オミクロン株や今後の変異株の危険性について(2022年1月8日のtwitterより転載)

今回は新たな変異株を含めた新型コロナウイルスに関する新たな情報をまとめてお伝えしたいと思います。長くなりますが、何かの参考にしていただければ幸いです。

感染力が強いとされた「デルタ株」の後に、さらに感染力が強い(とされる)変異株として「オミクロン株」が、そしてまたさらにたくさんの変異(46箇所!!)をもつ新たな変異株(B.1.640.2系統)がフランスで出現したということが報告されたようです。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.24.21268174v1

しかし、これらの変異株は本当にそれほど危険なものなのでしょうか??また、そもそもそのような変異株はどのように調査され、どのようにして評価されているのでしょうか??

ここでは、そのようなことについてオミクロン株を例に、少し詳細に述べていきたいと思います。まず基礎知識として、「オミクロン変異株」は昨年11月9日に南アフリカで採取された検体から初めて検出されたとされており、WHOには昨年11月24日に変異株B.1.1.529系統として分類され、監視すべき変異株(Variant Under Monitoring: VUM)に位置付けられました。

https://www.who.int/news/item/26-11-2021-classification-of-omicron-(b.1.1.529)-sars-cov-2-variant-of-concern

その後昨年11月26日に変異株B.1.1.529系統は、「オミクロン株」と命名され、懸念すべき変異株(Variant of Concern: VOC)に変更されました(欧州CDCでも同様に11月26日にVOC認定)。

https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/threat-assessment-brief-emergence-sars-cov-2-variant-b.1.1.529

 

日本国内でもこのオミクロン株は、感染研によって昨年11月26日に注目すべき変異株(Variant of Interest: VOI)として位置付けられ、11月28日にVOCにその位置付けが変更されました。

https://niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10876-sars-cov-2-b-1-1-529.html

 

ちなみに注目すべき変異株(VOI: Variant of Interest)は、主に「感染性・重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性がある株」のことで、懸念すべき変異株(VOC: Variant of Concern)は主に「感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱め、ウイルスの性質が変化した可能性のある株」のことです。このVOIやVOCといった分類は、あくまでもその微生物の感染性・重篤度やワクチン効果に関するリスク分析を行った上での評価であり、これをもって各国の保健行政機関がどう行動・政策決定するかはまた別の問題です(とはいえ恐怖を煽り、ワクチン接種を推奨・強制する政策は今後も続いていくでしょう)。

これまで知られている変異株の中では、イプシロン株(B.1.427/429系統)・シータ株(P.3系統)・カッパ株(B.1.617.1系統)などはVOIに分類されており、アルファ株(B.1.1.7系統)・ベータ株(B.1.351系統)・ガンマ株(P.1系統)・デルタ株(B.1.617.2系統)などがVOCに分類されています。これまで知られている変異株の中では、イプシロン株(B.1.427/429系統)・シータ株(P.3系統)・カッパ株(B.1.617.1系統)などはVOIに分類されており、アルファ株(B.1.1.7系統)・ベータ株(B.1.351系統)・ガンマ株(P.1系統)・デルタ株(B.1.617.2系統)などがVOCに分類されています。ところで、これらVOIやVOCといった変異株の出現を把握するためには、各国で広く使用されてきたリアルタイムRT-PCR法だけでは当然不可能であり、PCRで比較的ウイルス量が多いと予想される患者検体(Ct値低値)から精製されたRNA(あるいは患者検体)を用いて、次世代シーケンサー(NGS)によるRNAシーケンスを行ってSARS-CoV-2の全遺伝子配列やターゲット領域(SタンパクやNタンパク)の遺伝子配列を調べる必要があります(=変異株確定検査)。日本国内では、疫学調査目的に行政からの依頼で感染研やその支部である地方衛生研で行われています(数日の検査)。

各国のこれらの調査結果(遺伝子配列)は全てGISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)に集約されており、そのデータによればオミクロン株は中国で発生した基準株と比較して、スパイクタンパク質に30ヶ所程度のアミノ酸置換(=変異)が認められるとされています。そして、そのうちの大半の変異は受容体結合部位(Receptor Binding Protein: RBD)に存在するとされています。

https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/threat-assessment-brief-emergence-sars-cov-2-variant-b.1.1.529

その変異のいくつかは、SARS-CoV-2が感染する際の受容体であるACE2への親和性が高まっている可能性があります。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867420310035

他の変異では抗体医薬として承認されているものを含めたモノクローナル抗体からの逃避・回避能力があることが示唆されています。

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/vaccine-induced-immunity.html

また、細胞への侵入しやすさに関連する可能性が示唆されている変異や、アルファ・ベータ・ガンマ・ラムダ株にも存在する変異で、ウイルス増殖を抑制するために重要な自然免疫系サイトカインであるとされているインターフェロンに拮抗する変異などもオミクロン株では存在することが報告されています。ただこのような情報だけでは、オミクロン株が重症化をもたらす危険なものだとは言えません。我々の免疫系は「体内のゴミ処理システム」として働いており、身体全体のバランスでその働き方が全く異なり(コンテクスト依存)、抗体やサイトカインの働きだけで免疫力が規定されるわけではないからです。海外での発生状況に関しては、南アフリカでは、ゲノム解析(RNAシーケンス)された検体のうち、10月はデルタ株85%(646/764)でオミクロン株0.2%(2/764)であったのに、11月にオミクロン株82%(987/1,210)、12月にはオミクロン株98%(629/639)だったそうです。これはいかに急速にオミクロン株が広がったかがうかがい知れるデータではあると思います。しかし一方で、EU各国では12月19日時点で28カ国から計4,691例のオミクロン感染例が報告されているそうですが、死亡例はまだ報告されていないそうです。

また、ECDCの報告では、オミクロン株感染例とS遺伝子が検出されない症例(S gene target failure: SGTF)の計4,786例の解析において、情報を取得できた2,550症例のうち、94%が何らかの症状を有していたものの、入院は1%で、ICU管理や人工呼吸器管理を要したものはゼロ、死亡症例もゼロでした。英国では12月23日時点でオミクロン株とSGTF症例合わせて約30,000症例が報告されており、そのうち29例の死亡し、366例が入院したと報告されているそうです(死亡に関しては本当に変異型新型コロナ感染が直接の原因かは不明)。米国では昨年12月8日時点で、22州でオミクロン感染あり、情報を取得できた43例では入院例は1例、死亡例はゼロ。CDC報告では、オミクロン株検出割合が12月2週目から3週目で12.6%から73.2%に増加、感染力は強いことは考えられますが、重症化したり死亡したりする症例は稀です。

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/covid-data/covidview/index.html

少し長くなるので、一旦ここで切らせていただきます。次回は私の私見を交えながら、今後のコロナ禍の展望について述べていきたいと思います。

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