【「“生命の本質”から根本治療を考える」シリーズ第一弾:生命とは何か?Part1 ~天才物理学者がたどり着いた“生命の本質”~】

 
こんにちは、院長の松本です。
 
本日から出版を目的として、できるだけ毎日長文投稿をしていきます。
 
名付けて「“生命の本質”から根本治療を考える」シリーズです。
 
第一弾は、「生命とは何か?」ということで、タイトル通り生命についてその本質的なことについて見ていきたいと思います。
 
当院では、アトピーを含めた慢性疾患は全て身体全体の問題と考えており、そもそも各疾患について理解する前に、「生命とは何か?」という根源的な疑問に対して、当院なりの答えを用意したいと思います。
 
「生命とは何か?」という問いに、真正面から挑んだ一人が、ノーベル物理学賞受賞者であり、量子力学の創始者とされているエルヴィン・シュレーディンガーでした。彼は、1944年に出版された著書『生命とは何か(What Is Life?)』の中で、この問題に対して非常に重要な視点を提示しました[1-3]。
 
物理学には「熱力学第二法則」と呼ばれる基本法則があります。これは「自然界では時間の経過とともに秩序は失われ、物事は次第に無秩序へ向かう」という法則です。例えば建物は放置すればやがて崩れ、物質は分解され、秩序は失われていきます。
 
このような変化は「エントロピー(=無秩序さ)増大の法則」としても知られています[4,5]。
 
しかし、私たちの身体を構成している細胞や組織は、この法則に反しているように見えます。
 
生命は、常に一定の秩序を保ちながら働き、傷ついた部分を修復し、同じ構造を維持し続けています。本来であれば無秩序へと向かうはずの自然界の中で、なぜ生命だけが秩序を保ち続けることができるのでしょうか。
 
シュレーディンガーはこの問いに対して、「生命とは、外界からエネルギーや物質を取り込み、それを利用しながら秩序を維持している存在である」と答えました。彼はこれを「負のエントロピー(ネゲントロピー)」という概念で表現しました[2,6]。
 
ここで重要なのは、生命は外界と絶えずエネルギーと物質を交換する「開いた系(オープンシステム)」であるという点です。
 
もし生命が完全に閉じた系であれば、熱力学第二法則に従ってやがて秩序は崩れ、生命活動を維持することはできないでしょう。私たちは食事などによって外界からエネルギーと物質を取り込み、それを代謝によって利用しながら、不要なものを排出しています。この絶え間ないやり取りによって、身体の内部の秩序は維持されているのです。
 
つまり生命とは、単なる物質の集合ではなく、エネルギーの流れを利用して秩序を維持し続ける動的なシステムであると言えます[7]。
 
しかしここで、さらに重要な問いが残ります。もし生命がエネルギーの流れによって秩序を保っているのだとすれば、その“秩序”はどのようにして生まれるのでしょうか。次回は、この問いに対して、非平衡熱力学の立場から新たな答えを提示したイリヤ・プリゴジンの理論をもとに、「生命=散逸構造」という視点からさらに理解を深めていきます。
 
参考文献▽

[1] R. Phillips, Schrödinger’s What Is Life? at 75, Cell Syst 12 (2021) 465–476. 10.1016/j.cels.2021.05.013.

[2] S. Kauffman, Answering Schrödinger’s “What Is Life?”, Entropy (Basel) 22 (2020). 10.3390/e22080815.

[3] J. Portugali, Schrödinger’s What is Life?-Complexity, Cognition and the City, Entropy (Basel) 25 (2023). 10.3390/e25060872.

[4] L. Boltzmann, Weitere Studien über das Wärmegleichgewicht unter Gasmolekülen, in: S.G. Brush (Ed.) Kinetische Theorie II: Irreversible Prozesse Einführung und Originaltexte, Vieweg+Teubner Verlag, Wiesbaden, 1970, pp. 115–225.

[5] E.H. Lieb, J. Yngvason, A Fresh Look at Entropy and the Second Law of Thermodynamics, in: B. Nachtergaele, J.P. Solovej, J. Yngvason (Eds.) Statistical Mechanics: Selecta of Elliott H. Lieb, Springer Berlin Heidelberg, Berlin, Heidelberg, 2004, pp. 365–370.

[6] M.-W. Ho, What is (Schrödinger’s) Negentropy?, Mod. Trends BiothermoKinetics 3 (2010).

[7] H. Lin, Thermodynamic entropy fluxes reflect ecosystem characteristics and succession, Ecological Modelling 298 (2015) 75–86. https://doi.org/10.1016/j.ecolmodel.2014.10.024.

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