TARCについて
 白血球とDNAの起源

 今日は、アレルギーの全てに関わっているケモカインであるTARCの意味やその働きについて詳しく説明しましょう。TARCは、“thymus and activation-regulated chemokine”の頭字語であり、特定の白血球、とりわけTh2リンパ球を引き寄せるケモカイン群(白血球であるTh2リンパ球を引き寄せる因子)の一つです。皆さんご存知のように、Th2細胞はアレルギーを司るリンパ球であります。TARCは別名CCL17といいます。CCL17は“chemokine ligand 17”の略語であります。リガンドというのは、日本語で適当な訳がありませんが、「レセプターであるタンパク質に特異的に結合する低分子タンパク物質」であります。つまりレセプターに引っ付くタンパクがリガンドであることをしっかり覚えておいてください。CCL17の受容体はCCR4であります。CCR4のRは“receptor”の略語です。ケモカインとレセプターについてはこちらを読んでください。

 さて、CCL17は、樹状細胞、リンパ球、血管内皮細胞、線維芽細胞、表皮角化細胞などから産生されます。CCL17の受容体であるCCR4は、Th2細胞に発現しており、TARC(CCL17)は、Th2細胞をどんどんアレルギーの炎症部位に引き寄せる仕事をします。71個のアミノ酸より構成されるタンパク質です。アトピー性皮膚炎では、様々な刺激によって表皮角化細胞等から、TARC産生が行われ、アレルギー細胞を引き寄せたり、誘導したり、または増強されるのです。このTARCがTh2細胞を病変局所に引き寄せてTh2細胞からインターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)や、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン10(IL-10)を産生させます。IL-4は、アレルギー抗体であるIgE抗体をBリンパ球にどんどん作らせ、IL-5は、好酸球をどんどん増やして、様々なアレルギー反応を亢進させますが、IL-10は最後は免疫寛容を起こさせて、アレルゲンである化学物質(ハプテン)と共存することを可能にするのです。

 従って、ステロイドを辞めた時に、リバウンドが起こると同時に、アレルギー反応が再開され、血清中のTARC値(CCL17)は上昇するのですが、IL-10によってナイーブT細胞(Th0)がiTreg(inducible regulatory Tリンパ球)大量に作られるとiTregは、FOXP3という遺伝子を発現させるとTGFβを産生します。TGFβというのは、transforming growth factorβの頭字語であります。その作用は、アレルギーに関する細胞が増殖するのを抑制する作用があり、その結果、化学物質との戦いを起こすアレルギー関連の細胞が増殖しなくなり、最後は化学物質に対して自然後天的免疫寛容を起こすのであります。ステロイドをアレルギーで用いると、このような自然な免疫の働きが生じなくなり、つまり自然後天的免疫寛容を起こすこともできなくなり、永遠にアレルギーが治らなくなるのです。

 最近の研究では、表皮細胞がTSLPというサイトカインも出すことがわかりました。もちろんTSLPの検査は保険では認められていませんが。TSLPというのは英語の“Thymic stromal lymphopoietin ”の頭字語であり、日本語で訳せば「胸腺間質リンパ球産生ホルモン」とでも名付けて良いと思います。TSLPは、組織の線維芽細胞や表皮細胞や樹状細胞であるランゲルハンス細胞が産生し、表皮細胞にある樹状細胞を刺激してT細胞を分化させます。もっと具体的に説明しますと皮膚の表皮細胞が産生するTSLPというサイトカインは、表皮にある樹状細胞であるランゲルハンス細胞を活性化します。みなさん、ランゲルハンス細胞というのは皮膚に常駐している樹状細胞であり、antigen presenting cellでありますから、ランゲルハンス細胞は表皮にあるアレルゲンをどんどん取り込み、それを所属リンパ節まで運ぶのは理解できますね。リンパ節でアレルゲンをTh0リンパ球に見せて、Th0リンパ球をTh2リンパ球に分化させます。さらに、表皮にあるランゲルハンス細胞は、TARCを産生し、Th2リンパ球を皮膚に引き寄せる(遊走させる)こともできるのです。

 注意しておきたいことは、TARCは、アレルギーの指標の一つにはなりますが、必ずしもすぐにIgEと値を同期するものではないことを知っておいてください。というのは、TARCとIgEの産生には時間差があるからです。私のアトピーの患者さんは、TARCという言葉は耳慣れていらっしゃると思いますが、この文章を読んでTARCの意味を完全に理解しておいてください。

 TARCについての解説は終わったので、現代文明で最も多いアレルギー疾患に関わる白血球のうち3種類の顆粒球である肥満細胞、好塩基球、好酸球について復習してみましょう。実はこの3つの顆粒球の全貌はまだまだ研究途上であることを知っておいてください。まず肥満細胞から始めます。

 肥満細胞は、英語でMast cellといいます。哺乳類の粘膜下組織や結合組織などに存在しています。肥満細胞は骨髄にある造血幹細胞から作られる細胞です。ランゲルハンス細胞とともに炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持っています。ランゲルハンス細胞は、異物をリンパ節まで運び、T細胞に異物、主に病原体の断片を提示するAPC(Antigen presenting cell)の仕事をします。T細胞やB細胞にIgGを作らせ、その結果病原体を殺す仕事に関わるのです。

 一方、肥満細胞の仕事は、殺す必要のない異物を排除する仕事をするのです。肥満細胞にも粘膜型と結合織型の2種類があります。たとえば社会問題となっている花粉症(実は大気汚染症)に代表されるアレルギー性鼻炎の発症部位である鼻粘膜においては、粘膜型の肥満細胞がアレルギーを起こしております。肥満細胞はIgEを介したIgE型アレルギー反応の主体です。肥満細胞の中にはヒスタミンをはじめとした各種化学伝達物質(ケミカルメディエーター)があり、肥満細胞の表面に結合したIgE抗体のYの字の両手にアレルゲンが結合します。肥満細胞の1箇所にアレルゲンを引っ付けたIgE抗体が数多く結合する(架橋が成立する)と、それがトリガーとなって肥満細胞膜にある酵素の活性化がうながされ、その結果、肥満細胞の顆粒に含まれているヒスタミンをはじめとする様々な化学物質が放出されます。これを脱顆粒といいます。同時に、肥満細胞の細胞膜にある細胞膜酵素の活性化は、アラキドン酸の生成と代謝を亢進させます。これをアラキドン酸カスケードといいます。その結果、代謝産物であるロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、トロンボキサンA2などが細胞膜から細胞の外に遊離されます。肥満細胞から遊離された化学伝達物質(ケミカルメディエーター)のうち、ヒスタミンやロイコトリエンC4などは気管支平滑筋収縮作用(喘息)、血管透過性亢進作用(粘膜や皮膚の浮腫)、粘液分泌作用(痰や涙)などがあり、その結果、アレルギーにおける即時型反応となります。ステロイドを使いすぎると最後はアナフィラキシーショックを起こすのも、肥満細胞であることは既にみなさんご存知でしょう。一方、血小板活性化因子(PAF)やロイコトリエンB4(LTB4)などの化学伝達物質は好酸球や好中球などを炎症巣に呼び寄せる遊走因子としての働きを発揮します。このPAFやLTB4の働きは、アレルギーの即時型ではなくて、遅延型のアレルギー反応を引き起こすのです。また、肥満細胞は樹状細胞が所属リンパ節に移動させる働きもあります。

 次に好塩基球について復習しましょう。好塩基球は、様々なアレルギー性の炎症反応に関わっております。例えば、体内に取り込まれ、細胞外に寄生する寄生虫による感染箇所には、好塩基球が多く存在しており、寄生虫感染とアレルギー反応の両方に関与しています。

 ここで寄生虫と人間の免疫の戦いの意味づけをしてみましょう。寄生虫と人間の免疫の戦いは、ちょうどヘルペスと人間の免疫との戦い似ていることを知ってください。

 結局寄生虫というのは、マクロの巨大な敵ですから、ミクロな人間の免疫の働きでは絶対に殺すことができないのです。殺すことができなければ人間の免疫は2つの対応策しかとれません。共存するか排除するかのどちらかです。寄生虫は人体に入り込むことはできますが、細胞に入り込むことはできません。一方、ヘルペスウイルスは人体に入り込んでも細胞に入らない限りは増殖できません。しかもヘルペスウイルスは細胞に入り込んでしまうと、人体の免疫が正常である限りは、人体の細胞の中でエピソームという形で潜伏感染(溶原感染)し続けることで免疫から逃げ切ることができます。人体の免疫が落ちればどんどん増殖感染(溶解感染)し続けて、無限大に人体で増殖し続けることができます。一方、巨大な寄生虫の感染はもともと免疫が寄生虫を見出したところで殺すことは無理ですから、寄生虫感染が起こった時にすでに勝敗がついています。ところが寄生虫は人体の栄養を奪い続けることができますが、栄養が少なくなったからといって人間は死ぬものではありません。ところが寄生虫によって直接殺されることはないからといって、人間の免疫は寄生虫に人体を蹂躙させることは許せなかったので、仕方なくそれなりの無意味な防御を3種類の細胞によってさせたのです。

 そこで生まれたのが、3つの顆粒球である肥満細胞、好塩基球、好酸球であったのです。つまり殺しきれないけれども、殺しきれない異物である寄生虫に対して、異物だという面に対して排除するという抵抗を示しただけなのです。ところが同時に異物ではありますが殺す必要がない地球に存在する様々な天然の化学物質を排除する働きも、同時に3つの顆粒球が持つようになったのです。それが現代の科学文明が作った人工の化学物質という異物を排除しようという働きとして残っているのがアレルギー反応であるのです。しかもこのアレルギー反応もいずれ共存できる無害な異物であるということを認識し、最後に自然後天的免疫寛容という働きも進化させたのであります。

 結論を述べますと、現代のような文明には、寄生虫の卵や幼虫が人体に侵入するということは清潔な衛生状態が極度に高まった先進国では滅多に起こることではないのですが、殺しきれない天然の異物を排除するという人体の免疫が、文明が作った化学物質に対してアレルギー反応を起こすことになってしまったのです。

 人間は常に自己中心的であり、今という現在という瞬間を快楽を求めてしか生きられないものですから、生命というのは何かということさえ考えることをやめてしまいました。実は、人間という生命が特別に価値あるのではないのです。というのは、進化の中で突然変異を繰り返して今から1000万年前にヒト属が生まれ、10万年前に唯一のヒト科のホモ・サピエンスが生まれたのです。ここで私の大好きな寄り道をしましょう。

 少し生命はいつ頃誕生したのかについて思いを馳せましょう。どのようにしていつどこで最初の生命が誕生し、現在まで進化してきたのかは謎であり、あくまでもそのプロセスは推測でしかありません。もちろん生命とは何かについても議論が百出しており、答えはまだ見つかっておりません。46億年前に地球が生まれました。その後、どのようにして生命が地球に誕生し、かつどのように生命の進化が行われたのかを勉強しましょう。

 生命が発症する前に、まず炭素を含む化合物である有機化合物が誕生しました。強い太陽の紫外線や火山の噴火や稲妻などの多い、想像を絶する過激な環境下で様々な化学反応が自然に行われ、そのような中で有機化合物は生まれました。そのような有機化合物が重合して、遺伝子の素である核酸やタンパク質などの高分子有機化合物が生まれました。

 それでは生命の基本的な根源はなんでしょうか?自己複製であります。自己複製ができるのはなんでしょうか?遺伝子です。最初に複製ができたのはなんでしょうか?DNAではなくてRNAであると考えられております。それはRNAは、RNA自身が触媒の働きを持っている酵素に似た働きがあり、かつRNA自身を複製する反応が可能である原始スープというべき濃厚溶液において行われたと考えられています。そのうちにRNAが自分を取り巻く膜を作り、最後は現在のようにDNAを中心として生命を作り出したと考えられています。ここまで来るのに、11億年ほどかかったと考えられています。つまりあらゆる生物の共通の祖先となる細胞の原型ができるのに11億年かかったのであります。先ほど述べたように地球の誕生は46億年前であります。生命の誕生は原核生物でありますが、それは35億年前に出現しました。

 46億年前の地球誕生から、生命の原型である35億年前の原核生物の出現までのプロセスを5段階に分けてもう少し詳しく説明しましょう。その5段階とは、1)単純な有機化合物の生成、2)有機高分子の生成、3)RNAの自己複製系(自己増殖系)の誕生、4)RNAとタンパク質による複製系(増殖系)の誕生、5)DNAを遺伝情報とする生命系の誕生の5段階であります。


1) 単純な有機化合物の生成についてであります。どんな有機化合物が必要だったのでしょうか?二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)シアン化水素(HCN)、の4つからアミノ酸、糖、核酸のプリンとピリミジンなどが生成されたのです。

2) 有機高分子の生成であります。1)で作られたアミノ酸の重合で、ポリペプチドが生成されました。さらに1)で作られた、プリン、ピリミジンなどの核酸からヌクレオチドの重合が可能となり、ポリヌクレオチドが生成されました。

3) RNAの自己複製系(自己増殖系)の誕生についてであります。RNA自身が自らを複製する鋳型を持つと同時に、複製するために反応する必要がありますが、そのための触媒としての機能を持つことができるようになりました。

4) RNAとタンパク質による複製系(増殖系)の誕生についてであります。RNA自身が持っていたタンパク質合成する触媒機能をRNA自身ではなくて、新たに作られたタンパク質に移行することができたのです。

5) DNAを遺伝情報とする生命系の誕生についてであります。それまでは遺伝情報はRNAに収納されていたのですが、RNAよりもはるかに化学的に安定なDNAに移行する事ができたのです。


 5段階を経て、35億年前に地球上最初の生命の共通の祖先となる最小単位である細胞の原型である原核生物ができるのに11億年かかりました。さらに30億年前にウイルスが誕生し、21億年前に真核生物が生まれ、6億年前に多細胞生物が出現しました。多細胞生物が出現した後に、動物や植物の出現が引き続いて起こるようになったのです。このプロセスについて詳しく説明しましょう。今述べたように、地球上に最初に現れた生物は原核生物でありました。原核生物は、一個の細胞が一個体である単細胞生物であります。真核生物の祖先は、このような原核生物から進化した、やはり単細胞の生物であります。それでは原核生物と真核生物はどこが違うのでしょうか?決定的な違いは、核があるかないかの違いであります。核がないのが原核生物であり、核があるのが真核生物といいます。ついでに言えば、原核生物のDNAは細胞膜に付着しておりますが、真核生物のDNAは核の中にあります。さらに、原核生物は細胞の中に膜構造がなくミトコンドリアも細胞骨格もありません。一方、真核生物は細胞内に膜構造があり、ミトコンドリアも細胞骨格もあります。原核生物の代表は細菌であります。真核生物は動物と植物を含む細菌以外の生物であります。それではカビといわれる菌類はどちらに所属すると思いますか?なんとなくカビは細菌の一種と思われがちでありますが、違うのです。動植物と同じ真核生物に属しているのです。

 それでは、真核生物の核はどのようにして生まれたのでしょうか?それは先ほど述べたように原核生物のDNAは細胞膜に付着していると言いました。核の起源は原核生物のDNAが付着していた細胞膜が細胞質に貫入し、やがて細胞膜からくびれて細胞質内に完全に移行したものなのです。それでは、35億年前に生まれた原核生物は、どのようにして多細胞真核生物にまで進化したのでしょうか?

 最初の生命の原型である原核生物の細胞が生まれた頃の地球には酸素が全くなかったのです。言い換えると、原核生物の細胞の祖先は酸素を嫌っていたというよりも、酸素が必要でなかった祖先だったのです。これを嫌気性の細胞といいます。英語でanaerobicといいます。原核生物の単細胞が最初に獲得した能力は、二酸化炭素(CO2)から有機化合物を合成する能力でありました。この能力は、現存しているシアノバクテリア(cyano bacteria)、日本語では藍色細菌とか青緑色細菌や藍藻類といわれる細菌に似たバクテリアが持っていたのです。この太古のバクテリアが太陽のエネルギーを使って行っていたのです。もちろんこのプロセスを光合成(photo synthesis)というのはご存知でしょう。もちろん水を使う光合成では副産物として酸素が生じますね。いうまでもなく我々が吸い込んでいる酸素は全て植物が光合成の副産物として作り出したのもご存知でしょう。光合成で作られた酸素は、最初は全て海中にある鉄イオン(Fe2+)と反応して、酸化鉄として海の底に沈殿してしまいます。海中の鉄イオン(Fe2+)が完全に枯渇するまで、大気中には出られなかったのです。無生物の代表とされている鉄鉱石もシアノバクテリアが作ったものであります。こうして海中の鉄イオン(Fe2+)が枯渇して、シアノバクテリアが作った酸素が結びつく鉄イオン(Fe2+)がなくなってしまうと、その酸素は大気中に存在するようになったのです。海中の鉄イオン(Fe2+)が完全になくなるのに15億年もの年月がかかったのです。大気中に酸素が出始めると、酸素が好きな単細胞の好気性細胞(aerobic cell)が徐々に増えて、集合し始めて多細胞生物が出現するようになり、引き続いて動物も植物も誕生することになったのです。

 それでは真核生物の起源はなんでしょうか?やはり多細胞生物の起源と同じく、嫌気性細胞なのです。進化のある時点で、好気性の細菌が嫌気性細胞に取り込まれたのです。この好気性の細菌が持っていた酸素をエネルギーに変えるミトコンドリアが嫌気性細菌の一部となり、さらにこの新しい細胞に光合成細菌(藍藻)が取り込まれたものが植物へと進化したのです。

 次回は残りの好塩基球の話と、好酸球の話と、さらにウイルスがどのように生まれ、かつウイルスが生命の元であるという考え方について詳しく述べたいと思います。

今日はここまでです。2019/01/31



 2つ目のアレルギーに関わる好塩基球について述べます。好塩基球に関してはあまりよく分かってはいません。好塩基球の顆粒の中には、ヒスタミン、セロトニンなどの血管作動性アミン、ヘパリンの血液凝固阻害、ヒアルロン酸の細胞接着分子である糖タンパク質が含まれています。アミンとは窒素と炭素とが結合している有機化合物のことです。窒素を含む生体分子の大半がアミンであります。DNAを構成するヌクレオチドの塩基(チミン、グアニン、シトシン、アデニンの4つ)もアミンであり、かつ漢方の成分はほとんどが窒素が含まれているアルカロイドであるので、私が処方している漢方の成分もアミンです。血管作動性アミンというのは、血管の平滑筋に作用して収縮させたり弛緩させたりするアミンのことです。ヒスタミンもアミンの一種です。なぜヒスタミンと呼ばれるのかご存知ですか?まさにアミノ酸のヒスチジンからできたアミンですから、縮めてヒスタミンと名付けたのです。ご存知のようにヒスタミンは血管を拡張し、組織に血流を増やします。 言うまでもなく、肉眼で見える大きな寄生虫が人体に侵入すると増え、好塩基球はヒスタミンを産生しますが、寄生虫は大きすぎて殺すことはできません。アレルギー反応の際にも、このヒスタミンが放出され、アナフィラキシーショック、じんましん、気管支喘息などを引き起こすことがあります。IgE依存性のアレルギー症状がアレルゲン投与から3~4日後に一番症状がひどくなるのは、好塩基球が中心的な役割を担っているのです。

 好酸球は英語で“Eosinophil granulocyte”といい、白血球の一種である顆粒球の1つであります。白血球には5種類の血球が含まれ、まず病原菌を食べる好中球と、今から述べようとする好酸球と好塩基球と、既に述べた肥満細胞と、最後は単球であります。様々な医学書にはこの5種類はそれぞれ働きが異なるにも関わらず、不用意に白血球という言葉を使いすぎです。白血球を使いたければ、5種類のうちのどれであるかを指定して使うべきです。逆にいうと、白血球を頻発する医学書は自信のない医学書だと私は考えています。

 さて、好酸球は、正常な末梢血でみられるのは成熟型で、普通染色標本でみると、エオジン親和性の橙黄色に染まる均質・粗大な顆粒(好酸性顆粒)が細胞質に充満し、核は通常2分葉で細いクロマチン糸でつながれ細胞周縁に偏在し、細胞の大きさは好中球に比べてやや大きく、直径10~15μm。肥満細胞やTh2細胞から出されるIL-5によって活性化します。好酸球数は白血球の0.5~13%を占めると言われていますが、下限の0.5%から上限の13%までの差がありすぎるのはなぜでしょうか?アレルギーや寄生虫を持っていない人は0.5%であり、上限の13%の人は、アレルギーや寄生虫を持っている人です。ところが文明国では寄生虫を持っている人は何もないので、好酸球が高い人はアレルギーが強い人と、ステロイドを投与されて、のちにステロイドをやめてリバウンドしている人です。私が経験したステロイド離脱症状で高くなった好酸球が一番の人は18%にもなっていました。

 それでは、ヒスタミンの作用にどんなものがあるでしょうか?血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用があります。さらに、アレルギー反応の発現に介在物質(mediator)として働きます。したがって、ヒスタミンが過剰に分泌されると、ヒスタミン1型受容体(H1受容体)というタンパク質と結合して、全てのアレルギー疾患の原因となるのです。ですから、アレルギー疾患で対症療法として抗ヒスタミン剤が必ず出されてしまうのです。

 ヒスタミンは、神経組織では神経伝達物質としても働き、音や光などの外部刺激および情動、空腹、体温上昇といった内部刺激などによっても放出が促進され、オキシトシン分泌や覚醒状態の維持、食行動の抑制、記憶学習能の修飾などの生理機能を促進します。

 ここでついでに授乳促進作用を持つオキシトシンについて復習しておきましょう。オキシトシン(Oxytocin, OXT)は、視床下部の室傍核(PVN)と視索上核(SON)の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンです。PVNは、Para ventricular hypothalamic nucleusの略であり、SONは、Supra optic nucleusの略であります。9個のアミノ酸(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)からなるペプチドホルモンであります。Cysはシステイン、Tyrはチロシン、Ileはイソロイシン、Glnはグルタミン、Asnはアスパラギン、Cysはシステイン、Proはプロリン、Leuはロイシン、Glyグリシンの9つのアミノ酸であります。

 オキシトシンの作用は、末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時に子宮を収縮させます。乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促します。この働きのために臨床では子宮収縮薬や陣痛促進剤として用いられます。オキシトシンは分娩中の子宮頸部および子宮の伸長および母乳からの乳首の刺激に応答して分泌され、PVN(視床下部の室傍核)やSON(視床下部の視索上核)のニューロンでオキシトシン合成が高まり、血液中へのオキシトシンが放出されるのです。

 ヒスタミンの受容体にはいくつかの種類があります。ヒスタミンは特異的な受容体を介してその作用を発揮します。現在のところ、4種のGタンパク質共役型受容体が発見されており、受容体によりヒスタミンが結合したときの作用が異なるのです。ヒスタミン受容体の作用を抑えるのが、例の抗ヒスタミン薬でありますが、抗アレルギー作用や胃酸抑制の作用を示します。

 H1型:平滑筋、血管内皮細胞や中枢神経などで発現し、炎症やアレルギー反応を起こします。

 H2型:消化管の細胞などで発現し胃酸分泌を促進します。

 H3型:中枢神経系などで発現し、ヒスタミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の放出を促進します。

 H4型:2000年にクローニングされました。胸腺、脾臓、小腸などで発現が確認されています。H1受容体拮抗薬で抑えられない痒みにH4受容体が関与しているのではないかといわれています。

 それでは好酸球に含まれる顆粒について勉強しましょう。

 好酸球の顆粒は主に以下の4つのタンパク質が含まれています。major basic protein (MBP)、eosinophil cationic protein (ECP)、eosinophil peroxidase (EPO)、eosinophil-derived neurotoxin (EDN)の4つです。この中で、MBP、ECP、EPOは 原生動物と蠕虫類(ぜんちゅうるい)に対して細胞毒性を持っており、こうした生物の神経系を働かなくさせるのです。蠕虫類は、まさに回虫やギョウ虫であり、寄生虫の代表です。ちなみに原生生物とは、単細胞の動物や植物の一群を指します。原生動物は、真核生物の中の単細胞から成り立っている動物のことです。真核生物とは核膜で包まれた核を持つ生物です。人間はその代表です。ところがミクロの化学物質である上にあげた3つの細胞毒性を持つMBP、ECP、EPOをいかにマクロな巨大な寄生虫にふりかけても死ぬわけはありません。したがって、人体の免疫は寄生虫に対しては無力であることがお分かりになるでしょう。さらに、顆粒には、histaminaseやarylsulfataseが含まれており、histaminase はヒスタミンの働きを中和し、arylsulfataseは好塩基球から分泌されたロイコトリエンを中和します。さらに、この顆粒にはアズール体であるlysozymeを含み、取り込まれた異物を分解します。

 最近、好酸球関連の病名を持った患者さんが増えています。例えば、鼻茸、好酸球増多症候群、好酸球性筋膜炎、Wells症候群(好酸球性蜂窩織炎)、慢性好酸球性白血病/特発性好酸球増加症候群、好酸球性肺炎、木村病などであります。とりわけよく見られるのは、好酸球性肺炎です。どうしてでしょうか?それは2つの理由があります。もちろん一つは全世界的に人工化学物質が増えすぎたからです。しかも大気汚染物質がそれとともに大量に増えたために、それを吸い込んだ肺の中でIgEで排除しようとするアレルギーの戦いが地球的に増えたためです。大気中に含まれた化学物質を吸い込んだ肺は、同時にアレルギーを起こすTh2タイプのT細胞が集積します。このTh2はインターロイキン5(IL-5)を大量に産生し、このIL-5は骨髄で好酸球をどんどん作らせます。その結果、産生された好酸球は吸い込まれた化学物質を肺で排除するために集積します。Th2はインターロイキン4(IL-4)はBリンパ球にアレルギー抗体であるIgEを作らせます。肺に集積したアレルギーに関わる肥満細胞や好塩基球や好酸球とアレルギー抗体であるIgEが結合すると脱顆粒が起こります。アレルギーに関わる3つの細胞である肥満細胞や好塩基球や好酸球にIgEが結合すると、既に上に述べたように、肥満細胞の顆粒が大量に持っているヒスタミンを始めとする、ロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、トロンボキサンA2や、好塩基球の顆粒が含んでいるセロトニンなどの血管作動性アミン、ヘパリンの血液凝固阻害、ヒアルロン酸の細胞接着分子である糖タンパク質や、好酸球の顆粒が含んでいるMBP、ECP、EPOの全てが脱顆粒されて、3つの細胞から一斉に放出されてしまうと、放出された化学物質が説明不可能なほどの炎症やアレルギー反応を起こしてしまうのです。だからこそ最初に述べた鼻茸、好酸球増多症候群、好酸球性筋膜炎、Wells症候群(好酸球性蜂窩織炎)、慢性好酸球性白血病/特発性好酸球増加症候群、好酸球性肺炎、木村病などの様々な機序が説明しきれない病気が増えてしまったのです。病巣にただなんとなく好酸球が多いので、好酸球性という名称がついているだけなのです。ちょっと上にあげた病気のいくつかについて勉強しておきましょう。

 鼻茸(はなたけ)は、副鼻腔にできるポリープであり、鼻の粘膜が膨れて茸(キノコ)のような状態になったものです。鼻ポリープとも呼ばれます。鼻茸は慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎と関わりがあります。アレルギー性鼻炎やアレルギー性副鼻腔炎で長期にステロイド点鼻薬を使うと起こりやすくなります。ひどくなると鼻で息が全くできなくなったり、鼻の穴から鼻茸が外に出ることもあります。また匂いを感じる神経を圧迫することで、嗅覚が鈍くなったり、匂いを感じなくなることもあります。

 好酸球性筋膜炎は、激しい運動や外傷の後に、四肢の筋膜(筋肉を包む膜)に炎症が起きます。血液検査では好酸球の増加と免疫グロブリンの上昇が見られます。検査では抗核抗体やリウマチ因子は陰性です。病理組織では筋膜周囲に炎症が起きて筋膜が肥厚し、線維化が見られます。好酸球の浸潤が認められない場合もあります。症状は、痛みと発赤を伴って四肢が対側性に腫れ、皮下が硬くしこります。強皮症に似た症状ですが、手指の皮膚硬化やレイノー症状はなく、内臓病変も伴わない点が異なります。関節の運動制限のために関節拘縮が起こることがあります。治療はステロイド薬がよく効きます。症状の改善に伴って減量し、維持療法のあと治療の必要がなくなります。軽症例では治療しないでも自然によくなることもあります。進行した皮膚硬化や、関節拘縮は難治性となることもあります。

 木村病(または木村氏病)は、軟部好酸球肉芽腫症とも呼ばれ、無痛性で良性の皮膚腫瘍の一つです。発生は少なく、症例報告は多いですが原因は分かっていません。若年者に多いのが特徴でほとんどが20歳未満です。若い男性に多く、アジア、特に日本に多いです。

 Eosinophilic cellulitis(Wells症候群)のcellulitis は蜂巣炎のことです。蜂巣炎とは蜂窩織炎のことです。皮膚の真皮から皮下の脂肪組織にかけて黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などの細菌が感染し、炎症を起こす病気です。細菌に感染すると、その部位が腫れて赤くなり、痛みが生じます。炎症の範囲が広いときは全身が発熱することもあります。治療は細菌を抑える薬(抗菌薬)の内服や点滴によって行われます。Eosinophilic cellulitis(Wells症候群)は顔面、手掌、足底を含む全身に浮腫性紅斑、浸潤を伴う丘疹が出現し、 一部では膿疱や皮膚潰瘍を生じます。病理組織学的所見は急性期には真皮の密な好酸球浸潤を、また軽快期には真皮膠原線維の変性および好酸性顆粒状物質の沈着を認められます。検査所見では末梢血や骨髄液中の好酸球の増加および肝機能障害が見られます。プレドニゾロン40mg/dayの内服に反応せず、メチルプレドニゾロン500mg/dayによるミニパルス療法にて皮疹、肝症状ともに軽快した症例も報告されております。