動脈硬化の予防と「コレステロール仮説」について6(facebookより転載 2019-11-21)
さて、先日から連日投稿している「コレステロール仮説を切る」シリーズも、いよいよ佳境に入ってました。皆様、ここまで読まれていかがでしょうか?いかに医療現場で間違った指導・治療が行われているか、ということが少しはご理解いただけてきたのではないかと愚考しております。
ちなみに、ここで改めて述べておきたいのですが、ここで書いてきたこと、そしてこれから書いていこうとする内容は、当然のことながら事実に基づいた話であり、現代医療を否定するために私が勝手に述べたてていることなどではありません。
きっちり(独立した)専門家や識者の間でも検証されてきたことです。
しかもその情報のほとんどは、私が医師であるから知りうる限定された情報などではなく、少し調べれば誰でも手に入れることのできる情報として、ネット上や書籍などで公開されていることです(学術論文はハードルが高いと思いますが)。
それでは、なぜそのようなことが一般的に理解されていないのか?
実際の医療現場では、なぜ今でも科学的には完全に否定されているような食事栄養指導・薬剤治療が行われているのでしょうか??
それは、このページを訪れていただいたみなさん自身にもよくよく考えていただきたいと思っております。
今回からは、「コレステロール仮説」から生まれた、これまた科学的にはすでに完全に否定されている(つまり神話である)「飽和脂肪酸悪玉説」について書いていきたいと思います。
「飽和脂肪酸悪玉説」とは、「動物性脂肪に多く含まれている飽和脂肪酸を食べると、体内のコレステロール(特にLDLコレステロール)を増加させ、心血管疾患を引き起こす」という仮説です。本日はこの仮説によってもたらされた影響について述べていきます。
「飽和脂肪酸悪玉説」がもたらした(悪)影響
● ”神話“による国家規模での洗脳
先述したアンセル・キーズの「7カ国スタディ」で創作された「コレステロール仮説」、そして「フラミンガム・スタディ」が生み出した「LDLコレステロール=悪玉、HDLコレステロール=善玉」という二元論に基づく学説。この二つの仮説・学説(”神話“と言うべきです)が基盤となり、最終的には、医薬業界や食品業界に都合の良いデータが追加され、「動物性脂肪悪玉説=飽和脂肪酸悪玉説」が誕生することとなりました。そして、これが自国民に対して国家が掲げる食事指針にまで影響を及ぼすこととなります。
例えば米国では、1977年に「マクガバン・レポート(McGovern Report)」という報告書が米国議会に提出されました。これは、1960年代後半から社会問題になっていた低所得者層の低栄養を是正するために、栄養とその所要量についての調査として開始されたものです。最終的には「米国の食事目標」として報告されました。これは5000ページにも及ぶ超膨大な内容のレポートであり、脂肪に関して言えば、「飽和脂肪酸摂取量を減らし、不飽和脂肪酸を増やすべき」という完全に「コレステロール仮説」に従った内容のレポートでした。さらに、この「マクガバン・レポート」を受けて、1980年にはじめて米国保健福祉省(HHS)・米国農務省(USDA)による「アメリカ人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)」が打ち出されました。このガイドラインは、その後5年ごとに見直されることになりましたが、後述するように、今でも飽和脂肪酸の摂取量は厳密に制限すべきとされています。
最初の米国食生活指針ガイドラインでは、マクガバンレポートにちなんで、「穀物(複合炭水化物)摂取量を増やすこと」や、「総脂肪摂取量とコレステロール摂取量を控えるべきこと」などが明記されていました。1992年には農務省により、いわゆる「フードガイドピラミッド」が発表され、これは2006年に「マイピラミッド」、2010年以降は「マイプレート」に名称変更されました。これらの新しい食事指針も全て「穀物摂取量を増やして飽和脂肪酸摂取量を減らす」というおきまりの内容になっています。しかし、コレステロール仮説の非科学性が流石にバレてきたため、2015年の改定時にはコレステロール摂取制限は撤廃されたものの、飽和脂肪酸はむしろ今までより厳格な摂取制限が勧告されることとなりました。
● 米国の属国日本でも・・・
戦後、軍事的にも政治的にも米国の傀儡国家・属国となった日本でも、当然のごとく米国が勧める食事指針が、厚生省(当時)を中心に叫ばれるようになりました。まずは戦後、国内でパン食や脱脂粉乳を使った乳製品(脂肪分が除去されている)や、植物油脂を調理油に使用した食事内容が学校給食をはじめ、一般家庭にも普及し始めました。その結果として、生活習慣病の増加が認められるようになったため、1983年に農水省が中心となって「日本型食生活」を提唱、1985年には厚生省が「健康づくりのための食生活指針」を策定しました。しかしながら、この食事指針においても「動物性脂肪(飽和脂肪酸)ではなく、植物性脂肪(不飽和脂肪酸)を増やす」ことが、これまでの食事指針と同様に掲げられていました。このことからも、当時からいかに「コレステロール仮説」、あるいは「飽和脂肪酸悪玉説」が、医学・栄養学の世界を席巻していたかが窺い知れます。
このように、約半世紀もの長きにわたって、業界(油脂産業・食品業界)からの圧力もあったのでしょう。我々国民が「動物性脂肪(飽和脂肪酸)=悪玉」という先入観を植え付けられてしまったがために、今だに動物性脂肪を含めた飽和脂肪酸は(本当は必要で良いものなのに、)悪いものなのだ、という認識がこびりついて、頭からなかなか離れないようになってしまっているように思います。これは、国家規模での洗脳が行き届いた結果であると考えられます。
以上、神話である「飽和脂肪酸悪玉説」が流布された結果、我々に与えた(悪)影響について当院の考えを述べておきました。
それでは次回からは、この「飽和脂肪酸悪玉説」がいかに事実とかけ離れた”神話“であったか、そしてその”神話“がいかにして崩壊していったかをみていくましょう。
乞うご期待!!