良い家づくりとは? 2023年3月22日のX(旧twitter)より転載

先日は日本の住宅業界の悲惨な実情についてお伝えしました。今回から「良い家づくり」についてお話しした後に、「良い家づくり」を日本国内でしている信頼できる住宅ビルダーをご紹介させていただきたいと思います。その前に、まずは「良い家」の定義についてはっきりさせておくべきだと思います。簡単に述べれば「良い家」の定義とは「安心・安全で、快適で、健康的で、省エネで、長持ち」な家のことだと当院では考えています。そしてそのような家づくりをするために、満たすべき条件というものがあります。

その必須項目を以下に挙げます。

1.耐震等級3(構造計算による)であること

2.HEAT20 G2レベル(6地域でUA値≦0.26 w/m2・k)以上の断熱性能

3.C値≦0.5(cm2/m2)を満たす気密性能

4.パッシブ設計を採用している

5.シロアリ対策が万全

以上、優先順位の高いものから挙げています。

 

まず1つ目の「耐震等級3」について。 これまで住環境が健康に与える影響に関して主に触れ、快適な温熱環境を得るために住宅の高断熱化が必要であることを指摘してきましたが、この地震大国日本において高耐久で長持ちする家を建てるためには住宅の「耐震性」について考えないわけにはいきません。現在日本の家屋の耐震性は、「品格法」に基づいて等級1〜3まで設けられています。ザックリ言えば、等級1が最低限の耐震性能で、それ以下の耐震性ではいざという時倒壊の危険があるというレベル。そして、等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍とされています。

『耐震等級と許容応力度計算について』 https://inaho-re.com/news/9441/

ちなみに、平成28年4月に発生した熊本地震では、余震・本震で2度にわたり震度7が観測され、震源地付近の益城町周辺では甚大な建物被害が発生しました。今まで安全とされていたH12年新耐震基準で建てられた戸建でも複数の全倒壊事例が報告されました。

『「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント』 https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf

一方で、この2度にわたる震度7の地震の中でも、耐震等級3で設計された戸建ではほぼ無被害であったことが建築業界でも注目され、多くの専門家が今後の熊本地震同様の大きな地震に備えて「耐震等級3は必須」と述べています。

『【構造塾#4】木造住宅は耐震等級3が必須!!』 https://www.youtube.com/watch?v=BTz1QyivG9w&list=PLQ64kogoppwUFhMh4yeN3gbuwSRC_ycLl

ところで、実はこの「耐震等級3」には落とし穴があり、壁量だけを耐震等級1の1.5倍にした壁量計算のみ、壁量計算+準耐力壁や積雪・床倍率などを考慮した性能表示計算、柱・梁・床・壁など主要部材ごとにその抵抗力を計算する許容応力度計算(構造計算)の3種類があります。

『【耐震等級3以外はダメ絶対!!】耐震等級と建築基準法の違いを正しく理解して家族の命を守ろう!』 https://hapinice.net/efaa11374ecc19be13faa84ea202de06/

もちろん、複雑な構造計算までした上で取得した耐震等級3が最も耐震性に優れています。残念ながら地震に強いとされている大手ハウスメーカーでさえ性能表示計算までにとどまっており、構造計算までした上で耐震等級3を取得しているビルダーはほとんどありません。

『耐震等級の罠!計算方法で強度が変わる|許容応力度計算について』 https://quohome.com/story/?p=8611

それどころか、現在一般的な木造住宅(2階建)では「四号特例」なるものがあり、壁量計算のみでも「耐震等級3(相当)」を謳えます。しかし、本当に人の命を守る「安心・安全」な家づくりを目指したいのであれば、構造計算までした上での「耐震等級3」が必須です。

『耐震等級3が必要だと考える4つの根拠』 https://www.youtube.com/watch?v=5JZ0PHy4mg0

 

2つ目の「HEAT20 G2レベル以上の断熱性能」について。 「HEAT20」というのは、地球温暖化とエネルギーや施主の健康と快適な住まいを考え、研究者、住宅・建材生産者団体の有志により2009年に発足した「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の略称です。

『住宅シナリオと外皮性能水準』 http://www.heat20.jp/grade/

HEAT20では、外皮性能をG1〜G3まで設けています。外皮性能は熱が屋外にどれだけ逃げやすいかを表す「UA(外皮平均熱貫流率)」値で表すことができます。「UA値(w/m2・k)=建物の熱損失総量(w/k)÷外皮面積(m2)」という式で計算でき、数値が低いほど断熱性能が良い。

『断熱性能が分かるUA値とは?各地域の基準やQ値・C値との違い、ZEHについても解説』 https://www.nihonhouse-hd.co.jp/column/thermal-insulation-ua/

HEAT20では外皮性能の終点(最高到達点)としてG3レベルを想定しており、これは大阪などの温暖地域(6地域)では、現行の省エネ基準(断熱等級4)のUA値(UA値=0.87)と比べて約3倍も断熱性能が良い(UA値=0.26)という計算になります。

『家づくりコラム 教えて家づくり博士!HEAT20基準だと高断熱・高気密な家づくりができるって本当?』 https://www.satohome.net/column/heat20-house/

ところで、なぜHEAT20が住宅外皮性能を重要視しているかというと、断熱性を高めることによって、室内温度を一定に保つことができ、かつ省エネに繋がるからです。実際に、HEAT20のG3レベルでは、現行基準(断熱等級4)より50%以上も暖房負荷を削減することができます。 https://web.archive.org/web/20230330180803/https://www.housesupport.net/co_navi/e1fb93d1c6a0ccbd8c1e35ad-361.html

住宅業界で「断熱の鬼」と称されている松尾設計室の1級建築士である松尾和也先生は、いきなりHEAT20のG3レベルを達成するのは困難なので、断熱を始めたばかりの工務店ならG2レベル〜G3レベルのちょうど中間点(G2.5?)くらいを目指すと良いのではないかと仰っています。

『松尾先生と語る!HEAT20 G2.5!? 高性能住宅って、どのくらいの性能が必要なのか?』 https://www.youtube.com/watch?v=sRZQFqGgj14

実際に、住宅の温熱環境に関する実測結果などからも、HEAT20のG2グレードでも相当快適な温熱環境にすることは可能であり、あとは施主自身が温熱環境を良くするための暮らし方の工夫をいかにしていくかということが大切であると思います。

『慶應義塾大学 川久保先生に学ぶ家づくり「温熱環境の実測分析」編~断熱性G2グレード 全国初の170邸の実測結果』 https://www.youtube.com/watch?v=M0f5x1w6aMY

しかし、今後さらに厳しさを増すと予想されている気候変動や、より一層高騰していく電気代のことを考えれば、省エネ性や快適性をさらに追求する余裕のある人は、断熱性の終点であるHEAT20のG3レベルを目指すべきであると個人的には思います(以下動画参照)

『【暖かいお家に住みたい方必見】住宅性能 HEAT20 G2は不十分?G3はオーバースペック? (1/2)』 https://www.youtube.com/watch?v=9GAeabVRkaU

 

3つ目の「C値≦0.5を満たす気密性」について。 「C値」とは、「相当隙間面積」のことであり、「C値(cm2/m2)=家全体の隙間の合計(cm2)÷建物の延床面積(m2)」で表され、この値が小さいほど住宅の気密性能が優れているということを意味します。

『Q. C値やUA値とは何ですか?』 https://www.sakae-kenchiku.com/co_navi/fd7656e40841d116c1f92d50-229.html

C値が大きいほど住宅に隙間が空いており、冬の寒さをより一層感じやすくなってしまいます。それだけではなく、エネルギーロスが激しい、24時間換気で排気する際に隙間からも給気されてしまうので換気計画ができない、壁内結露が発生する、などの弊害が起こってきます。

『「気密性」が必須な8つの理由【高気密・高断熱はハウスメーカー任せではダメ!】』 https://wellnesthome.jp/242/

ですから、住宅の断熱性と気密性は必ずセットで考えなければなりません。よく住宅の“断熱”は“セーター”に、“気密”は“ウィンドブレーカー”に例えられます。そのどちらの性能も兼ね備えた“ダウンジャケット”のような性能を持った家づくりが望ましいということです。

光英住宅 https://kouei-n.co.jp/

では、どの程度のC値が望ましいかというと、多くの高気密高断熱住宅の専門家や実務者たちは、口を揃えて「計画換気が機能するC≦1.0は必須、できればC≦0.5が望ましい」と言いますから、やはりC値は数値的には0.5を切るのが望ましいと考えられます。

『C値(気密性能)はどこまで追求すべきなのか(一種換気、三種換気の注意点含む)』 https://www.youtube.com/watch?v=iQS12sz7xSI

しかし、住宅の断熱性は比較的簡単に高めることが可能ですが、気密性は高めることが困難です。なぜなら、ぶ厚い断熱材やトリプル樹脂サッシの高性能窓を採用すれば断熱性は良くなりますが、気密性には現場で隙間を作らないための精度の高い施工技術が求められるからです。

『気密性能の良し悪しは、施工者の理解度が左右する』 https://arch-koba.com/2021/12/17/202112172/

つまり、住宅の気密性を高めるためには、現場の大工さんの高い技術や経験が必須であるということなのです。だからこそ、年間数千〜一万件もの新築戸建を大量生産している大手ハウスメーカーには、C値≦0.5という高い気密性を維持することは現時点では困難だと考えられます。

『気密を疎かにする業界の非常識』 https://www.daitojyutaku.co.jp/blog/1846/

また、近年では住宅の気密性能の経年劣化も問題視されています。これは主に住宅が建てられた際に、耐震性に問題がありちょっとの揺れで隙間ができやすかったり、気密処理が中途半端だったり、そもそも経年劣化しやすい施工方法に問題があると考えられます。

『経年変化で気密性能は下がる?劣化しづらい家づくりのポイント』 https://www.njkk.co.jp/blog/?itemid=129&dispmid=764

一方で、新築時にきっちりした高気密を保てる施工方法で建てられており、何年も経っていても竣工時と気密性(C値≦0.5)がほぼ変化がないというデータを取っているビルダーもあります。このような経年劣化のない安心安全で丁寧な家づくりをしているビルダーで家づくりをしたいものです。

『【実測】築9年モデルハウスのC値(気密)は経年劣化で下がった?』 https://www.youtube.com/watch?v=9SGgSvmmMDw

 

次に4つ目の「パッシブ設計」についてです。 「パッシブ設計」とは、エアコンなどの機械に頼った「アクティブ(能動的)」な冷暖房ではなく、自然の太陽光などを「パッシブ(受動的)」に利用して快適な空間を設計する建築技法を指します。

『パッシブ設計とは自然の力を活用した設計で人にも地球にも優しい』 https://tnp-kyusyu.com/performance/passive-design/

業界では「断熱の鬼」として知られた松尾設計室の松尾先生が「太陽に素直な設計」と称する技術であり、狭義には「夏の日射遮蔽、冬の日射取得」ができるように軒や庇を設計することを指します。 

『プロもこれ見てはじめて理解する冬至、夏至、春分、秋分の3D動画』 https://www.youtube.com/watch?v=yN2gyGHnKW8&list=PLr55KgS45QlWvo1JQ7smfafVUHN2ke9V_

「パッシブ設計」を新築時に導入することによって、住宅の冷暖房効率が飛躍的に高まります。なぜなら、太陽高度の高い夏は軒や庇で(南面の)窓からの熱い日差しを遮蔽することができ、太陽高度の低い冬は積極的に太陽からの日差しを(南面の)窓から積極的に取得することで屋内を温められるからです。すなわち、しっかり夏季や冬季の日射を考えた住宅設計(特に南面の窓)をすることによって、余計な建築費や設備費をかけることなく、住宅を快適で省エネにすることが可能になるわけです。これを知っているのならば、採用しないというのはあり得ません。

『パッシブ設計の効果を数値化する』 https://www.organic-studio.jp/making_column/14832/

しかし、残念ながらこの「パッシブ設計」ができる省エネ住宅に特化した工務店は全国的にはほとんどありません。大手ハウスメーカーでも標準的に採用しているところは全くない状況です。それほどまでに今の日本で「良い家づくり」をしているビルダーに家を建ててもらうことは困難だということなのです。

 

最後に「シロアリ対策」について軽く述べておきたいと思います。 高温多湿な日本では、シロアリは北海道の一部を除いてほぼ全国どこでも生息できるため、日本で木造住宅に住む限りは、シロアリ対策は絶対に欠かしてはならないものであるということは、もはや常識中の常識です。しかし、シロアリ対策は家が建った後からやろうとしても、それは不完全になものになってしまいます。本当に有効なシロアリ対策を行いたいと思うならば、本来は新築の時にこそしっかり準備しておかなければなりません。

『シロアリ対策は新築時が唯一のチャンス!後からできない5つの注意点。』 https://quohome.com/workblog/?p=2750

それでは最も有効なシロアリ対策とは何か。その一つはコシイプレザービング社が提供している「ハウスガードシステム」であると考えています。これは、建物の一階部分の構造木材に、ACQという薬剤を加圧注入した「緑の柱」を用いた、半永久的に効果が続くものです。

『お住まいを守る家づくり』 https://www.house-g.com/about/

この「緑の柱」に使用されているACQは、塩化ベンザルコニウムや銅化合物などの薬剤が含まれていますが、これらはいずれも安全性はすでに確認されており、毒物指定もされておらず普通物として扱われ、動植物には害がないとされています。

『木材防腐・防蟻(防虫)剤薬剤の安全性について』 https://www.koshii.co.jp/products/anzen/index.html

ただし、この薬剤加圧注入処理した木材を使用することにはちょっと抵抗があるという人は、やはり構造用木材に対するホウ酸処理が良いでしょう。安全性が高く対応年数も長いというメリットがあり、海外でも一般的なシロアリ対策として用いられています。

『シロアリにホウ酸はおすすめしない!ホウ酸の効果とメリット・デメリット』 https://www.sharing-tech.co.jp/shiroari/housan-shiroari/

逆に、住宅周辺や地下に農薬・殺虫剤をシロアリ対策として撒いたり、構造用木材に直接塗布したりする防蟻対策は全くお勧めできません。特にクロチアジンなどのネオニコチノイド系薬や、フィプロニルなどの神経伝達物質阻害薬などを用いた防蟻対策は絶対に止めるべきです。ここでその詳細は述べませんが、日本で防蟻対策として用いられている散布用・塗布用の薬剤の多くは、人体や生態系に悪影響を与える可能性が示唆されています。近年では、人体に影響が全くないと謳われている防蟻処理薬も登場していますが、長期のデータがないため慎重になるべきです。特に子供やペットがいる家庭での使用は影響が強く現れる可能性があるので、毒性のある薬剤を散布したり塗布したりすることは厳に慎むべきだと思います。やはり新築時に徹底して安心安全な防蟻処理を行うこと、そして強い薬剤を使用せずホウ酸処理などできる限り人体に影響がないものを使用すべきです。

 

以上、当院の考える「良い家づくり」の定義・条件について述べてきましたがいかがだったでしょうか。実務的な内容に偏ってしまったので読みにくかったかもしれません。しかし、非常に重要な視点から述べている部分が多いので、新築購入を考えている人がいたら是非参考にしていただきたいと思います。また、上記で挙げた条件以外にも、健康な家づくりをするためには、「自然素材」のものを使用することが非常に重要です。「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」についてはまた後日まとめたいと思いますが、住環境の中でのVOC(揮発性有機化学物質)の暴露で健康を害することがわかっています。当院としては、床材には塩ビシートではなく本物の無垢木材や畳やウールカーペット、壁材には塩ビクロスではなく漆喰や珪藻土、などの自然素材のものを使用することを強くお勧めします。

『自然素材とは』 https://www.e-igc.jp/mame/19170/

 

他にも、家の中で使用する水道水全部を浄水(全館浄水)できる「セントラル浄水器」を導入することもお勧めです。 ちなみに院長私邸には、エヴァブリッヂ社の“最上清流”(https://fineseiryu.net/index.html)を導入しています。

飲料水のみならず、お風呂のシャワー・浴槽の水(お湯)なども、普段から使用する屋内の水全てが浄水(全館浄水)されるので、お勧めです。レンタル製品やマンションでも使用できるものもあるので調べてみてください。

セントラル浄水器ReFINE https://www.refine-h2.com/

ちなみにセントラル浄水器をつけることにより「細菌が繁殖する!」など、全館浄水は危険だという言説がネット上でも散見されます。

『オール浄水(セントラル浄水器)の危険性は細菌繁殖。おすすめできない。』 https://zyaguti.com/jousuiki/o-rujousuikiken.html

 

さらに、バウビオロギーにおいては電磁波対策も必須とされています。屋内電気配線から出る電磁波をかなり抑制できる「オールアース住宅(レジナ社)」を当院としてはお勧めいたします。新築の配管工事の際に導入する必要がありますが、余裕のある人は是非!!

『オールアース住宅の技術と特許』 https://ecore-life.co.jp/all-earth/patent/

他にも、住宅関連の話では書きたいことは山ほどあるのですが、今回はここまでにしておこうと思います。 特に新築購入や古くなった住宅のフルリフォームを考えている人は是非参考にしてみてください!!

 

 

 

 

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