになるでしょう。プレグネノロンの下を見てください。すぐ下にデヒドロエピアンドロステロンが書かれています。このデヒドロエピアンドロステロンをDHESと英語の略語で書くことがあります。このデヒドロエピアンドロステロンから赤色の卵巣エストロゲン合成経路を辿ってください。辿っていくと最後にエストリオールというエストロゲンが出来上がることがお分かりでしょう。

 このエストリオールはどのようにして作られるのでしょうか?それはプレグネノロンが胎児の体に入ります。まさに胎児の体に入るのですよ。エストロゲンを作るのに胎児が協力しているのです!びっくりしませんか?この胎児の体に入ったプレグネノロンは胎児の副腎でデヒドロエピアンドロステロンに硫黄がひっついて、デヒドロエピアンドロステロンサルフェートになるのです。これをDHEASと書きます。このDHEASはさらに胎盤に入ると、チャートを見たら分かるように、エストリオールになるか、もうひとつは胎児の肝臓でDHESに水酸基がついた後に胎盤に戻されてエストリオールになるのです。ここまで医学は解明しているのです。医学って面白いでしょう。

 ついでに避妊用のピルがどのようにして作られるか説明しておきましょう。実はプロゲステロンとエストロゲンであるエストリオールは単に妊娠を維持するだけではなくて、脳の視床下部に働いて排卵を止める働きをしているのです。つまりプロゲステロンとエストロゲンの2つの性ホルモンが協力して脳の視床下部にネガティブなフィードバックをかけて、GnRHを出させないようにしているのです。(GnRHについてはここを読んでください。)GnRHが視床下部から出ない限りは卵巣から排卵は絶対に起こらないのです。

 ついでにもう一つ述べておきましょう。妊娠中の母親の体温が非妊時と比べて高くなっているのをご存知ですか?それは妊娠中に胎盤から作られたプロゲステロンが、視床下部の視索前野の体温中枢に働いて体温を上げているからです。なぜ妊娠中の母親は体温を上昇させる必要があるのでしょうか?体温を上げることによって母親の体の全ての細胞の代謝を高めることにより、胎盤での赤ちゃんの老廃物を処理しやすくしたり、さらに血流をよくして胎児にあらゆる栄養分や酸素を供給するためであります。しかしながらそれは母親の体に大変な負担をかけることになり、自分自身と赤ちゃんの2人分の老廃物の処理をしなければならないので、出産後に腎機能障害を起こしたり、腎臓性の高血圧を起こしたりするからです。

 70年前にノーベル生理医学賞をもらったラインシュタインとケンドールが見つけたステロイドというのは、このコルチコステロンであったのです。ラインシュタインは副腎皮質から取り出した化学物質をH化学物質と名付け、ケンドールが取り出した化学物質をB化合物と名付けたのでありますが、結局は同じコルチコステロンであったので、2人が同時にステロイドホルモンを発見したということでノーベル賞をもらったのです。このステロイドホルモンの仕事のひとつに抗炎症作用や免疫抑制作用があるので、臨床において歴史的にも世界的にも最もよく使われてきた薬となったのです。患者は症状さえ取ってもらえれば快楽を得られるので、このステロイドを使うことを納得し、かつ永遠に病気は治らないので医者も仕事が増えるので、今もなお世界中の全ての病医院で最もさかんに使われている薬となっているのです。言うまでもなく松本医院は例外ですが。アッハッハ!

 ついでにこの図の左端下にあるコルチゾルを見てください。これこそが最も重要で主要な副腎皮質ホルモンであります。まさに副腎の皮質で作られるホルモンの代表がコルチゾルであります。このコルチゾルは正確にはグルココルチコイドと呼ばれ、糖質コルチコイドと訳されます。このグルココルチコイドであるコルチゾルは、先にあげた11デオキシコルチコステロンやコルチコステロンの免疫抑制作用や抗炎症作用が4倍以上も高いのです。さらにコルチゾルよりも何十倍も強い免疫抑制作用を持った人工合成ステロイドホルモンを作り出すことができ、それが臨床で毎日使われているのです。残念です。

2014/02/20