現在内服中の薬の減薬・断薬について(2020年9月30日のtwitterより転載)
当院でも初診で65歳以上の高齢者を診察する割合が非常に高い(医療機関の宿命)ですが、中にはインターネットなどできず、どのような病院かを確認しないまま、看板だけを見て診察に入ってこられる高齢患者さんがおられます。もちろんそのような一見さんでも、当院では歓迎してきっちり診察させていさせていただいております。
ただ、そのような一見の高齢患者は大抵の場合、他院で複数の薬剤が処方されていうる場合が多く、しかもそのほとんどが飲む必要のない、あるいは有害な薬剤である場合が多いのが実状です。そのような場合、当院ではなぜその薬が必要ないのかという根拠を軽くご説明させていただいた上で、減薬・断薬を考えていただくよう促しています。ただし、どれだけきちんと説明しても、納得していただけない場合が多く、「担当医と相談します」と言ったきり、その後は来院されない患者が多いのも事実です。
このような、複数種類飲んでいる薬を減薬・断薬すべきという話をしても納得していただけない患者の多くは(高齢者が多いのですが)、「医者が言うことが絶対」と信じ込んでいるようで、「自分の担当医が間違った処方をするはずがない」、「必要のない薬を出すはずがない」と考えている人が多いと感じています。あるいは、十数種類も薬を出されていて、毎回薬を水と一緒に飲むだけでお腹がいっぱいになる、薬を飲んでいるのにどんどん体調が悪くなるという高齢患者さんも過去におられましたが、そのような方にそこまでして薬を飲む理由を聞くと、「薬を飲んでいると安心するから」という患者がいました。10種類以上もの薬を多剤投与されていたため、当院受診時に減薬を勧めたのですが、「薬をやめることが不安でやめられない」と言うのです。
つまり、このような患者にとっては薬(を飲むこと自体)が精神安定剤のようになっているのですね。そのような患者は極端な症例なのかもしれませんが、少なくとも4剤以上の多剤投与されている場合、薬剤の相互作用・相加作用・相乗作用によって、副作用のリスクが高まることが考えられます。実際に厚生労働省も多剤投与(ポリファーマシー)に関してはかなり問題視しており、それによる副作用出現率の上昇・服用過誤・服薬アドヒアランス低下などが生じる可能性が高まるため、不必要な薬は減薬か断薬させる方向で考えていくのが良いと指摘しています。
当院でも、日常診療の中で(特に基礎疾患があって投薬されている初診患者には)極力不必要な薬を減らすことを指導しています。そして、できればどんな場合でも(漢方薬も含めて)薬による負担を減らすために、3剤以内に抑える方が良いということを指導し、実際に減薬・断薬指導を行なっています。もし今現在多剤投与されている方で、減薬・断薬を少しでも考えている方がいれば、ぜひ当院にご相談いただければと思います。