動脈硬化の予防と「コレステロール仮説」について7(facebookより転載 2019-11-22)

さて、前回から「コレステロール仮説」から派生してきた神話である「飽和脂肪酸悪玉説」について書いてきました。「飽和脂肪酸悪玉説」とは、「飽和脂肪酸の多い食事(動物性脂肪など)を摂ると、コレステロール値が上昇し、動脈硬化になり心血管疾患を引き起こす」という仮説です。前回はこの仮説が我々にもたらした影響について述べました。いかにこの間違った仮説によって、国家規模で我々が洗脳されているかを理解していただけたでしょうか?

「コレステロール仮説を切る」シリーズ第7弾となる今回は、いよいよ「飽和脂肪酸悪玉説」が仮説としていかに誤っているかを示していきたいと思います。ぜひ心して読んでいただきたいと思います。

「飽和脂肪酸悪玉説」の崩壊

● 卵は好きなだけ食べても良い!?

 先述してきたように、「飽和脂肪酸は血中のコレステロール値を高めてしまう。コレステロール高値は心臓血管疾患を引き起こす。だから飽和脂肪酸は危険だ」というのが、これまでコレステロール・飽和脂肪酸に関しての一般的な見解でした。実は、このような説には全く根拠がないわけではありません。例えば、動脈硬化を起こしている血管には、コレステロールが沈着していることは、倍検例などからも明らかになっています。また、実際に動物性脂肪(飽和脂肪酸)やコレステロールの多い食生活をすると、血清コレステロール値が上がり、植物油脂(リノール酸)に変えると、血清コレステロール値が下がります。しかしながら、それは短期的な話であり、長期的にみた場合、コレステロールの多い食生活をしようが、コレステロールの少ない食生活をしようが、実は血清コレステロール値にはほとんど差が出ないのです。 
 その証拠に、米国の大規模な国民調査で、習慣的に卵を多く食べている人、中くらいの人、少ない人のグループに分けて血清コレステロール値を比べてみると、それぞれのグループで全く差がなかったどころか、むしろ日常的に卵を多く食べている人たちの方が血清コレステロール値は低かった、という結果が出たのです(Am.Coll.Nutr.2000;19:556-562)。これはおそらく、体内のコレステロール生合成のフィードバック機構によるものだと考えられます。コレステロールは、一日必要量(1g程度)のうち100-300gくらいが食事で、残りは体内でのデノボ合成(新規合成)によってまかなわれています。習慣的にコレステロール摂取量が多い人は、フィードバック機構が発動し、体内のコレステロールのデノボ合成が減少し、むしろ血清コレステロール値が下がる、ということが考えられます。
 少し飽和脂肪酸の話からは脇に逸れましたが、コレステロールがリッチな食事をしても、(長期的には)血清コレステロール値に影響を与えないということがご理解いただけたでしょうか?つまり、血清コレステロール値に関して言えば、「食事中のコレステロール含有量は気にする必要がない」ということです。このことだけでも、高コレステロール血症の患者に対して「(卵や肉のように)コレステロールの多い食事は控えましょう」という食事栄養指導がいかに誤っているかがわかると思います。ちなみに当院では、質の高いオーガニックな卵(放し飼いにされた鶏の卵)であれば、1日に2個以上食べても全く問題ないと考えています(卵黄であればなお良い)。

● MRFITやヘルシンキスタディが明らかにしたこと

 また、アンセル・キーズらが提唱した「コレステロール仮説」に基づいた栄養指導、すなわち「飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量を減らし、植物油脂(リノール酸)を多く摂取する」という食事指導が逆に危険である、という結果も出ています。これまでコレステロール仮説に基づいた栄養指導を導入した臨床試験として最も大規模なものは、MRFIT(Multiple Risk Factor Intervention Trial)です。これも超有名な研究ですので、栄養学をかじった程度の人でも名前だけは聞いたことがあるかも知れません。
 この研究では莫大な資金の下で、平均7年の長期間にわたって「動物性脂肪とコレステロール摂取を減らし、植物油脂(リノール酸)の摂取を増やす」という、まさに「コレステロール仮説」に従った食事指導が被験者に対して続けられました。しかし、これも予想に反して、上記のような食事指導を受けた被験者のコレステロール値が全く下がらなかった、という結果が出たのです(JAMA.1982;248:1465-77)。それどころか、逆に植物油脂が豊富な食事指導を続けた群の中で、「高血圧で心電図異常のあった亜集団」では、総死亡率も心疾患死亡率も有意に増えてしまったのです。
 同様のことは、ヘルシンキのビジネスマン研究(Helsinki Businessmen Study)でも明らかになりました(JAMA.1991;266:1225-9)。この研究では、ヘルシンキの重役たちを2群に分けて、介入群に対してコレステロール仮説に基づく食事指導が、15年〜18年という長期にわたって続けられました。最初の5年間は、コレステロール降下薬(クロフィブラート系)も併用されていました。その結果、介入群の方が心疾患死亡率も総死亡率も高くなったのです。この研究において重要なことは、10年目の時点で薬の服用者の率は介入群と対照群で差がなく(3割以下)、死亡率の差は10年目以降に拡大して顕著になったことです。このことから、介入群の死亡率増加は、薬(コレステロール降下薬)による影響ではなく、コレステロール仮説に基づく(間違った)栄養指導の影響であると考えられます。さらにこのヘルシンキスタディの結果発表後、この研究の28年間の追跡結果が報告されました(Br.Heart.J.1995;74:449-454)。その結論は、「従来の(心血管イベントの)危険因子とされている喫煙・高血圧・血清コレステロール値は、28年間の死亡率と有意に相関していた」というものでした。ところが、この論文のデータからは、対照群に対して介入群で15年間の結果と同様に、心疾患死亡率・総死亡率がともに増加していましたから、その非科学的なデータ処理と間違った解釈に対して、多数の専門家から批判の声が上がっています。
 いずれにせよ、MRFITやヘルシンキビジネスマンスタディの結果から示唆される重要なことは、「コレステロール仮説に従った食事指導は危険である」ということです。

● メタ解析で否定された「飽和脂肪酸悪玉説」

 また、ここ日本でも、コレステロール仮説に基づく食事指導が心疾患の最大の危険因子であったという調査結果が発表されています(Lipid.2001;12:281-9)。他にも同様の結果を示す論文がいくつか存在しており、「コレステロール仮説」や「飽和脂肪酸悪玉説」に従った食事・栄養指導が、心血管疾患予防には無意味であるどころか有害であることがすでに国内外で示されています。そしてついに、2010年と2014年のメタ解析(meta-analysis:これまでの研究論文を包括的に解析する手法。エビデンスレベルが最も高い研究)によって、この「飽和脂肪酸悪玉説」は完全に否定されることとなりました(Am.J.Clin.Nutr.2010;91:535-46, Ann.Int.Med.2014;160:398-406)。
 2010年のメタ解析では、21の研究で観察された合計約35万人において、飽和脂肪酸摂取量と心血管疾患・脳卒中の発症との間に全く相関性がなかったことが明らかにされました。2014年のケンブリッジ大学で行われたメタ解析では、摂取する脂肪酸の種類と心疾患の関係性を調査した32の観察研究と、被験者の血中の脂肪酸を測定した17の研究と、オメガ-3系の多価不飽和脂肪酸の効果を調べたランダム化比較試験が採用され、合計60万人を超える被験者の解析が行われました。結果としては、食事中脂肪酸の違いや血中コレステロール値によって、心血管疾患リスクには差がありませんでした(*トランス脂肪酸摂取群はリスク増大)。さらに、オメガ-3系脂肪酸の摂取群と対照群との比較でも差は認められませんでした。この2014年のメタ解析の著者らは、結論として「多価不飽和脂肪酸摂取量を増やし、飽和脂肪酸摂取量を減らすという(米国の)食事ガイドラインは支持できず、再考すべきである」と述べています。
 
以上、コレステロールの多い食事をしても(長期的には)コレステロール値には影響しないこと、「コレステロール仮説」や「飽和脂肪酸悪玉説」は完全に崩壊しており、それらの仮説に基づく食事栄養指導がいかに誤った指導内容であるか、について書いてきました。

もし今この投稿を読んでいる方の中で、脂質異常症や高コレステロール血症で一般的な病院にかかられている方がおられたり、皆様が将来的にそのような疾患で病院にかかる状況が生まれた場合、ぜひ上記のような内容を思い出していただき、医師や栄養士が誤った食事栄養指導をしてこないかを見極めてください。
そして、もしそのような誤った指導を受けた場合、その指導は誤っていることを指摘した上でフェードアウトするのが良いでしょう。

また、医師や栄養士の方でこの投稿を読まれた方は、ぜひ一度ご自身で再度しっかり一から調べ直し、自分が誤った指導を患者にしていないかを確認しましょう。

思考停止して製薬企業や食品産業の意向を鵜呑みにしてはいけません。私の述べていることすら全て正しいとは限りません。何事も常に批判的な目で吟味し、ご自身で正しいかどうかを判断していってもらえたら、と思っております。
その判断材料の一つとして、このような記事を読んでいただけたら幸いです。

 

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