花粉症について その1:花粉症とはどのような病気なのか?
当院ではアトピー性皮膚炎や気管支喘息、花粉症を含めたアレルギー性鼻炎・結膜炎などのアレルギー疾患に対する漢方治療も精力的に行っています。
今回からはそんな全国におられる花粉症患者さんたちのためにも、花粉症の発症メカニズムやその対策・治療法などを当院での臨床経験や最新の知見を交えながら、その詳細についてこれからシリーズ化してまとめていきたいと考えています。
第一弾となる今回は、「花粉症とはどんな病気か?」ということについて書いていきたいと思います。
●花粉症=アレルギー疾患の一つ
一般的に「アレルギー(allergy)」とは、食物・薬物・金属・その他化学物質やその他抗原性タンパクなど、様々な物質によって引き起こされるもので、それらによって引き起こされた病気のことを「アレルギー疾患」と総称しています。
ちなみに花粉症は「季節性」アレルギー疾患とされており、スギなどの花粉が抗原(アレルゲン)となって起こるアレルギー疾患(Ⅰ型)の一つだと考えられています。 実は日本では、最も罹患人口の多い疾患の一つとされています[1-3]。
欧米では昔から一般的に広く知られていた花粉症は、「日本には存在しない」と長年言われてきた(実際患者報告がなかった)ため、日本における花粉症の研究は欧米からはかなり遅れることになりました。そして、やっと1960年代になって初めてブタクサ花粉症が存在することが国内で確認され[4]、その後スギ花粉症の報告[5]がされて以降、やっと現在の花粉症診療に繋がる基礎が形成されるに至りました。
その後、日本では代表的な花粉症の原因とされてきたスギ・ヒノキ・イネ科植物の花粉のタンパク質構造の解析が進み、それに対する免疫応答なども盛んに研究されるようになりました。そのような研究が進むに従って、花粉タンパクの中に花粉(例えばスギやヒノキ)に対して特異的Ig E抗体が結合するペプチド部分(=エピトープ:epitope)が存在することが明らかになってきました。
しかし、「花粉症」は実際には花粉だけが原因となって引き起こされる疾患ではなく、環境要因が複雑に絡まり合って起こってくるものであることがわかってきました(詳細は後日)。
● 花粉症の症状
花粉症の症状として代表的なのは、アレルギー性鼻炎と共通した「発作性反復性のくしゃみ」・「水様性鼻漏(鼻汁)」・「鼻閉」が花粉症の三主徴です。これに加えて、目のかゆみを伴うアレルギー性結膜炎が併発しやすいとされています[6]。
当院でも上記症状で来院される方が大半を占めています。 他にも、以前から当院で治療している喘息やアトピー性皮膚炎を基礎疾患として持っている患者の多くは、花粉症患者が多くなる季節(2月末〜9月末頃まで)にその基礎疾患の症状(喘鳴・咳、発疹・痒み)が悪化することが非常に多いです。稀に同時に頭痛や倦怠感、あるいは軽い消化器症状(吐き気や腹痛)を訴えて来院される方も少なからずいらっしゃいます。
また、当院での患者への問診を通して明らかになっていることとして、活動している日中よりも夜間〜明け方にかけて症状が悪化する方が多くいらっしゃいます。これは、自宅でゆったりしている時や就寝時には副交感神経が優位になり、免疫系細胞の働きが活性化してくるからと言う人もいます。 つまり、リラックスしている時や風呂上がりに血流が良くなり免疫の働きが高まった時にこそアレルギー症状は出やすくなると考えられます。
しかし、これはあくまでも仮説に過ぎず、その症状の日内変動のメカニズムに関しての詳細はまだ完全には解明されていないため、確実なことは言えません。 本日はここまで。
次回は「花粉症の疫学とメカニズム」について書きたいと思います。
参考文献
[1] E.A. Taketomi, M.C. Sopelete, P.F. de Sousa Moreira, F. de Assis Machado Vieira, Pollen allergic disease: pollens and its major allergens, Brazilian Journal of Otorhinolaryngology 72 (2006) 562-567. doi.org/10.1016/S1808-. [2] M. Okuda, T. Shida, Clinical aspects of Japanese cedar pollinosis, Allergology International 47 (1998) 1-8. doi.org/10.2332/allerg. [3] T. Yamada, H. Saito, S. Fujieda, Present state of Japanese cedar pollinosis: the national affliction, J Allergy Clin Immunol 133 (2014) 632-639.e635. 10.1016/j.jaci.2013.11.002. [4] 英. 荒木, 花粉症の研究 : I. 空中花粉の季節的変動, アレルギー 9 (1960) 648-655. 10.15036/arerugi.9.648. [5] 申. 堀口, 洋. 斎藤, 栃木県日光地方におけるスギ花粉症Japanese Cedar Pollinosisの発見, アレルギー 13 (1964) 16-18,74-75. 10.15036/arerugi.13.16. [6] 秀. 横井, なぜ花粉症は増加しているのか? -疫学・発症のメカニズムと診断法, 順天堂医学 55 (2009) 2-7. 10.14789/pjmj.55.2.