なぜ一度傷ついた糸球体が修復されにくいのか?
なぜ腎炎の炎症がないのにもかかわらず尿にタンパクや赤血球が出ていくのか?

 既に腎炎の項で書いたように、糸球体で原尿が作られるときに、糸球体の毛細血管からは分子量が大きいタンパクや血球は濾過されないのです。ここでもう一度、糸球体の毛細血管からどのようにして血液が濾過されるかについて詳しく復習し直してみましょう。

 

 糸球体の毛細血管の壁は一般の血管の毛細血管よりも極めて薄い壁になっています。この壁が毛細血管とボーマン腔の間を隔てています。この壁が尿を濾過するフィルターになっているのです。血液に接する側は、血管の内皮細胞がつらなっています。この内皮細胞の間に丸い孔(穴)が開き、内皮細胞がとぎれとぎれになっています。このフィルターの中間の層は糸球体基底膜であり、内皮細胞から分泌されたコラーゲン線維からできており、このコラーゲンタンパクの線維が絡み合い、編み目を作っています。

 

 一方、原尿がたまるボーマン腔に接する側は、例の足細胞の細かい突起からできていることはご存知でしょう。隣り合う足細胞の突起がまるでタコの足のように糸球体の表面を覆っています。

 

 フィルターから糸球体の毛細血管の血液を濾過するときには、血液の中の血球、つまり血液の中にいる細胞とタンパク質は大きすぎて、先ほど述べた孔(穴)から通ることができないのですが、それ以外の成分の全てを通すことができます。水、様々なイオン、電解質、ブドウ糖、アミノ酸などの小さな分子は、このフィルターを通り抜けてボーマン腔に出て行くのです。腎炎のような病気では、この孔からタンパク質や血球がもれでていくのです。小さい穴であるときには、タンパク質がまずもれ出て行きますが、さらに炎症のためにフィルターに大きな穴ができてしまうと、さらに分子量の大きい血球が原尿に出て行き、最終的には尿の中にタンパク質や血球が見られるようになるのです。

   

 私は以前に、一度傷ついたフィルターは修復されるのが困難であるということを書きました。長い間、なぜ一度糸球体のフィルターの膜が傷つくと修復されないのか疑問に思っていましたが、やっと分かりました。人体には一度細胞が傷つくと修復できない細胞があります。つまり分裂して傷ついた細胞と入れ替わることができない細胞があるのです。その代表がご存知のように、脳の中枢神経細胞であり、心臓の筋肉であり、骨格筋であるということは知っていたのですが、実は足細胞が分裂できない細胞であることが最近の研究で分かったのです。私が一度書いたように、昔から足細胞は秘密のベールに包まれていたのですが、やっと解明されたのです。糸球体のフィルターを構成する3つの細胞である糸球体の毛細血管の内皮細胞と、糸球体基底膜と、糸球体の足細胞の中で、最も重要なのは足細胞であるということは以前から分かっていました。この糸球体が一度傷ついてしまうということは、足細胞が傷ついて再生できないということです。足細胞が傷つくということは糸球体の修復が不可能であるという意味です。

 

 腎炎のために足細胞が傷つく数が多ければ多いほどますます多量のタンパクや血球が尿に出現し、腎臓の濾過機能、つまり腎機能が低下していくのです。その傷ついた糸球体の基底膜や足細胞の消失を補うように結合組織が増えていくのです。この結合組織を作っている細胞がメサンギウム細胞であり、糸球体に固有な線維芽細胞であります。このメサンギウム細胞から膠原線維が作られ、糸球体の構造が徐々に徐々に線維と置き代わり、ますます糸球体の血液濾過の仕事ができなくなり、腎不全となり、最後は人工透析のお世話にならざるをえなくなるのです。ちょうど慢性肝炎で肝臓の細胞がどんどん破壊されていくと、線維化が進み、肝硬変となり、肝不全となるのと同じです。

 

 それではなぜ足細胞が減ると尿にタンパクや赤血球をはじめとする様々な血球が排泄されるのでしょうか?さらに糸球体腎炎の患者の尿には足細胞も大量に出てくることが分かっています。糸球体が炎症を起こすと、表面を覆う傷ついた足細胞がはがれて尿中に排泄されるのです。

 

 実を言えば、足細胞の細胞体からタコのように伸ばしている足には、足突起と呼ばれる太い剛毛のような細い突起が無数に飛び出し、糸球体の表面を覆い尽くしています。この足突起どうしの間に隙間があり、濾過スリットよばれています。濾過という意味はそこから血液が濾過されるためであり、スリットというのはまさに隙間であります。この濾過スリットの谷底は一枚の膜によって塞がれています。これがスリット膜と呼ばれます。スリット膜には小さな窓があります。この窓から原尿が流れ出てボーマン腔に出ていくのです。足細胞が正常であれば、足細胞のスリット膜をリズミカルに伸び縮みさせて、毛細血管をしごくようにマッサージして必要に応じて血液を濾過しているのです。ところが足細胞が傷つくと、このような調整ができなくなり、常に穴が開いた状態になってしまうのです。まさに糸球体の傷は足細胞の無数の足突起の間にあるスリット膜の穴がいつまでも開いたままになってしまうのです。一度腎炎と診断されたり、ネフローゼと診断されるのは、結局このスリット膜がいつまでも開き続けるために、腎臓の炎症がないのにもかかわらず、開き続けるこの穴からタンパク質や血球が出続けるので、一生治らない病気と刻印を押されてしまうのです。腎炎が治らないのではなくて、このスリット膜がいつまでも修復されないというべきなのです。しかも腎機能が全く問題がないのにもかかわらず、腎臓の専門医は「腎臓に炎症が起こり続けているから怖い病気だ」と言い続けるのです。

 

 なぜ腎炎と診断された人が「タンパク質を摂りすぎるといけない」とか、「運動しすぎてはいけない」とか、「風邪をひかないようにしなさい」と言われるのでしょうか?まずタンパク質を摂りすぎると、腎臓にも多くのタンパク質を含んだ血液が増えます。するといつまでも開き続けている多くのスリット膜の穴からたくさん取ったタンパクの量だけもれでてくるからです。それでは運動はしない方がいいというのはなぜでしょうか?運動をすると、やはり腎臓に流れる血液量が多くなり、従ってスリット膜の穴からもれ出るタンパク質や血球が多くなるからです。それでは風邪をひかないようにしなさいと、元の急性腎炎が治っているにもかかわらずアドバイスされるのでしょうか?風邪をひくと必ず熱が出ます。熱は心臓から出て行く循環血流を多くさせ、従って腎臓の糸球体に流れる血流量も多くなるために、スリット膜の穴から出るタンパク質や血球が多くなるのは当たり前なのです。つまり急性の腎臓の炎症が終わっても、ひとたび傷ついた足細胞が1カ所でも破壊されると、傷ついたスリット膜の穴からタンパク質や血球が出続けるので、急性の腎炎を治らない慢性の腎炎に医者たちが仕立てあげているのです。200万個もある糸球体のうち、何個の糸球体に傷があり、何カ所に傷があるかを知りたいのですが、それは無理です。ただ尿にもれ出てくるタンパクや血球の量である程度推量はできます。

 

 ネフローゼはどうして起こるとお考えですか?急性腎炎が治っても、傷ついた足細胞のスリット膜の穴があまりにも多くて大きすぎるために、タンパク質が大量に尿に出てしまい、その分、血液のアルブミンが減ってしまうからです。

 

 それでは一生続く慢性腎炎というのは存在するでしょうか?つまり一生腎臓の糸球体で敵と戦い続ける慢性腎炎というのはありえるでしょうか?私に言わせれば、ないというのが答えです。ちょうど慢性に続くリウマチとかSLEとかMCTDがないのと同じです。ただ足細胞の傷を修復する免疫の機構を発揮させないステロイドを用いるために、永遠に治らない腎炎が生まれると考えています。

 

 それでは傷ついた足細胞の突起の間のスリット膜の穴をどのようにして閉じればいいのでしょうか?先程述べたように、足細胞は分裂して数を増やすことはできないのですが、周囲の足細胞を大きくすることは可能なのです。特に子供は成人になるまで足細胞もどんどん大きく成長しますので、決して成長を止めるような不自然なことはしないことです。初めて尿タンパクや尿潜血が指摘されて腎炎と診断されるのは、ほとんどが子供の時代であります。腎臓専門医はすぐに腎生検をやりたがります。人為的に足細胞を傷つけてしまい、さらに糸球体の傷口を広げてしまいます。診断のために必要だと腎臓専門医は患者の家族を説得するのですが、診断がついたからといって、傷ついた糸球体を再び正常にする治療は不可能であるのに、なぜ腎生検をやるのか私には全く理解できません。

   

 彼らは足細胞が分裂不可能なことを知っているのでしょうか?残念です。治療といえば結局はステロイド投与というわけですから、一度使えばやめることができなくなります。なぜならば炎症のリバウンドが再び激しくなり、ステロイドの量を減らしては増やし、増やしては減らしというイタチごっこになるだけです。

   

 既に述べたように、このように幼児や若い人に尿の異常が起こるのは、いわゆる腎臓の糸球体で感染症による炎症がIgGやIgAなどの抗体を用いて生じた後か、あるいはメサンギウム組織の結合組織で、ハプテンである化学物質とキャリアタンパクの複合体による異物と免疫との戦いで膠原病が生じたのか、あるいはクロスリアクションによる膠原病のいずれかであります。この腎臓の炎症が細菌感染症による場合は抗生物質投与で治すことができますが、他は自分の免疫で治す以外にないので患者さん自身の免疫の修復機構を利用する自然治癒を待つ以外にないのです。

   

 ここで登場するのが漢方煎じ薬であります。漢方煎じ薬はあらゆる薬の中で唯一人間の免疫を上げることができます。しかも免疫を上げるということは、単に異物を処理してくれるのみならず、組織の修復もしてくれるのです。傷ついた足細胞は二度と分裂して増やすことはできませんが、残った足細胞を大きく成長させることによって、先程述べたスリット膜の修復を時間をかけて閉じてしまうことが可能なのです。古来から腎臓病も漢方煎じ薬で治療してきたと言われる所以であります。足細胞の分裂を待たなくても、足細胞が大きくなって大きな穴を閉じてくれるだけで十分であり、何も正常な足細胞や基底膜の修復を完全に行わなくてもいいのです。開き続けているスリット膜の穴を閉じれば尿にタンパク質や血球が排泄されることがないからです。漢方をかなり飲み続ける必要があるのは、漢方の成分の中に足細胞を成長させる成分が十分に含まれると同時に、穴の傷を塞いでくれる可能性もあるのです。もちろん漢方は免疫を上げることができるので、腎臓で戦っている敵を上手に処理してくれているのです。足細胞が成長するのに時間もかかるので、漢方煎じ薬は古来から腎臓病には長く服用する必要があると言われてきました。

 

 漢方は万能です!なぜならば植物は自分自身の成分で自分の身を守っているのです。漢方生薬は栄養があるのみならず、傷を治す成分が他の植物よりもはるかに多く含まれています。今どうして漢方生薬が免疫を上げるかというペーパーを書き続けていますから、そこも読んでおいてください。

 

 ここでなぜIgA腎症が腎臓に起こるのかについて、新たなる答えを加えておきましょう。以前の腎炎のこのペーパーにIgA腎症について考察しましたが、その原稿を元にして、新しい知見を付け加えましょう。まず付け加えなければならない最も重要な発見があります。それは腎臓の糸球体で原尿が作られますが、その原尿を集める袋をボーマン嚢というのはご存知でしょう。このボーマン囊は実は尿を集める膀胱と同じ仕事をしているのです。膀胱の壁は粘膜でできています。まさに粘膜免疫が膀胱の粘膜を守っているように、原尿を集めるボーマン囊の壁も粘膜でできていることを誰も知らなかったし、私も気がつかなかったのです。それを私が発見しました。

   

 IgAは粘膜を敵から守る免疫の中心の抗体であります。皆さんご存知のように、腎臓は200万個のネフロンでできています。ネフロンは腎小体と尿細管から成り立っています。腎小体は糸球体とボーマン囊から成り立っています。この糸球体は毛細血管の集まりであり、毛細血管からボーマン囊へと原尿が濾しとられ、ボーマン囊という袋に尿が毎日毎日莫大な量がためられるのです。このボーマン囊の壁は粘膜からできていることに気づかなかったことを謝りたいと思います。すみません!

 それではなぜIgA腎症が細菌感染やウイルス感染の後に起こりやすいのでしょうか?さらに様々な食物タンパクがIgA腎症を起こしやすいといわれていますが、なぜでしょうか?なぜ腸管や喉頭や気管支の粘膜で作られるIgAが粘膜とは全く関係ない腎臓に沈着するのでしょうか?このふたつの疑問を解きましょう。

(先ほど修正したように、腎小体の一部であるボーマン囊は、腸管や喉頭や気管支の粘膜と同じく、ボーマン囊の壁は粘膜でできていますから、他の粘膜の免疫で作られた粘膜免疫のIgAがボーマン囊の粘膜に流れてきたとしても何も不思議ではないのです。身体中の血管に一番多く含まれているのはIgG抗体でありますが、IgG抗体よりもはるかに多いIgA抗体が粘膜中を駆け巡っているのです。これからあちこちの粘膜のリンパ節で作られたIgA抗体が、どのようにしてボーマン囊の粘膜と繋がりがあるかを書き記しましょう。以下の説明は、感染症の後になぜ腎炎が起こりやすいかの説明にもなるのです。以前書いた文でありますが、何も間違ってはいないのですが、付け加えておきたいことは、粘膜でIgA抗体を作る免疫のリンパ球の細胞集団は、いつまでも粘膜で仕事をし続けるのです。しかも粘膜で作られたIgA抗体も、粘膜に運ばれやすくなるのです。この仕組みも詳しく書き出すとキリがないのですが、ただひとつケモカインというサイトカインが大きな役割を占めていることだけを知っておいてください。さらに粘膜で働くリンパ球は、体内を循環しても再び自分の仕事のふるさとである粘膜に戻ることを“リンパ球のホーミング”といいますが、その仕組みは結局はケモカインの働きによって説明できるのです。)

 腎炎を起こす前に、粘膜で扁桃炎を起こすほどのウイルスや細菌の感染症が続くと、IgA抗体も大量に作られます。その抗体の中に補体がひっつくIgA抗体も生まれます。もちろん補体と結びつくが、まだ補体がついていないIgA抗体もどんどん作られます。例えば、2次リンパ組織である扁桃などで作られたこのような抗体は、必ず扁桃の輸出リンパ管に乗って扁桃のリンパ節から出て、最後は血管に入っていきます。リンパ管に流れている液体をリンパといいます。(IgA抗体は基本的には補体とは結びつかないと考えられていたのですが、最近補体と結びつくIgAも見つかったのです。)

 まずリンパ管の起始部はどこにあると思いますか?というよりもリンパ液はどこから発生すると思いますか?さらにリンパ液の元は何だと思いますか?意外とこれに対する答えは、現役の医者でも知らない医者が多いのです。さぁ、答えを出しましょう。なんとリンパの元は組織液なのです。それでは組織液とは何でしょうか?組織とは何でしょうか?

 皆さん、人体には細胞が分化した270種類の組織があり、その組織には機能の異なった細胞が働いています。そのためには3大栄養素と水と酸素が要ります。これらを何が運ぶのでしょう?血管です。血管はどこを通りますか?これが結合組織です。この結合組織はほとんど似た組織であり、細胞を支えるためにあるのです。つまり血管から栄養分と水と酸素が運ばれ、組織にもれ出て必要な成分をその組織の細胞が汲み取ります。このもれ出た栄養分の入った水溶成分を組織液といいます。細胞に栄養分や水を運び去った後、今度はこの組織液に老廃物を含んだ水溶成分があります。これも組織液といいます。つまり水溶性の栄養分と水溶性の老廃物をまとめて組織液というのです。老廃物の組織液を運び去るのは何だと思いますか?

 すぐに静脈性の毛細血管であることはお分かりになるでしょうが、毛細血管は全体の組織液の4割ぐらいしか運ばないのです。残りの6割を運び去っていく管はなんでしょうか?これが毛細リンパ管なのです。ここがリンパ管の起始部であり、このリンパ管に入った液体をリンパとかリンパ液というのです。驚きでしょう!毛細血管のあるところには必ず毛細リンパ管の起始部があるということを知っておいてください。従って毛細リンパ管が集まって作るリンパ節はどれぐらいあるかご存知ですか?人体にあるリンパ節は微小なものを含めると数千以上もあるという解剖学者もいます。

 皆さん、リンパ管やリンパ節の解剖学的研究が血管の研究よりもなぜ遅れていると思いますか?解剖学は死体でしか研究できません。死体の血管には血液が残っていますが、リンパ管は毛細血管と比べてはるかに管壁が薄く、かつ血液がないので見つけにくいのです。しかもリンパ管は周りの組織に圧迫されて、リンパ管がつぶれてしまい痕跡がないことが多いのです。しかもリンパ液は組織にある液体と同じものであるので、ますますリンパ管を見つけにくいのです。血管の血液に対して白い液と言われるぐらいに見つけにくいのです。だってリンパというのは組織液と同じですから、毛細リンパ管が虚脱してしまうと組織とかわらなくなってしまい、組織とリンパ管を区別することができなくなるのも当然なのです。

 血管はちぎれのない完璧な循環装置でありますが、リンパ管はちぎれのある不完全な循環器官というべきです。つまりリンパ管の始まりは全ての結合組織から始まるのです。人体に大きなリンパ節は600あるといわれます。組織に入ってきた化学物質や細菌やウイルスは、組織にいる樹状細胞に捕まえられて毛細リンパ管に入り込み、これらのリンパ節の中で一番近いリンパ節(これを所属リンパ節と言いますが)に運び、抗体を作る準備を始めるのはご存知でしょう。さらに癌細胞も所属リンパ節に転移するので、癌細胞が生じた組織に最も近いリンパ節を切り取るのもご存知でしょう。)

  それでは次に、組織からリンパ管を通して集められたリンパが、どのように血管に集まるかを説明しましょう。まず左右の下半身から集められたリンパと上半身の左側から集められたリンパは、胸管というリンパ管に一緒に集められ、左鎖骨下静脈に入って血管に入り、心臓へ戻っていきます。上半身の右側から来たリンパは、右リンパ本管に入り、右鎖骨下静脈に合流して心臓に戻ります。心臓に血液と共に戻ったリンパは心臓から出て行く血液と一緒に全身に運ばれ、腎臓にも行きます。腎臓に入った栄養血管は糸球体のメサンギウムに到達すると、栄養と共に補体のついたIgAに結びついた細菌やウイルスの断片を吐き出し、これを待ち構えていたメサンギウム細胞や大食細胞が食べます。このような細菌やウイルスの断片が大量でなければ、メサンギウム細胞や大食細胞は簡単に処理して溶かしきってくれるのですが、あまりに多いと炎症が続きます。このときにたまたま血管から化学物質(ハプテン)と結びついたキャリアタンパクの複合体が一緒に運ばれてくると、ここでときに細菌やウイルスの断片(エピトープ)と似たハプテンキャリアタンパクとIgAとがひっつくことがあります。このIgAは本来は細菌やウイルスの抗原につくべきものですが、この抗原がたまたまハプテンキャリアタンパクの抗原と似ているときには、このIgAがハプテンキャリアタンパクに結びついてしまうのです。これを抗体のクロスリアクションといいます。さらに補体は血流や糸球体の間質にいつも大量にありますから、ここでまた補体のついていないIgAがハプテンキャリアタンパク結合体にひっつきます。この補体を大食細胞やメサンギウム細胞が食べだします。ところがこのような化学物質を貪食細胞は溶かし殺せるわけはないので、殺せない化学物質と共に細胞を傷害する活性酸素や様々な酵素と共にメサンギウムに吐き出してしまいます。ますますメサンギウム間質の炎症が起こり、近辺の毛細血管の内皮細胞にもさらに炎症が波及し、毛細血管の内皮細胞がつぶれていきます。つまり糸球体の毛細血管に穴が開いてしまい、ここからタンパクや血球やその他の血液成分が漏れ出し始めます。はじめに述べたように、糸球体の毛細血管は特別な毛細血管であり、輸入細動脈から輸出細動脈まで毛細血管が連続的につらなっているので、補修が難しく、いつまでも穴が閉じられなく、いつまでも尿にタンパクや潜血が見られ、腎炎と診断をつけられてしまうのです。(この穴は足細胞のスリット膜の穴であり、足細胞が分裂できないために閉じられることが難しいことは新たに説明しておきました。)

 今日はここまでです。2013/09/26