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気管支喘息とは?

そもそも気管支喘息とは何なのでしょう?気管支喘息とは、大気に運ばれた天然または人工の大量の化学物質が気管支に侵入した時に、それを咳で排除しようとし、さらに気管支粘膜を収縮させて大気汚染物質を入れまいとして気管支が収縮し、息が苦しくなる症状であると考えられます。この異物を体外へ排除しようとする症状であるという考え方は、アトピーやアレルギー性鼻炎・結膜炎と同じですが、異なる点が2つあります。

 まず第1に、気管支喘息はアトピーや鼻炎・結膜炎に比べて、比較しようがないくらいに重い病気といえます。日本では何年か前までは7000人の喘息患者が亡くなっていました。現在は減少傾向にあり、2000~3000人程度に減っています。

 気管支喘息の原因は、赤ちゃんがどのようにしてアレルギーになるかを見ていけばよく分かります。乳児がアレルギーで最初に出現するのはアトピーであることが多いのです。この乳児のアトピーの原因は、母親の母乳に含まれる化学物質が主だと考えられます。赤ちゃんは否が応でも、毎日数回は生きる為に母乳を飲まざるを得ません。母乳の中のタンパク質と結びついた化学物質を赤ちゃんの免疫システムが認識できるのは、生後2ヶ月~3ヶ月にかけてであります。この時期から赤ちゃんは本格的に自分の骨髄でIgG抗体やIgE抗体を作り始めます。このIgE抗体と結びついた化学物質が血流に乗って皮膚まで運ばれ、皮膚から排除されようとしたときに出現するのがアトピーであると考えられます。さて、摂取された食べ物を面積の広尾威皮膚ではなくて、わざわざ狭い気管支の粘膜から出すことは、通常ありえないことだと思いませんか?

 ではなぜ気管支喘息になってしまうのでしょうか?まず皮膚で一旦炎症が起これば、炎症細胞を皮膚に集めるケモカインという情報が出され、どんどん皮膚に異物を排除するために、免疫の全ての細胞が集まっていきます。ところがこのような皮膚の症状が出現したときに皮膚科に行くと、ステロイドをはじめとする免疫抑制剤を出されます。免疫を抑えて症状を無理やり抑えて一時的に良くなっても、ステロイドの効果がなくなると再び症状が現れます。さらにステロイドを塗ることによって症状を抑えても、いたちごっこを繰り返すことが多く、治ることはないと考えています。たとえ一時的症状が完全になくなったとしても、免疫は記憶のシステムですから、数年後忘れたころに必ずリバウンドが出現します。とにかく免疫の働きを抑えることによって皮膚の炎症を止めてしまうのです。このような時に赤ちゃんが風邪を引いたりすると、気管支の粘膜が傷つき、空気から入ってくる汚染化学物質が気管支の傷口に付着し、ここで新たにアレルギー性の炎症が起こり始めると、気管支に集まった様々な炎症細胞はケモカインを出して、さらに強いアレルギー性の気管支炎(気管支喘息)の症状が出やすくなると考えています。

 もしアトピーの症状の方がひどければ、皮膚に体内のアレルギーの炎症細胞が集まり続けるので、気管支の粘膜に傷があっても、そこにアレルギーの炎症細胞は行きにくいと考えられます。気管支の粘膜の広さは皮膚の広さに比べて数百分の一ですから、異物を出す場所としては遥かに皮膚からのほうが出しやすいからです。従って喘息が出現していたとしても、最後は出しやすい皮膚での炎症、つまりアトピーに変えてしまえば、傷ついた気管支の粘膜も正常に戻り、喘息も消えてしまうと考えています。

 正常な状態では気管支の粘膜が傷ついて大気汚染物質を引っ付け、アレルギーの炎症を起こし続けることは考えにくく、多くの場合は風邪をきっかけにして喘息が起こります。つまり風邪のウイルスが気管支に入り込むことによって初めて喘息が起こり始めます。つまり風邪を引かない限りは喘息は起こりえないと私は考えています。従ってアレルギーの赤ちゃんに喘息を起こさせないためには、風邪を引かせないことなのです。あるいは、風邪のウイルスを出来る限り早く殺し、気管支の粘膜に傷が付かないようにすることです。残念ながら風邪のウイルスを殺す薬はないので、なんとか自分の免疫でやっつける応援をすることです。風邪のときに漢方煎じ薬は非常に効果的であります。

 風邪について述べておきます。風邪が万病の元と言われる根拠はいくつかあります。1つ目は、風邪のウイルスと戦っている間に手薄になった免疫の間隙をぬって新たなるウイルスや細菌が体内に入り込み、複合感染症を起こしやすくなること。2つ目は、今述べたように、風邪のウイルスで傷付いた気管支粘膜に気管支喘息を起こすアレルゲンが引っ付きやすくなり、喘息が起こりやすくなること。3つ目は、発熱や体力の消耗をきたし、食欲もなくなり、免疫を作るタンパク質などの栄養成分が減ることなどです。まとめると、結局は風邪を引いてしまうと、免疫の力が低下するために、さらなる感染症が起こりやすくなるということです。私は怖い病気というのは、結局感染症しかないと考えています。感染症の中でも一番怖いのはウイルスです。ウイルスを殺す抗生物質は皆無ですから。ウイルスは自分の持っている原始的な先天免疫と、後天免疫のリンパ球が作る抗体とキラーT細胞でしかやっつけることが出来ないのです。

 気管支喘息の治療において気をつけるべきことがあります。アトピーの治療においては、いかに激しいステロイド離脱症状があっても適切な治療をすれば、生命にかかわるようなことは起こりえないのですが、喘息の場合は異物を入れまいとする場所が気管支という空気の通り道であり、喘息発作の為に気管支の収縮が生じ、空気を3分以上吸入できなければ死に至ることがあります。従って、気管支の収縮の度合いによってはステロイドを使わざるを得ないこともあります。

 また、気管支喘息が他のアレルギーと異なる点は、副交感神経と交感神経を支配する自律神経が関与している点です。気管支の収縮は90%以上は専らアレルギーが関与しているのでありますが、残りの10%は自律神経が喘息発作のきっかけを作っているようです。しかし基本的には異物を気管支から入れないために気管支が収縮して生じるアレルギーに、自律神経のアンバランスによる副交感神経の興奮によってもたらされる気管支の収縮が副次的に重なることが問題になります。(実際、喘息の発作は交感神経が身体を支配し、必要な酸素を取り入れるために気管支が拡張している活動の時間、つまり、労働したり緊張したり興奮したりしている時間内に起こるのではなくて、副交感神経が支配し、気管支が収縮し始める休息の時間、つまり仕事の後や休息中や睡眠中の酸素が不必要な時間に起こることがほとんどであります。) もちろんアレルギーが一切なく、自律神経のアンバランスだけで重篤な気管支喘息が起こることはないと考えられますし、聞いたこともありません。

 従っていずれにしろアレルギーの中で最初に治すべきものは生死に関わる気管支喘息であります。既に述べたように、気管支喘息が起こる気管支粘膜の広さはせいぜい数十平方センチメートルであり、アトピーが出現する3平方メートルの皮膚の広さに比べて数百分の一でありますから、アレルギーは元来皮膚に起こりやすいものなのです。これらの二つのアレルギーを持っている人の治療は極めて楽であります。というのは、一度IgE抗体を皮膚に使わせてしまうとそこで炎症が起こり、アトピーの症状がひどければひどいほど体内のアレルギーの炎症細胞やIgE抗体が皮膚に集中して使われてしまうので、気管支粘膜で使われる余地がますます少なくなり、それと共に気管支喘息の症状も減っていくからであります。

 なぜ気管支喘息は完治するのでしょうか?アレルギー性気管支喘息の患者は気管支の粘膜に侵入してくる汚染物質をわざわざ咳き込んだり、気管支を狭くして体内に入れまいとして体外へその異物を排除しようとします。異物である敵は無限に空気から入ってくる化学物質であり、それを排除する武器は有限であるIgE抗体であります。排除しても無限に繰り返し入ってくる化学物質を永遠に排除することは不可能であります。人間は生まれたときに、先天的に異物を排除する免疫反応を起こさせるヘルパーT細胞を持っています。ところが同時に人間は戦いをやめさせるサプレッサーT細胞をも持って生まれます。このサプレッサーT細胞はヘルパーT細胞に比べて遥かに少ないので、体内から異物が排除できなくなって、大量に組織に異物が蓄積されたときに、初めてこの異物がサプレッサーT細胞とやっと結びつくのです。異物と結びついたサプレッサーT細胞は、インターロイキン10やTGF-βというサイトカインを放出してヘルパーT細胞の働きを止めてしまうのです。このようにして異物との共存が可能となると私は考えています。ちなみにサプレッサーT細胞は、2007年に京都大学の坂口志文先生によって発見されました。

 有限は無限に絶対に勝つことはできないので、いかなる戦いも永遠に続くわけではなく、決着がつきます。環境を排除する戦いは、初めから人間の負けであることは分かりきったことです。負けて環境にひれ伏して共存させてもらうことしか人間の生きる道はないと考えられます。ただ戦いの際に見られる気管支の症状を免疫を抑制せずに楽にすることが一番重要であります。最後は気管支の粘膜中で起こっている異物を排除する気管支喘息の戦いは人体の敗北に至ります。敗北と言っても良いし、共存と言っても良いのですが、いずれにしろ体の中でIg 抗体がいずれ作られなくなってしまい、空気汚染環境との戦いに負けて環境と共存せざるを得なくなり、最後には症状は自然と消滅してしまうと私は考えています。この原理を「自然後天的免疫寛容」と私は名付けています。実は人間は、免疫の進化の過程で自然の環境の中に見出される天然の異物に対して、このような自然後天的免疫寛容を常に起こしてきたのです。だからこそあらゆる天然の化学物質に対して共存が可能となり、ほとんどの天然の化学物質とは接触したり食べたりしてもアレルギーを起こさなくなったと考えられます。これを私は「進化論的自然後天的免疫寛容」と名づけています。

 私はアレルギーの根本治療は「自然後天的免疫寛容」を起こすことだと考えています。従って、私が考える気管支喘息とアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎・結膜炎の治療方針というのは、用いる漢方薬は違っても根本的には全く同じなのであります。つまり、排除する場所が違えば症状が異なるだけだと考えていますから、それぞれの症状を楽にする漢方煎剤の処方を選んで出しているのです。これに対して、現代の免疫を抑制する対症療法は、毎回毎回リバウンドを繰り返しながらIgE抗体がいつまでも作り続けられ、アレルギーそのものは深刻になり、いつまでも薬を止めることができなってしまうのではないかと私は考えているのです。

 さて、アトピーを合併している喘息患者は、免疫抑制療法を止めると、アレルギーが一番出やすい広い皮膚に炎症が起こり、アトピーがひどくなり、そこへ全てのアレルギーの免疫細胞やIgE抗体が集まり、皮膚で使われやすくなる印象があります。そして気管支にあった炎症細胞までもが皮膚へ皮膚へと移動して行き、ますます気管支で使われる免疫細胞やIgE抗体が少なくなって喘息の症状が出なくなってしまうことがよくあります。

 一方、喘息だけがあり、長期に渡って免疫を抑制してきた人は、気管支に集合した免疫細胞の働きを抑制し続けていますが、他の場所のアレルギーの炎症の抑制は起こらなかったので、他の場所でリバウンドが起こりにくく、炎症がいつまでも気管支の粘膜に限局されるので、IgE抗体は気管支でのみ使われる傾向があります。(このような喘息だけの患者も、遅かれ早かれアトピーも出現してしまうと喘息の症状が一挙に良くなることがあります。) とりわけステロイドの内服剤であるプレドニンやリンデロン (セレスタミン)を一度用いますと、なかなかこれらのステロイド薬を中止することが難しいのであります。一時的にアレルギーの炎症を抑える薬の中でステロイドであるプレドニンやリンデロンほど良く効く薬はありません。しかしプレドニンやリンデロンを止めると必ずリバウンド現象が出現し、喘息の症状が悪くなり、息が出来なくなったりして再びステロイドを用いざるを得なくなることはしばしばあります。

 なぜステロイドが免疫を如何なる薬よりも最高度に抑制できるかというと、たちどころに免疫の細胞の遺伝子を変えてしまい、一挙に免疫の働きを止めてしまうからだと考えています。人間の体はいわば遺伝子の命令によって活動しているものですから、正しい遺伝子の働きによって異物を排除しようとする症状が出現しています。このような症状を抑えるためにステロイドによって遺伝子を変えてしまうと、その働きが一瞬にして全てなくなってしまうのです。ところが人工的に無理やり遺伝子が変えられても、遺伝子は必ず元の正しい遺伝子に修復されるのです。この遺伝子が修復されるときに激しいリバウンド症状が出るのであります。これを止めるためにまたステロイドを使わざるを得なくなり、永遠にステロイドをやめられなくなってしまうこともあるのです。

 私の経験では、漢方煎剤はプレドニンやリンデロンに負けないほど気管支を拡張することができるものがあります。漢方煎じ薬は免疫を抑制する作用は全く無いと言ってもよいものですから、最後は「自然後天的免疫寛容」をもたらすことができると考えています。当院では、漢方煎剤を飲み続けながら、徐々に気管支喘息治療剤を減らしていき、少しずつ症状を楽にしていき、最後に喘息を完治させることを目指しています。

 最後に一言。気管支喘息の患者さんは、常に風邪を引かないように気をつけるべきです。私の経験上、風邪を引けば気管支喘息が誘発されてしまうことが多いのです。その結果、風邪が治った後も、気管支にアレルギーの細胞が集まってきたことにより、大気汚染物質を排除する為にすぐに戦いを始められる準備状態が作り上げられてしまうからです。つまり気管支喘息がその後慢性的に起こる環境が整ってしまうからです。従って全てのアレルギーの患者さんは、普段から生活習慣を整え、栄養バランスに気を配り、常に風邪を予防する工夫をしておくべきだと考えています。

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