「必須脂肪酸を切る」シリーズ パート4(facebookより転載 2019-12-21)

さて、前回は必須脂肪酸誕生秘話について解説いたしましたが、今回からはオメガ3やオメガ6といった「必須脂肪酸」と名付けられている物質が本当は危険極まりない物質であるということを理解していただくために、基礎的な話からしていきたいと考えています。基礎的な話といっても、かなり専門的な話になりますので、医学用語や生化学用語を聞きなれない人にとっては、多少難解に感じられるかもしれません。しかし、大変重要なことばかりですので、しっかり理解していただきたいと思いますので、理解できるまで何度も読んでいただければ、と思います。

「酸化ストレス」について 〜活性酸素の生化学〜

● フリーラジカルとは?

 今回は後の理解を深めるために、「フリーラジカル」・「活性酸素」・「酸化ストレス」という言葉について説明していきます。これらの言葉を一度でも聞いたことのある方はおそらく「健康を害するもの」、という認識がおありかと思います。もちろんその認識が間違っているわけではありませんが、ここではこの3種類の言葉の意味を、まずはきっちり理解していただきたいので、以下で少し詳しく解説します。また化学の専門的な話になりますが、理解を深めたい方はしっかり読んでください。

 通常、原子は原子核を中心に、各電子軌道に2個の電子が対になって存在しており、安定な分子やイオンを形成しています。しかし、熱や光などエネルギーが加えられると、電子が対にならず1つだけになってしまうことがあり、これを“不対電子”と言います。この不対電子を持つ分子や原子を「フリーラジカル(free radical)」と言います。不対電子は不安定で、対になってくれる電子を得て安定になろうとする性質が非常に強いため、不対電子を持つフリーラジカルは、一般的に極めて反応性が高く不安定です。ですから、フリーラジカルは、すぐに近隣の分子と酸化還元反応を起こし、自身は安定な分子やイオンになります。すると、隣の分子の構造中に不対電子ができて、その分子はフリーラジカル化してしまいます。今度は、そのフリーラジカル化した分子が、さらに近隣の分子と酸化還元反応を引き起こします。また、フリーラジカル化してしまった分子は、物理的・化学的特性が恒久的・不可逆的に変化してしまいます。この反応が連鎖的に繰り返され、膨大な数の分子に作用してしまう可能性があるために、フリーラジカルは極めて危険だとされているのです。例えば、我々の細胞の一部の分子(細胞膜の脂質など)がフリーラジカル化してしまい、上記反応が連鎖的に起こってしまうと、細胞全体の機能や構造が障害されかねません。当然フリーラジカル化する分子数が多いほど、細胞障害性は高まります。それが重要な臓器や組織である場合や、障害の度合いが我々の回復力を上回ってしまうと、臓器や組織の機能まで障害を受けてしまい、様々な病気になる可能性がある、というわけです。
 Harman博士によって、生体内に生じるフリーラジカルが多くの慢性疾患に関与しているという「フリーラジカル仮説」(J Gerontlo.1956;11:298)が提唱されて以来、半世紀以上にわたる膨大な基礎研究や疫学研究などから、多くの慢性疾患・変性疾患・炎症性疾患とフリーラジカルとの間には密接な関係があることが徐々にわかってきました(Int.J.Biomed.Sci.2008;4:89-96, Int. J.Med.Update.2006;1:24-40, Int.J.Biochem.Cell.Biol.2007;39:44-84)。現在、疾患発症の原因や危険因子として、フリーラジカルが密接に関係していることが明らかにされている変性疾患は約60種類ありますが、その数はフリーラジカルに関する研究の蓄積とともに増え続けています。アンチエイジング(anti-ageing)の専門家や研究者の中には、フリーラジカルによる細胞障害や組織障害、あるいはそれらによる臓器障害こそが、老化の真の原因だと主張している人もいるくらいです(Respir Physiol.2001;128:379-91, Cell.2004;27:595-600)。

● 活性酸素とフリーラジカル

 次に、「活性酸素(reactive oxygen species:ROS)」について説明します。ご存知の通り、大気中には約20%の酸素(O2)が存在しており、酸素は元素周期表では第Ⅵ族に属し(原子番号8)、8個の電子を持っています。酸素分子は不対電子が2個存在するのでバイラジカル(biradical)と言えます。すなわち、酸素はラジカルを2つ持っていて、そこに電子が1つ入ってくる(1電子還元される)と、ラジカルの性質が片方だけ消され、その代わりもう一方のラジカルの性質が強くなり、弱酸性で解離してアニオンになります。これがスーパーオキシド(アニオン)ラジカル(O2―・)であり、単に「スーパーオキシド」と称される最も一般的な活性酸素です。ですから、酸素はそもそも不対電子を持った反応性の高い分子であり、体内に入ってくると、次々に他の物質から電子を奪い、より反応性に富む不安定な化学種に変化するという性質を持っています。このようにして生じた酸素分子より活性(反応性)が高い酸素種のことを総称して、「活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)」と呼んでいます。
 ちなみに、我々は「活性酸素」と「フリーラジカル」を同一のものとみなしてしまいがちですが、全ての活性酸素が不対電子(=余った電子)を持っているわけではありません。すなわち、活性酸素にはフリーラジカルのものと、フリーラジカルではないものがあるのです。例えば、脂質関連物質を含む広義の意味での活性酸素のうち、フリーラジカルである活性酸素は、反応性の高いものから、ヒドロキシラジカル(・OH)、アルコキシラジカル(LO・)、ペルオキシラジカル(LOO・)、ヒドロペルオキシラジカル(HOO・)、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO2・)、O2–・ などがあります。フリーラジカルではない活性酸素には、一重項酸素(1O2)、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)などがあります。このうち脂質ヒドロペルオキシドは、脂質過酸化反応によって生成される過酸化脂質です(詳細は後述)。実際の生体系では、活性酸素の生成は、キサンチン酸化酵素・アルデヒド酸化酵素・NAD(P)H酸化酵素などによる酵素反応による場合と、パラコートをはじめとする薬物の酸化により生成されるフリーラジカルによって、酸素分子が1電子還元を受け、スーパーオキシドラジカル(O2―・)が生成される非酵素的反応によって誘導されることが定説となっています(Biochem J.1982;205:593-601, J Biol Chem.1984;259:6447-6458, Biochem Biophys Res Commun.1988;153:973-978)。
 以上のように、酸素はフリーラジカル化しやすい物質であり、我々が酸素を利用してエネルギー代謝(ミトコンドリアでの酸化的リン酸化)などを生命活動として行なっている以上、どうしても体内で活性酸素が発生してしまうことは避けられません。これらが速やかに消去されずに残ってしまった場合に、後述する「酸化ストレス」が生み出され、生体にとって有害な作用を及ぼすこともあります。また、先述したように、活性酸素=フリーラジカルというわけではありません。活性酸素やフリーラジカルを論じる場合、両者をごっちゃにして考えないようにしたいものです。そのためには、言葉の正確な意味を理解しておかなければなりません。

● 生体内での酸化ストレス 〜フリーラジカルや活性酸素の過剰産生〜

 次に、「酸化ストレス(oxidative stress)」について説明していきます。先述したように、我々が生命活動を営む上で酸素の利用は必須となりますが、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は活性酸素に変化します。我々人類を含めた生物の多くは、酸素を利用してミトコンドリアでエネルギーを作り出しています。ミトコンドリアで糖(グルコース=ブドウ糖)を燃焼する過程で得られた電子は、最終的に酸素に受け渡されます(電子伝達系)。この電子が酸素に渡される(還元される)プロセスの中で、ATPというエネルギーが作り出されます。この時に、酸素が電子によって還元される過程や、エネルギー付与による電子の励起によって、酸素の分子構造が変化し、反応性が高い活性酸素が生成されます(Arch Biochem Biophys.1985.237:408-414)。すなわち、生命活動において必須であるミトコンドリアでの糖のエネルギー代謝のプロセスにおいても、ある程度の活性酸素が産生されている、ということです。他にも活性酸素(ROS)は、例えば白血球から産生される活性酸素(スーパーオキシド・過酸化水素)のように、体内の免疫機能や感染防御のためにも重要な役割を果たしており、シグナル伝達、排卵・受精、細胞分化、アポトーシスなどの生命活動における生理活性物質としても生体内で利用されており、重要な役割を果たしていることが明らかになっています(Mbio.2011;2:141-11, Swiss Med Wkly.2012;142:13659)。すなわち、活性酸素は生体にとって有害なものばかりではなく、生命維持のためにある程度は必要だということです。
 その一方で、個々の生体が有する抗酸化防御機構として、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの内因性抗酸化酵素に加え、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、カテキンなどの外因性抗酸化物質が働いています。実際にはこれらの抗酸化防御機構と活性酸素種(ROS)の産生が、複雑な作用を及ぼしあいながら生体内でバランスをとっていることが徐々に明らかにされてきました(Oxidative Medicine and Cellular Longevity.2013;956782:11, Front Physiol.2018;9:477)。すなわち、体内で発生したフリーラジカル(脂質ラジカルを含む)や活性酸素種は、有害なラジカル連鎖反応を引き起こす危険性があるため、速やかに消去する機構が常に働いているということです。

 ただし、これらの活性酸素種(ROS)が過剰に産生されてしまった場合には、上記抗酸化物質では打ち消せないほど活性酸素が蓄積し、生体内で「酸化ストレス」が引き起こされます。この「酸化ストレス」が、多くの病気の原因となることが様々な研究により示唆されています。もちろん、活性酸素以外のフリーラジカルも活性酸素(ROS)と同様、酸化ストレスを引き起こす物質となりえます。ですから、酸化ストレスのリスク因子となるものは、フリーラジカルや活性酸素(ROS)を過剰に生み出してしまうものです。フリーラジカルや活性酸素を生み出す因子としては、紫外線の過剰暴露・放射線暴露・大気汚染・タバコ・アルコール・種々の薬剤・酸化された物質の摂取(特に過酸化脂質:詳細は後述)などが、これまでに様々な研究から示唆されています(RBMO.2014;29:17-31, Pharmaco.Rev.2010;4:118-126, ISRN.Oncol.2012;2012:137289)。また、過度の運動や精神的ストレスも活性酸素の過剰な産生を促し、酸化ストレスを引き起こすことが、近年の精力的な研究からも徐々にわかってきました(Physiol Rev.2008;88:1243-76, Antiox.Redo.Sig.2018;28:9)。その中でも、過酸化脂質である脂質ヒドロペルオキシドを含めた脂質ラジカルが生成される脂質過酸化反応(Lipid Peloxidation)こそが、アルデヒドやALEs(終末脂質過酸化物)などの人体にとって極めて有害で危険な物質を作り出す最も大きな酸化ストレスの原因となっています。

以上、「活性酸素」、「フリーラジカル」、「酸化ストレス」についてまとめておきました。

次回からは、人体にとって極めて有害な脂質過酸化反応の核心に迫っていくことにしましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です