【カフェインは代謝を高める!? ~朝は最高の一杯から~】
朝の一杯のコーヒーで、身体が温まるり、頭がスッキリして、集中力が高まる。
多くの方が日常的に感じているこうした感覚には、実はエネルギー代謝の要である「ミトコンドリア」が深く関係している可能性があります。
近年の研究では、カフェインが単なる「眠気覚まし」ではなく、エネルギー代謝やミトコンドリア機能に影響を与える可能性が注目されています。
実際、カフェインはAMPKやPGC-1αといった代謝関連シグナルを刺激し、ミトコンドリア生合成(mitochondrial biogenesis)を促進する可能性が報告されています[1]。PGC-1αは「ミトコンドリア増加の司令塔」とも呼ばれる重要な転写因子であり、運動適応やエネルギー代謝とも深く関係しています。
また、2012年のVaughanらの研究では、カフェイン投与によって骨格筋におけるPGC-1α発現や酸化代謝能力が増加することが示されました。研究者らは、「カフェインは骨格筋の代謝機能とミトコンドリア含量を増加させる」と結論しています[2]。
さらにカフェインは、カルシウム(Ca2+)シグナルにも影響を与えます。カフェインによって筋小胞体からCa2+放出が促進され、その刺激がミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)にも関与すると考えられています。1994年の研究「Caffeine and Ca2+ stimulate mitochondrial oxidative phosphorylation」では、カフェインとCa2+がミトコンドリア呼吸を刺激することが報告されています[3]。
一方で、ミトコンドリアの電子伝達系では、電子漏出によりROS(活性酸素)が発生します。
適量のカフェインでは電子伝達効率改善やATP産生促進が期待される一方、高用量ではCa2+過負荷やROS増加、ミトコンドリアストレスを引き起こす可能性もあります。
つまりカフェインは、「ミトコンドリア機能を刺激しうる物質」である一方、過剰では逆にミトコンドリアへ負担を与える可能性もある、“量と状態依存”の物質として理解する必要があります。
つまり、「カフェイン=常に身体に良い」と単純化できるわけではないことです。過剰摂取では交感神経刺激、睡眠障害、カルシウム過負荷などを介して、逆にミトコンドリアへストレスを与える可能性もあるのです。
つまり、カフェインは“使い方”や“身体の状態”によって作用が大きく変わる、非常に繊細な物質とも言えるでしょう。だからこそ私は、「何を飲むか」と同じくらい、「どのようなカフェイン飲料を、どのように飲むか」が大切だと感じています。
〈参考文献〉
[1] A.K. Yamada, G.D. Pimentel, C. Pickering, A.V. Cordeiro, V.R.R. Silva, Effect of caffeine on mitochondrial biogenesis in the skeletal muscle – A narrative review, Clin Nutr ESPEN 51 (2022) 1–6. 10.1016/j.clnesp.2022.09.001. [2] R.A. Vaughan, R. Garcia-Smith, M. Bisoffi, K.A. Trujillo, C.A. Conn, Effects of caffeine on metabolism and mitochondria biogenesis in rhabdomyosarcoma cells compared with 2,4-dinitrophenol, Nutr Metab Insights 5 (2012) 59–70. 10.4137/nmi.S10233. [3] Z. Khuchua, Y. Belikova, A.V. Kuznetsov, F.N. Gellerich, L. Schild, H.W. Neumann, W.S. Kunz, Caffeine and Ca2+ stimulate mitochondrial oxidative phosphorylation in saponin-skinned human skeletal muscle fibers due to activation of actomyosin ATPase, Biochim Biophys Acta 1188 (1994) 373–379. 10.1016/0005-2728(94)90058-2.