インフルエンザの治療薬について(facebookより転載 2019-11-4)

2. 治療について 〜抗インフルエンザ剤は必要か?〜

● 日本の抗インフルエンザ薬使用量は世界一!

 現在日本の臨床現場では、インフルエンザが疑われる症例には、迅速検査で陽性であった場合、直ちにタミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤が処方されます。実際に、2011年の日本感染症学会の提言によれば、「原則として、・・・ノイラミニダーゼ阻害薬の投与により、重症化を防ぎ入院や死亡を減らすことが最大の目標となる」「可能な限り全例に対する発病早期からの抗インフルエンザ薬による治療開始が最も重要である」とされています。しかしながら、この提言では「インフルエンザは自然治癒する」という認識が欠けており、「重症化する」ということが前提となっています。さらに、ノイラミニダーゼ阻害薬が「重症化を阻止する」ということを前提に、抗インフルエンザ薬の重要性が強調され、使用が推奨されています。その他のいくつかの学会の見解でもこれと同様に、ノイラミニダーゼ阻害剤を推奨しています。また、厚労省の見解として、インフルエンザにかかった時には「具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう」(厚労省「インフルエンザQ&A」)としているように、症状があれば、すぐ医療機関受診することを国として勧めています。つまり、インフルエンザの治療に関しては、政府や学会をあげて抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害薬を推奨している、というのが今の日本の実情です。その結果、日本では1000人当たり、フランスの50倍、スウェーデンの300倍、イタリアの1000倍、イギリスの1200倍ものノイラミニダーゼ阻害剤を使用しています。つまり、日本は世界一のノイラミニダーゼ阻害薬消費国なのです。この日本の医療の現状を異常だと感じないとすれば、よほど感覚が麻痺していると言わざるを得ないでしょう。

● 抗インフルエンザ薬は免疫力を低下させる!?

 インフルエンザウイルスが感染したヒトの細胞の中で増殖し、その後出芽し、放出される際に、ノイラミン酸という糖鎖と、それを切断するノイラミニダーゼという酵素が働くことがわかっています。ノイラミン酸は、出芽してきたインフルエンザウイルスと感染細胞を鎖のように繋ぎ止めておく働きを持っています。ノイラミニダーゼはこのノイラミン酸という鎖を切断することにより、出芽してきたインフルエンザウイルスをヒトの感染細胞膜表面から切り離す働きを持っています。すなわち、ノイラミニダーゼがないと、インフルエンザウイルスはノイラミン酸によってヒトの細胞膜表面にずっと繋がれたままの状態になるため、感染を広げていくことができなくなります。ノイラミニダーゼ阻害剤は、このノイラミニダーゼの働きを阻害することによって、インフルエンザウイルスを感染細胞から離れなくさせることができます。この機序により、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤は、感染したヒトの体内でのインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができ、重症化を防ぐことができる、と考えられているのです。しかしながら、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害剤が、ウイルスの増殖を抑えて症状を軽くする、という一般的な認識は、そもそも間違っており、むしろ症状の軽減はウイルスの増殖抑制とは無関係であるという確実な証拠があります。
 例えば、RSウイルスは乳児に致死率の高い肺炎を引き起こすことで有名なウイルスです。このウイルスはノイラミニダーゼを持っていないのですが、RSウイルスを感染させたマウスにタミフルを投与してみると、ウイルスは増えたのに感染症状(肺炎)は軽くなったのです。その理由は、動物やヒトの体内にもあるノイラミニダーゼの働きをタミフルが阻害してしまうからと考えられています。実はノイラミニダーゼは、刺激やストレスに対する防御や免疫機能に深い関わりがあります。ノイラミニダーゼ阻害剤でその作用が抑えられてしまったことで、ウイルスと戦えなくなり、症状が軽くなったように見えるというわけです。すなわち、インフルエンザについても同様に、症状が軽減したように見えたのは、ウイルスの増殖が抑えられたからというわけではなく、ヒトのノイラミニダーゼの働きが阻害されたからだと考えられます。このノイラミニダーゼ阻害薬の作用機序は、免疫の働きを抑えてしまうという点においては、ステロイドの作用と少し似ているように思います。その結果、腎障害が起こる危険性もあり、高齢者のようなインフルエンザのハイリスク者もかえって症状が悪化する危険性があります。

● タミフルは異常行動を引き起こす危険な物質

 ノイラミニダーゼ阻害剤の中でもタミフルは、特に異常行動を起こしやすく、呼吸を止めて突然死のリスクがある危険極まりない化合物です。異常行動や突然死が起こる発症機序は明確にされており、その因果関係はもはや確実なものとなっています(Acta Neurol Scand.2017:135:148-160)。タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤の症状軽減の見かけの効果と遅発性の有害作用が起こる機序も、すでに詳細に検討されています(Infect Dis.2016:48;651-60)。ノイラミニダーゼ阻害剤について詳細に検討されたコクランのシステマティック・レビュー(最もエビデンスレベルが高い)でも推奨されていません(Cochran Database Syst Rev.2014:4)。WHO(世界保健機関)の勧告でも、2017年にタミフルは必須薬剤リストから補助薬剤へ格下げされました。コクランとは別のグループのシステマティック・レビュー論文も報告されており、それを根拠にタミフルの使用を推奨する意見も出ています(渡辺彰「タミフルの有効性に関するメタアナリシスと、抗インフルエンザ薬の治療指針」)が、それに対する批判論文も出されています(ECDC意見書へのコクランチームのコメント「薬のチェックTIP.2016:16;66-68」)。

以上のように、ノイラミニダーゼ阻害剤であるタミフルは、有効性はないどころか、危険極まりない薬剤であると考えられます。当院ではインフルエンザと診断されたとしても、患者には絶対に使用しません。抗インフルエンザ薬は、タミフル以外にもイナビルやリレンザといった吸入剤も販売されており、毎シーズン売り上げを伸ばしています。これらの抗インフルエンザ薬も、タミフルと同様に有効とする論文がある一方で、製薬企業側の意向が反映された結果を採用している可能性が高いために、その信憑性には疑問を抱かざるを得ません。当院ではタミフルと同様、確実な根拠のないノイラミニダーゼ阻害剤の吸入剤や、ラピアクタのような点滴剤も一切使用いたしません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です