現代医療と伊丹万作のエッセイについて(facebookより転載 2019-11-11)

11月も半ばになり、本格的に冷え込む時期になってまいりました。風邪やインフルエンザも流行する季節にもなってまいりました。当院の患者におかれましては、お身体を冷やさぬよう、お気をつけて日々お過ごしください。

さて、本日は少し趣向を変えて、私が日々現代医療に対して抱いている思いをここで述べさせていただきたいと思います。

みなさんは、伊丹万作(1900年〜1946年)という日本の映画監督・脚本家をご存知でしょうか?敗戦後直後の1946年に46歳に肺結核で亡くなった方ですが、今日はその伊丹万作のエッセイ「戦争責任者の問題」に触れつつ、現代医療批判という形の記事を書いてみたいと思います。

● 「戦争責任者の問題」

 伊丹万作が、1946年太平洋戦争が終わった一年後に、「映画春秋」という雑誌に寄稿した記事があります。戦後その戦争責任が誰にあったのかということが世間で問われているときに病床の伊丹万作が自分の意見を書いたものです。

記事の内容をまとめて以下に抜粋して記しますので、とりあえず読んでください。

「さて、多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。みながみな口を揃えてだまされていたという。私の知つている範囲ではおれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。ここらあたりから、もうぼつぼつわからなくなつてくる。多くの人はだましたものとだまされたものとの区別は、はつきりしていると思つているようであるが、それが実は錯覚らしいのである。たとえば、民間のものは軍や官にだまされたと思つているが、軍や官の中へはいればみな上のほうをさして、上からだまされたというだろう。上のほうへ行けば、さらにもつと上のほうからだまされたというにきまつている。すると、最後にはたつた一人か二人の人間が残る勘定になるが、いくら何でも、わずか一人や二人の智慧で一億の人間がだませるわけのものではないだろう。
 すなわち、だましていた人間の数は、一般に考えられているよりもはるかに多かつたにちがいないのである。しかもそれは、「だまし」の専門家と「だまされ」の専門家とに劃然と分れていたわけではなく、いま、一人の人間がだれかにだまされると、次の瞬間には、もうその男が別のだれかをつかまえてだますというようなことを際限なくくりかえしていたので、つまり日本全体が夢中になつて互にだましたりだまされたりしていたのだろうと思う。(中略)
・・・だまされたということは、不正者による被害を意味するが、しかしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはないのである。だまされたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
 しかも、だまされたのも必ずしも正しくないことを指摘するだけにとどまらず、私はさらに進んで、「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
 だまされるということはもちろん知識の不足からもくるが、半分は信念すなわち意志の薄弱からくるのである。(中略)
・・・つまり、だまされるということもまた一つの罪であり、昔から決していばつていいこととは、されていないのである。(中略)
・・・また、もう一つ別の見方から考えると、いくらだますものがいてもだれ一人だまされるものがなかつたとしたら今度のような戦争は成り立たなかつたにちがいないのである。
 つまりだますものだけでは戦争は起らない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起らないということになると、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)当然両方にあるものと考えるほかはないのである。
 そしてだまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになつてしまつていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。(中略)
・・・そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者にゆるした国民の奴隷根性とも密接につながるものである。
 それは少なくとも個人の尊厳の冒涜ぼうとく、すなわち自我の放棄であり人間性への裏切りである。また、悪を憤る精神の欠如であり、道徳的無感覚である。ひいては国民大衆、すなわち被支配階級全体に対する不忠である。(中略)
・・・「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいないのである。」(抜粋終了)

 この記事を読んで、私は本当にその通りだと思いました。戦時中の日本では、国民は皆お互いに騙し合い、国民自らが戦争が悪いことだとは言えない世の中にしてしまっていたのです。つまり、そういう意味では国民全員に戦争責任があるということなのです。
 この伊丹万作の見解を、現代医療に当てはめて考えてみましょう。

● ディオバン事件から考える、「騙されることの罪」

 例えば、日本の循環器内科医であれば、”ディオバン事件”について忘れている人はいないでしょう。ディオバンについて、その効果を高らかに謳った捏造論文を使った製薬企業側の宣伝に踊らされ、累計1兆円を売り上げるほどの処方をした多くの医師たちは内心「騙された」と思ったことでしょう。
 しかしながら、曲がりなりにも医師は専門家であり、ディオバン論文の不正を暴いた京大の医師のように、少しでも猜疑心を持って論文を批判的に読んでいれば、誰も騙されなかったはずです。しかも、それだけの不正のあった論文を盲目的に信じ込んでいた循環器内科医たちは、問題だらけの高血圧ガイドライン2019を、愚かにもまた批判することなしに日々の診療で使用し続けています。
 伊丹万作も述べていましたが、「騙されたといって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でも騙されるだろう」。これを現代の医薬業界に騙されている(洗脳されている)医師に当てはめれば、「ディオバン事件で騙されたと言って平気でいられる医師なら、おそらく今後も何度でも製薬企業に騙されるだろう」ということです。もしディオバン事件で騙された自分を深く省みることができたなら、日本高血圧学会が(製薬企業のために)作成したガイドラインなどは信用せず、(英国のNICEのような)利益相反のない団体のガイドラインを参考に診療をするはずです。しかし、実際には多くの循環器内科医たちが騙されたことを顧みず、無批判に高血圧ガイドラインに従って、不要な降圧剤を患者に使用し、受診した患者の健康をむしろ損ねる結果を生み出しています。
 そして、これは何も高血圧ガイドラインに騙されている循環器内科医だけではなく、医薬業界に騙されているほとんどの医師たちに言えることです。
 「コレステロール仮説(神話)」を無批判に信じて、日本動脈硬化学会ガイドラインに従う愚かな内科医、糖尿病の血糖値を下げる必要があると本気で信じている愚かな糖尿病専門医、「セロトニン仮説(これも神話)」に洗脳され、DSM-Vというなんの科学的根拠もないガイドラインを頑なに信じ、SSRIを出し続けている精神科医たち・・・。その他製薬企業の息のかかった学会が作ったガイドラインを信奉し、不要にも関わらず高価な薬剤を多剤処方し、患者をより一層不健康たらしめている医師たちの如何に罪深いことか。
 騙す意図をもって騙してくる製薬企業が悪の権化であることは間違いありません。しかし、無批判に騙される思考停止医師にも大きな責任(=罪)があるのです。

● 騙される患者にも罪はある!!

 さらに言わせていただければ、このような、伊丹万作風に言えば、「批判力を失い、思考力を失い、信念を失って」いる愚かな医師たちの言うことを無批判に信用している患者も愚かであり、罪深いのです。例えば、健康診断や日々の診察の中で高血圧と指摘され、医師の言うがままに処方された(不要な)降圧剤を服用するような思考停止患者も問題があります。そう言うと、「専門的な知識のない我々患者に罪はない」などと仰る方が必ずいらっしゃるでしょう。そんな患者には、私はいつも以下のように述べています。「あなたはそう思っているかもしれませんが、その専門的な知識を持っているはずの医師も、結局は医薬業界のビジネスのために捻じ曲げられたサイエンス(=神話)を信奉しているだけで、本当のサイエンスを理解し、それを実践しているわけではないのですよ。そんな医師の言うことを信じるというのは、宗教と大差ないのですよ」と。

● 思考停止に陥らないために、「批判的精神」を持つこと

 上記のような製薬業界の意向を無批判に受け容れる、愚かな思考停止医師たちの言うことを無批判に信じる愚かな思考停止患者へ陥らないためには、何事も疑ってみるという「批判的精神」を持つ以外にありません。そして、「処方された薬は本当に服用するべきものなのかどうか」、「医者は特に副作用はないと言っていたが、本当にそうだろうか」、「処方された薬はどのような作用機序で効くとされているのだろうか」など、少しでも疑問に感じれば、とにかく自分で調べてみることです。そうすればもしかしたら、医薬業界と利益相反のない個人や団体が発信している真の情報を手にいれることができるかもしれません。
 少なくとも当院へ通院していただいている患者には、このような批判的精神を常に持ち、「医学常識・健康常識を批判的に捉え、疑ってみる」、「自分自身の身体の健康は自分で守る」という意識を持つことが如何に重要かということをしっかり理解し、肝に銘じておいてほしいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です