放射線の外部被曝と内部被曝について(2021年3月14日のtwitterより転載)

2011年3月11日の東日本大震災から10年目の節目を迎えたことを機に、原発についてや内部被曝のことを今後しばらくは時間の許す限り、私が過去に調べてわかったことなどを中心に書いていきたいと思っています。さて、先日から書いている放射線の問題について、さらに深く見ていきましょう。今回は「外部被曝」と「(低線量)内部被曝」についてです。放射線の影響を考える上で、この区別が決定的に重要なので、しっかり理解してもらいたいと思います。

先日大量の放射線被曝(10シーベルト以上)を受けた場合には、直ちに細胞や組織・臓器が壊死してしまうという話をしましたが、これは例えば原爆の爆心地近辺で大量の放射線を浴びてしまったケースで、それはあくまでも高線量の「外部被曝」による健康被害の話です。では、高線量ではない低線量の放射線被曝による健康影響につてはどうでしょうか。例えば、ご存知の通り太陽光には可視光線だけではなく、紫外線も含まれており、近年ではオゾン層の破壊で増加した紫外線により、皮膚ガンが増加していることがわかっています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5036351/

また、一般的な診療で用いられているX線レントゲン検査やCT検査なども放射線の「外部被曝」ですが、これも必要以上に暴露された場合、発がんリスクを高めることが報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22307864/

上述した太陽光による紫外線や医療用のX線の例は、原爆爆発の際に人体に照射された放射線と同様、「外部被曝」の例です(被曝量は桁違いですが)。では、チェルノブイリや福島でおきた原発事故の場合はどうでしょうか。すなわち、原子炉内の放射性物質が、事故により空中に放出された場合どうなるか。放出された放射性物質は、微小粒子として風に飛ばされて空中に浮遊して行ったり、地上に降り注いで土に付着したり、あるいは川や湖や海などに溶け込んだりしてしまいます。その状態で放射線(α線・β線・γ線)を出して、周囲の生物に外部被曝による影響を与える可能性ももちろんあるでしょう。しかし、原発事故後に原発から放出された放射性物質の恐ろしいのは、何らかの経路でヒトを含めた生物の体内に入り込んでしまった場合です。

人体内に入ってきた放射性物質は、その性質にもよりますが、まんべんなく体全体に行き渡るのではなく、特定の組織や臓器に停滞することになります。排泄機構により体外に排出されるものもありますが、その詳細はまだ完全には解明されていません。いずれにせよ、人体内に停滞した放射性物質はそこで放射線を出し続けます。これがいわゆる「内部被曝」です。被曝は一瞬で終わる「外部被曝」と違って、長期にわたるのが「内部被曝」の特徴です。しかし、通常は体内に入り込む放射性物質はごくごく微量なものです。このような微量な放射性物質による内部被曝のことを「低線量内部被曝」と言います。この「外部被曝」と「内部被曝」の違いについては重要ですから、きちんと他人に説明できるようになるまで、しっかり理解するようにしてください。

ところで、日本で採用されてきた「100mSv以下ではがんになることはなく、心配ない」という解釈は、ICRPやIAEAの公式見解によるものですが、これにはいくつか「ごまかし=嘘」が含まれていますので、そのことについてここで少し触れておきたいと思います。

まず、100mSv以下なら心配ないとする根拠は、広島・長崎の原爆被害者の調査結果からもたらされたものですが、この調査では「外部被曝」の影響しか考慮されていません。しかし、実は100mSv以下どころか、10mSvでもがんになる可能性があることがわかってきています(外部被曝だけでも)。

さらに、内部被曝の線量としてはグレイ(Gy)が用いられますが、外部被曝で定義されている通常の[J/kg](熱量の単位)では実状を把握できません(人体は複雑系なので、単純な熱力学の法則では語れない)。

また、先日述べた「等価線量Sv=Q×Gy」のQ値(α線は20、β線・γ線は1)も、実状に沿っているとは言い難いものです。内部被曝においては、国が安全としている100mSvでも、実際にはその数百倍もの被曝線量を浴びている可能性があるのです(詳細は後日解説予定)。つまり、見かけは低い放射線被曝量であったとしても、実質的な被曝量は局所的には非常に高くなっており、その部位の組織や臓器が不可逆的な障害を受けてしまう可能性すらあるということなのです。

これもぜひ知っておいて欲しいことなのですが、通常政府が発表するような公式データは「空間線量」と呼ばれるものであり、これは地上1メートルでのベクレル値を測定し、ある仮定のもとに[Sv/時間]に変換したものです。それはあくまでもその観測地点に人が立っていた時の「外部被曝」線量を計算したものです。すなわち、「内部被曝」が考慮されていないというか、そもそも空間線量から「内部被曝」線量を計算することは不可能なのです。もちろん放射性物質が呼吸により体内に侵入することもあるために、空間線量もある程度は参考にはなりますが、基本的に食物からの内部被曝は空間線量とは関係ありません。

以上、非常に重要な「外部被曝」と「内部被曝」の区別について書いてきました。原発事故による低線量放射線(内部)被曝の問題を考える上で、この「外部被曝」か「内部被曝」かという議論は避けては通れませんので、ぜひしっかり理解しておいて欲しいと思います。

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