原発事故処理費用と電気料金について(2021年3月11日のtwitterより転載)

2021年3月11日

今からちょうど10年前の2011年3月11日に東日本大震災が引き起こされ、それに引き続いて福島第一原発事故が引き起こされました。

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-56342997

これは人類が経験したことのない未曾有の大災害でした。この震災により死者・行方不明者は少なくとも2万2200人を超え、原発事故の影響により今も地元を離れて避難している人が4万人以上もいる状況です。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210311/k10012908451000.html(NHK NewsWeb 現在閲覧できません)

この大災害で亡くなった方には改めてご冥福をお祈りいたします。

また、今でも住む場所を奪われ、避難している方には非常に憐憫に思うとともに、このような大事故を引き起こしても何の償いもしていないどころか、さらに原発推進政策を推し進めようとしている政府には激しい憎悪を感じざるを得ません。

原発事故の避難者らが国と東電を相手どって集団訴訟を起こしており(全国で30件)、これまで高裁判決で国の責任が認められたのは2例あります。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/710011(沖縄タイムス 現在閲覧できません)

しかし、その責任がどうあれ、事故処理は今でも全くできていない状況であり、民間のシンクタンクである日本経済研究センターの試算によれば、処理費用は70兆円になることが報告されており、汚染水も加味すれば最終的には80兆円まで膨らむ可能性があることがわかっています。

https://www.jcer.or.jp/policy-proposals/2019037.html

2016年12月に政府(経産省)により発表された試算では原発処理費用が21.5兆円となり、事故直後に当初想定されていた額に比べて倍増したということが当時は問題視されていました。しかし、先述した日本経済研究センターの想定によれば、実際にはその4倍近くにまで処理費用が膨らむ可能性があるということなのです。いかに当時の政府の試算が甘いものであったかがうかがい知れるでしょう。

https://business.nikkei.com/atcl/report/16/042000132/042500003/

もし事故処理費用が80兆円にまで上った場合、東電の経常利益が3200億円程度ですから、その約250倍もかかることになります。しかし、事故が起こった福一原発を抱える東電がそのような額の費用を払えるはずがありません。では誰がそれを負担するかというと・・・、もちろん我々国民です。

https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1702/10/news108.html

ところで皆さんは、この「原発関連費用が我々の電気料金に上乗せ」されており、負担させられているという事実をご存知でしたか?

本当は知らないこと自体あり得ないのですが、このことを知って怒りに感じない人がどれほどいるでしょうか。私は「それは仕方ない」と思えるほどのお人好しにはとてもなれません。我々国民が原発関連費用を電気料金として負担していることすらご存知でなかった人のために、原発関連費用(事故処理費用+廃炉費用)が我々一般市民の電気料金の中の一部である「託送料金」に上乗せされているという話をもう少し詳しくしておきたいと思います。

まず知っておくべきこととして、電力が我々のような一般家庭へ届くまでには、発電・送電・小売という3つのステップが必要です。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/supply/

下図の通り、「発電」は電力会社(発電所)、「送電」は送配電事業者(変電所)、「小売」は小売事業者(電力会社)が担う形になっています。そして、実際に原発関連費用が上乗せされている「託送料金」とは、小売事業者(電力会社)が我々消費者に送電するための、いわば「電線使用料」として、送配電網を有する「送配電事業者」に支払うもののことです。

http://www.sora-denki.biz/article/report002.html

では日本ではこの「送配電事業者」とは誰が担っているのでしょうか?それは、政府に認められた大手電力会社10社の送配電事業部門です。つまり、「電力自由化」とは名ばかりで、実はこの一般送配電事業部門は今でも大手電力10社が一手に担っているということなのです。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/electric_transmission_list/

そのため、電力自由化の名の下に新生してきたいわゆる「新電力」などを含めたすべての小売事業者は、送電するためにいずれかの送配電事業者に託送料金を支払わなくてはならない仕組みになっています。これは2016年の電力自由化に伴って、小売事業に新規参入した新電力会社にとっての大きな障壁となっています(全く“自由化”とは言えない)。

https://rakuene-shop.jp/columns/2475/

さらに、この託送料金=電線使用料金に対して、本来入るべきではない原子力発電所を維持するための費用(=バックエンド費用)がすでに含まれていること、加えて2020年4月から「賠償負担金」と「廃炉円滑化負担金」がさらに上乗せされることが分かっています。

https://www.weekly-economist.com/2017/02/07/

このことに関連して、「送電線の使用料(=託送料金)に上乗せして徴収するのは法的な根拠がなく違法」だとして、新電力会社が国を相手取り、電力会社の託送料金の認可取り消しを求める訴訟を起こしています。

https://www.asahi.com/articles/ASM935S6KM93ULFA01H.html

これは当然のことです。そもそもこのような新たな負担を、我々国民に何の了承も得ないまま勝手に託送料金に上乗せし、新電力会社や国民に負担させることは、明らかに憲法24条(=財産権)の侵害であり、違憲と言わざるを得ません。

https://www.greencoop.or.jp/gcwp/wp-content/uploads/2019/04/190110_keizaisangyosho_chinjosho.pdf

そして、今後もこの託送料金に原発関連費用が上乗せされることで、さらなる電気代上昇が予想されています。このような不正なことで電気料金が値上がりしていくことを皆さんはどう思われますか?

もし「それは仕方がない」と思える人がいれば、ぜひその根拠を教えてください

https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/feature/15/031400077/031200025/

さて、先ほどから述べてきたように、託送料金に上乗せされている「原発関連費用」が我々の電気料金を底上げしています。これはもちろん政府(経産省)と大手電力会社が結託して、今後も原子力を「重要なベースロード電源」として扱うということにしているからです。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/180703.pdf

しかし、百歩譲って今後も原子力を主力電源の一つとして使っていくとしても、先述した通り、原発にかかるコストを何の了承もないままに我々国民が負担する、ということはどう考えてもおかしいし、完全に違憲です(財産権の侵害)。しかも、10年前の3.11の大惨事で誰もが原発の恐ろしさを垣間見たのにも関わらず、国民に了承も取らずに国が大手電力会社と結託して原発推進政策を取るなど、言語道断です。霞が関の役人どもも、えらい頭をそんなずる賢い方向に使うのではなく、もっと国民のためになることに使いなさいと言いたい。

世界が「脱原発」、そして「再エネ普及」に向かう中で、唯一の戦争被爆国であり、さらに3.11の原発事故によって日本全土が放射能汚染に見舞われたにも関わらず、日本(の産業界)がこれほどまでに原発に固執し、さらに再稼働に向けて舵を切っている様は、もはや異常の域を超えて“滑稽”という他ありません。もちろん私は一介の開業医で、電力やエネルギーの専門家ではありません。しかし、私自身も一人の電力消費者として電気料金を支払っています。それは皆さんも同じだと思います。だからこそ、一人一人が日々消費している電力について思いを馳せ、その仕組みを知ることは非常に重要なことと思っています。

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