“生理痛は治る”生理痛や子宮内膜症の理論

女性は10歳ごろに初潮が始まり、50歳ごろの閉経までの約40年間、毎月1回の生理、つまり月経があります。全ての女性は多かれ少なかれ月経時に生理痛を感じます。なぜ生理痛が見られるかというと、受精した後胎児を着床させる準備を毎月1回準備しておくわけですが、妊娠しなければ受精卵の着床のために準備した子宮内膜の増殖が不必要になります。元の子宮内膜の上に増殖した子宮の粘膜を元に戻す必要があります。この時、増殖して肥厚して厚くなった粘膜をはがす必要があるからです。

妊娠しないので不必要になった肥厚した子宮内膜をはがすときに、どうすればはがれるでしょうか?元の子宮内膜とその上に増殖した新たなる子宮粘膜とは明確な境界がありますから、その境界まで粘膜をはぎとらねばなりません。一番上手なやり方は、子宮内膜の真下には筋肉層があります。この筋肉を強くたわませると、自然にはがれるのです。ところがスムーズに全体がたわんではがれてしまうと痛みはほとんどないのですが、たわみにずれが起こったりするとはがれきれなくていつまでも痛みが続くのです。このとき、もちろん血管も増殖した部分に伸びていますから、たわませることによって、血管が伸びて切れてしまったときに出血も見られ、これが月経血となります。月経に増殖した粘膜の断片のみならず、出血も見られるのはこのためです。

このようなたわみを起こさせるのは、プロスタグランジンだといわれていますが、必ずしも正しいとは私は考えていません。それは女性は生理時に必ず便通が良くなるからです。プロスタグランジンが便通を良くするという証拠は全くありません。プロスタグランジンは本来炎症に際して大きな役割を果たしているのですが、体のあちこちで炎症が起こる時に、同時に腸管の蠕動が良くなって便通が快便になるとはいえないからです。従って生理の際に見られる子宮内膜のたわみを説明する一番正しい答えは、腸管の蠕動を高める物質が別に働いていると考えられます。

さらに考えていくと、過敏性腸症候群という病気があります。これは神経過敏な人が便秘になったり下痢になったりする病気であります。この病気は自律神経失調症のひとつと考えられていますが、自律神経を支配するホルモンが大きく関わっていると考えられます。女性も生理困難症を起こすどころか、生理さえ来ない人がしばしばみられます。生理が来ないことと生理痛とは別に考える必要がありますが、生理の量が多いとか少ないとかというのは腸管の便秘と下痢とを引き起こすメカニズムに関わりがあるようです。つまり生殖ホルモン以外に自律神経のホルモンも生理痛に深く関わっていると考えられます。

生理痛を除去する漢方は、同時に生理不順なども治してくれますから、やはり漢方の持つホルモン作用が効果を示しているようです。実際20年以上の漢方を中心とする開業医の仕事の中で、私は不妊症の人を治療し、25人以上の不妊の患者を治療して妊娠出産に至らしめた経験があります。漢方の持つホルモン作用を発揮して不妊症の治療に成功したと考えています。

逆に漢方で腸の蠕動を良くして便秘を治すことなどはお茶の子さいさいです。従って漢方は単にホルモン作用があるのみならず、腸の平滑筋の働きを良くする作用もあり、この漢方の力が子宮の平滑筋の働きを良くし、たわみをスムーズにし、たやすく増殖した子宮内膜をはがしてしまい、痛みが少なくなる作用も持っていると考えられます。

このような作用によって、全ての生理痛を治すことができるのです。私は生理痛で苦しんでいる女性を治したことがないという経験をしたことはないぐらいです。もちろん以上に述べた漢方のホルモン作用以外に、漢方は何よりも血流を改善し、発痛物質をたやすく流し去り、自分では処理できない出血を迅速に除去し、はがれた後の傷をも素早く修復し、痛みがなくなるという作用も大きな力となっているのです。

子宮内膜症と子宮筋腫について述べましょう。子宮内膜症は、子宮内にある子宮腺筋症と子宮外にある子宮内膜症にわかれます。子宮内膜の組織が本来の子宮内膜にあるのではなくて、別のところに子宮内膜が増殖した病気です。生理のたびごとに処理できない肥厚した粘膜や子宮内膜に残った出血が核となって、あちこちに飛び散ってできたものであります。一方、子宮筋腫は子宮内膜症がさらに高度になり、子宮の粘膜の下の平滑筋層にもみられ、処理できなかった不必要な子宮粘膜が子宮の筋層にまで入り込んで、生理のたびごとに大きくなり、いつまでも子宮の平滑筋内に残って異物となった良性の腫瘍であります。子宮内膜症による痛みは漢方煎剤により簡単に除去できますが、子宮筋腫は大きくなりすぎると正常な子宮内膜の筋層にがっちりと固着して自然にはがれにくくなってしまい、生理のたびごとに大きくなっていき、最後は手術によって摘出する以外に方法がなくなることがあります。

子宮内膜症や子宮筋腫はなぜこんなに多くなったのでしょうか?答えは簡単です。女性が子供を産まなくなったからです。子宮は本来、子供を宿すための生物としては必須の器官でありましたが、近頃は結婚もしない女性が増え、結婚しても子供を産めない、産みたくない、という女性も増えてきました。出産しても少子化となってしまいました。子供を産まない限り月1回は必ず子宮内膜の大掃除をしなければならないのですが、どうしても取りこぼしが残り、生理のたびごとにそれが積み重なって、いつの間にか子宮内膜症や子宮筋腫を起こしてしまうのです。皮肉なことに、妊娠出産が子宮の大掃除をしてくれるのですが、子供を産むことが少なくなった現代文明が必然的にもたらした病気といえます。

10歳~50歳まで生理は12×40で約480回あります。昔ならば、子供を10人産むなどというのは何も珍しいことではありませんでした。子供を妊娠している間は、生理は必要ではありませんから、その間、不必要な増殖した子宮内膜を大掃除して排除する必要はありませんでした。ここでちょっとした計算をしてみましょう。例えば子供を10人産めば、何回生理が必要でないかを計算してみましょう。出産した後、授乳も必要ですから、授乳の間は妊娠しにくいといわれていますから、出産授乳を含めて15ヶ月間生理が必要でないとしましょう。そうすると15×10で150ヶ月間、つまり150回生理は必要でないのです。昔は現代の女性の3分の2しか生理は必要でなかったのです。それに加えて出産のたびに子宮内膜は大掃除されますから、ますます子宮内膜症や子宮筋腫の核となる不必要な子宮粘膜や不必要な血塊がそれだけ少なくなるために、昔はこんな病気も見られることはなかったのです。

それでは授乳中になぜ生理が戻りにくいかを説明しましょう。昔から、女性が授乳を続けていると生理がみられないということが知られていました。特に授乳の回数が多いほど、また授乳の期間が長いほど、無月経の期間が長くなることも知られていました。授乳を止めると、1~2ヶ月後に生理が始まることも知られていました。さらに授乳期間中に無月経が持続するとエストロゲンなどの女性ホルモンが低下して、子宮が委縮することも知られていました。このように授乳が生理を起こさせない理由としては、まずひとつは、分娩後には脳の下垂体前葉からプロラクチンという催乳ホルモンが放出され、別名、黄体刺激ホルモンといわれ、これが増え続けると生理が来ないのです。もうひとつの原因は、授乳刺激によって、下垂体前葉から放出されるFSHやLHなどの性腺刺激ホルモンの分泌が低下するために、女性ホルモンが出にくくなり生理が来なくなるのです。

それではこのような病気が増えたのは、何を意味するのでしょうか?人類は子供を産むという最も根源的な生物としての機能を必要としなくなったことです。特に中国などでは、人口が多すぎると食べていけなくなるものですから、一人っ子政策を何十年も前から始めました。他の人口の多いインドやインドネシアやブラジルなどの新興国もいずれこのような政策をとらざるを得なくなるでしょう。地球が支えることができる人口は100億人といわれていますが、世界的に以上述べてきた婦人病はますます増えていくことになるでしょう。このようなことを考えていくと、生物学的な機能を失うほど文明が進んでいると考えられがちですが、果たしてこれが人類にとって幸せであるかは別問題であります。

文明が進めば進むほど、このような新たなる文明病が増えていっても、漢方が最高の治療薬になり続けることは、ちょうどアレルギーや膠原病に対して漢方が有効であるのと同じです。漢方がこのような新たなる女性の病気に対しても、自然の持つ草根木皮の作用によって、このような婦人病も確実に治すことができるのは、人間も植物である漢方薬も自然のものであるからでしょう。病気を治すのは医者でも薬でもなく、病気の原因を突き詰めていけば、結局はこのような婦人病に対しても、人間が本来持っている自浄作用を自然に発揮させれば治すことができるのです。このとき漢方はその自浄作用に大きなヘルプを与えることは、あらゆるアレルギーや膠原病と同じことなのです。生理痛が強いからといって痛み止めを飲むことは、根本的治療にもならない上に、免疫を抑えることによって新たなる病気を作ることになるということを知っておいてください。