動脈硬化の予防と「コレステロール仮説」について2(facebookより転載 2019-11-17)

さて、本日から何度かに分けて「コレステロール仮説」がいかに誤ったパラダイムであるか、ということについて説明していきたいと思っています。

その前にまずはコレステロール値を高める(とされている)飽和脂肪酸について基礎的事項を確認しておきたいと思います。

● 飽和脂肪酸は構造的に安定している

 飽和脂肪酸(Saturated Fatty Acid: SFA)とは、その化学構造としては、炭素に水素が飽和した状態で、不飽和脂肪酸とは異なり二重結合を持ちません。ですから、構造的には直鎖状になっており、異性体が存在せずとても安定した構造を持っています。そのため、基本的には構造的に不安定な不飽和脂肪酸に比べて融点が高い、という特徴があります。また、後述するように、この構造上の安定性が酸化しにくいという特徴にも反映されています。

● 短鎖・中鎖・長鎖の飽和脂肪酸

 炭素数が16以上の長鎖のものしかない不飽和脂肪酸とは異なり、飽和脂肪酸には短鎖・中鎖・長鎖のものがあるのですが、このうち長鎖飽和脂肪酸は動物性脂肪、特に反芻動物の脂(バターや牛脂)などに豊富に含まれています。長鎖不飽和脂肪酸の代表的なものがパルミチン酸(16:0)やステアリン酸(18:0)で、これらは主に動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸で、我々ヒトの細胞骨格や細胞成分の材料としても欠かせません。中鎖脂肪酸はアルツハイマー病やてんかんに効果があると言われており、その代表がカプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)です。これらの中鎖飽和脂肪酸は、ココナッツオイルや母乳に豊富に含まれています。短鎖飽和脂肪酸はバターに含まれる酪酸(4:0)がその代表です。

● 飽和脂肪酸は自動酸化されない

 飽和脂肪酸の最大の特徴は、先述したようにその構造の安定性(biochemical stability)にあります。直鎖状で構造が安定しているために、自動的に酸化されないことも重要なポイントです。実際に、飽和脂肪酸は100度以下の温度では、ほとんど構造が変化しないことが知られています(Oil & Soap.1945;22:81)。これは、脂肪酸の炭素鎖が水素で飽和しているために、酸素が反応する余地がないからです。逆に、不飽和脂肪酸は別章で詳しく取り上げますが、例えば、オレイン酸(18:1)のような一価不飽和脂肪酸(二重結合が一つだけの不飽和脂肪酸)であっても、容易に酸化され、酸化生成物であるアルデヒド(=過酸化脂質)が形成されてしまいます。そして、不飽和度(二重結合の数)が多ければ多いほど、自動酸化が激しく、アルデヒドの形成は促進されてしまいます。ただし、飽和脂肪酸は酸化しないとは言え、200度以上の高温にさらされたり、金属塩(Feなど)の存在下では、徐々に酸素の攻撃を受け、構造が変化し、開裂してしまいます。この場合、分子量の大きいものほど酸化を受けやすく、トリグリセリドのようなエステル形のものよりも、遊離脂肪酸(Free Fatty Acid:FFA)の方が酸化されやすいこともわかっています(Am.Iuk.Cgenus.Soc.1959;36:2-44)。しかしながら、容易に自動酸化される(多価)不飽和脂肪酸と比べると、飽和脂肪酸は圧倒的に酸化されにくく、通常の室温程度では自動酸化されることはまずないと言えるでしょう。ですから、飽和脂肪酸が豊富に含まれている脂肪(油)は、自然界では基本的には酸化しにくい油であると言って間違いないと思います。

 以上、飽和脂肪酸の基礎的事項のおさらいとして、主に飽和脂肪酸の生化学的な特徴をみてきました。それでは次に、飽和脂肪酸が“悪玉”とされていった歴史を振り返って行くことにしましょう。

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